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スマホの中を綺麗にして、杏奈と向かい合った。
お互いのスマホを確認し合うという、まるで嘘発見機にかけられるようだ。
杏奈が俺のスマホのLINEを確認している。
何も残してないはずだから心配する必要はないのだけど。
「ね、どれが仕事関係の人?電話もLINEでしたんじゃないの?」
「普通に電話したよ」
「ふぅーん。電話代もバカにならないからって言ってたからLINE通話ばかりかと思ってた」
「……」
_____しまった!
と思ったけど、そこは態度に出さないようにして杏奈のスマホを隅々まで見て、杏奈の浮気相手を探そうとした。
_____えっ!
写真フォルダのトップに、見覚えのある写真があった。
あの時京香がふざけて撮った写真だった。
気づかないふりで画面をスクロールする。
誰にも見せないと言っていたのに、杏奈に送りつけていたのか?なんのために?
いやそれよりも、もうこれじゃ言い訳のしようもないじゃないか!
いつだ?京香はいつこの写真を杏奈に送ったんだ?
杏奈に訊いてみる?いや、訊けない。
_____あー、終わった……
杏奈はとっくに知っていたんだ。
じゃあ何故すぐに俺に訊いてこないんだろう?
頭の中は❓だらけで、なにがなんだかわからない。
「はい、何もなかったわ」
杏奈は俺のスマホをテーブルに置いて、腕組みをしている。
「そ、そりゃそうさ、なにもやましいことはないんだから」
_____もしかして、京香と杏奈はグル?
だとしたら俺はまんまとその罠に嵌められたマヌケな男ということか。
でも何故そんなことをされなければならないのか、わからない。
はっきりしているのは、杏奈は俺が京香と浮気したことをもう知っているといこと。
でも、まだ俺自身が認めたわけじゃないから、ここはとことん知らないフリをした方がいいだろう。
そのためには俺も杏奈のことをこれ以上、詮索しないことが得策だと結論づけて、これでこの話は終わりにしたかった、なのに。
杏奈から、さっきわざと知らないふりをした写真をさしだされ、“ご主人、お借りしてまーす”だって?京香が?
あー、もうホントに終わった……。
京香という女が、何を考えているのか見当もつかず、ため息しか出なかった。
何も言えずにいると、杏奈は京香についてあれこれと説明してきた。
舞花の裏垢を作って貶めていたこと、舞花が妊娠するように細工したのも舞花らしいし、杏奈の写真を悪意を込めて切り取ったのも京香、そして俺との写真を送りつけて……。
俺を誘うために杏奈の浮気写真というものを、見せてきたのも京香。
_____なんで、誘いにのってしまったかなあ
今更後悔しても遅いけれど。
「あのね、少し前にも誰かと浮気したよね?それは見て見ないフリしとこうと思ってたんだよ。私にも責任あるよなぁって思ったから。でもね、今回のこれは違うよね?私のこと、バカにしてるの?京香と二人で」
紗枝とのこともバレていたのか。
「それは……」
バカになんかしてない、そんなことはない、京香とはほんのいっときの気の迷いだと、ただの遊びだと言おうとしたけど。
「何より一番許せないのは、写真とかそんなことじゃなくて、京香と電話とかしてて圭太をほっといて怪我させたことだよ!」
杏奈の声がひときわ、大きくなった。
_____あー、そうか、そうだよな
杏奈が言いたいことが、ズキンと伝わった。
そんなつもりはなかった、まさか怪我をするとは思っていなかった、と言う資格もないな、俺には。
俺に向かって怒鳴っていた杏奈の声が、途切れ途切れになる。
_____泣かせてしまった
肩を震わせる杏奈を見ながら、俺はあることに気づいてしまった。
_____俺が浮気したから泣いているのではなく、そのせいで圭太が怪我をしたから泣いている?
俺が浮気をしたことに怒ってるわけではないのか?
やはり杏奈は俺の妻というより、圭太の母親なんだといまさら思い知る。
そんなこと、今、この場では言えないけれど。
_____夫婦になって子どもができると、親になるしかないのか……
圭太がオシッコだと起きてきた。
杏奈はサッと母親の顔になり、穏やかに圭太に接している。
圭太の怪我を心配して、圭太も杏奈を慰めているようだ。
当たり前の光景なのに、どこか疎外感を感じてしまう。
なんだかぼんやりとしながら、その光景を見ていた。
杏奈は、圭太を連れてもう寝るようだ。
「何か説明があるのなら明日にでも聞く。じゃ」
「………」
何か言いたいけれど、何を言えばいいかわからず、返事ができなかった。
パタンと閉じた寝室のドア、その先に俺は入っていってはいけない気がする。
_____説明か……
俺は父親でもあるけれど男でいたい、と言っても杏奈に通じるだろうか。
それにしても。
京香の目的はなんなんだ?
紗枝とはなんの後腐れもなくできたのに、京香は何故こんなことをする?
佐々木夫婦にも何やら仕組んでいたと言っていた。
そもそも京香が写真なんか杏奈に送らなければ、こんなことにならなかったのに。
確かめてみたいと思うけれど、また京香と関わるのはよくない気がする。
「あーっ、もうっ!」
なんでこんなことになったんだ?
眠れそうもなく、さらにビールを開ける。
何をどうすれば、元の生活に戻れるのだろうか?
いや、戻りたいのか?俺は。
杏奈とのこれからの生活を想像してみた。
杏奈が俺に求めているのは、父親としての存在であって男としての俺ではないし、抱きたいと誘ってもまたイヤイヤだったらと考えただけでげんなりした。
これから先ずっと家族としていることはできても、それが幸せな生活なのかどうかと考えたらため息が出た。
「ハックション!」
肌寒くなってきて、寝室に毛布を取りに行った。
そっと二人を見たら、よく寝ているように見えて、ホッとする。
ソファに横になって、これからどうするべきか考えることにした。