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第1章:時(クロノ)の静寂、再生(レノヴォ)の胎動【其の一:神域の死神】帝国軍第零特殊極秘部隊。通称「終わりの時計(ラスト・クロック)」。そこは、国家の最高機密であり、世界のあらゆる戦況を裏から決定づける最強最悪の軍事拠点のひとつだった。鉄筋コンクリートと黒鉄の装甲で固められた基地の最奥、天を突く中央司令塔の最上階に、その男の執務室はある。――カチ、、カチ、、カチ。部屋の中に響くのは、大柄な柱時計が刻む規則正しい秒針の音だけ。窓辺に佇み、沈みゆく血のような夕日を見つめる男がいた。クロノ。帝国軍大将にして、単独で一国の軍隊を文字通り「消滅」させる、世界絶対最強の兵士。黒を基調とした隙のない軍服の襟元には、帝国の最高勲章が鈍く輝いている。腰に帯びた漆黒の長剣は、これまで数多の戦場で敵の時間を断ち切ってきた。彼が「誰にも絶対に勝てない」と言われる理由、それは世界そのものを置き去りにする、絶対最強の「時間の支配者」だからだ。彼がその気になれば、周囲の時間を完全に停止させ、敵が瞬きをする間に全ての首を撥ねることができる。彼にとって戦場とは、ただの作業であり、他者はただの背景に過ぎなかった。あまりにも強すぎるがゆえに、彼は「神」になる可能性すら秘めている。強くなるたび、彼の肉体と精神は人間を超越し、世界の法(システム)へと近づいていく。それは、彼からすべての感情を奪い去り、完全な無機質の時計マシーンに仕立て上げる道でもあった。だが、今のクロノには、本当に、針の穴ほどのかすかな「人間の感情」が残されていた。それは、自分に追いつける者が誰もいない世界に対する、心の底からの「退屈」と、ほんの少しの「寂しさ」だった。「……また、私の時間が引き延ばされていく」クロノは静かに瞳を閉じた。世界がどれほど激動しようとも、彼の時間は冷酷なまでに静止したままだ。その静寂を、あまりにも場違いな、情けない声がブチ壊したのは、まさにその瞬間だった。「ひゃ、ひゃいッ! 本日より、ク、クロノ大将閣下の専属雑用係に任命されましたッ! 第零部隊、レノヴォ二等兵ですッ! よろしくありますッ!!」勢いよく開いたドアの向こうで、ガチガチに緊張した茶髪の青年――レノヴォが、今にも落としそうなほど大量の軍事書類の束を抱えて立っていた。帽子は斜めにズレ、軍服の膝には泥がついている。およそこの世で最も「最強」から遠い、平凡で下っ端の兵士だった。クロノは一瞥すら動かさず、窓の外を向いたまま冷徹に言い放った。「机に置いて、失せろ」「ひゃああっ! 了解ありますっ!」レノヴォは情けない声を上げながら、そそくさと書類を机に叩きつけるように置き、回れ右をして逃げるように部屋を飛び出していった。バタン、と大きな音を立ててドアが閉まる。クロノは小さく息を吐いた。上層部が、また自分を監視するためにトカゲの尻尾のような下っ端を送り込んできたのだろう。これまでの雑用係たちと同じだ。どうせ、3日も持たずに自分の「死神のオーラ」に耐えかねて、恐怖で精神を病んで逃げ出すに違いない。しかし、クロノはまだ知らなかった。この平凡で、上官からこき使われるだけの泥臭い下っ端(レノヴォ)の存在こそが、神の領域へ消え去ろうとする自分の時間を、もう一度人間の側へと「新しく変革(レノヴォ)」していくことになるのを。
コメント
1件
「第1話、読み終えたばかりだわ…!時間を操る死神・クロノの孤独と退屈感が、もう刺さりすぎてやばい。強すぎて誰も追いつけないって、主人公最強好きとしてはめちゃくちゃツボ。しかもそこに現れたドジっ子雑用係・レノヴォ…どうせ3日持たないって言い放つクロノが、実はこの平凡な奴に変革される未来があるって伏線、熱すぎるやろ。続きが気になって仕方ないわ🔥」 (200字未満)
珠李
176
HARUKA
2,207