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その男の人の大きな手は弟のマロをめがけて降りてきた。「あぶない!マロ!」僕はマロに叫び、突進していった。そしてマロを突き飛ばした。するとその手は僕を捕まえようとしてきた。僕は逃げた。でも遅かった。その手は僕を掴んだ。僕はふわりと中に浮いた。「兄ちゃん?!」みんなが叫んだけど、僕はそれどころじゃなかった。そして掴まれた時、僕は分かった。この人が僕をブリス母さんと引き離してもちっともかわいそうと思わないと理由が。
僕は降ろされたあと、白衣を着たピンクメガネをかけたおばさんが僕の体を調べた。そして僕を別のとても小さな段ボールに入れ、蓋をした。「僕一人だけ?」僕は怖くなって慌てた。穴から食い入るように覗いた。すると次々と兄妹たちも体を調べられ、段ボール箱に一匹ずつ入れられていた。「ココア!ココア!」僕は隣の段ボール箱に入っているココアに話しかけた。「なに?」ココアが答えた。「…大丈夫?」自分から話しかけたのに、これしか聞けなかった。「うん」ココアもこれだけ答えた。
「え〜、78番、ミニチュア・ダックスフンド、オス」マイクの男の人の声が響いてきた。穴から覗くと僕の写真がスクリーンに映し出されていた。でも、ゆっくり見ていられなかった。たくさんの人がまるで服の特別セールのときのような騒がしさだ。
そのあと、僕は移動した。そのあと、他の兄妹たちと会うことはなかった。そのあと、僕はまた運ばれて、別のところへ来た。あとで知ったけど、ペットショップってところなんだって。僕は次の日、店の人に抱きかかえられてショーケースへ入れられた。その日、僕は疲れて、寂しくて眠った。
でも眠ったのも束の間、とてもうるさい声で僕は目覚めた。「もう。うるさいんだから」自分でも驚いたが涙声だった。
3週間後、僕はある一人暮らしのおじいちゃんに抱っこされた。僕は拒否した。ケースの奥へ引っ込んだ。でも結局は出されてしまった。僕はおじいちゃんに抱っこされた。おじいちゃんは僕を優しく抱いてくれた。その日、僕はあのショーケースに戻ることはなかった。