ー ー ー ー ー
「みどりは寝た…?」
「寝たよ、部屋でぐっすり」
「それじゃあ…いくよ」
いっせーので小瓶の中身を一気に煽る。
ごくりと喉が鳴って、みんなで顔を見合わせた。
一体どんな変化が起こるのか…
「…は…?嘘やろ……?」
きょーさんがボソリと呟いたかと思えば、とっくに飾りと成り果てていた翼を大きく広げていた。
どことなく褪せて見えた翼は、今やこの薄明かりの中でも純白に輝いている。
それに、どことなくツヤが増したような…
「うぇ!?こ、こんちゃん!目、目が!!」
「え?…あ、あ!ホントだ…!」
片目を失ってからつけるようになっていた布面の下には、懐かしいアメジスト色の瞳があった。
その様子を見たレウは何を思ったか、誰も使わないせいで薄く埃をかぶっている燭台に火をつけて、あろうことかその火に触れた。
「レウっ!!」
ジュウ、と肉の焼ける音を想像して慌てて止めようとした。
でもレウの指先はオレンジ色の光に照らされるだけで、肉が焼ける音はおろか火が揺らぐ様子すら見られない。
「俺、火に触れる……熱に耐えられてる…!」
「らっだぁは?」
「そうや!お前が一番危なかったやろ!?」
「ええー……?」
そう言われてみても心臓が本来のものに戻ったかどうかなんて、実際に体を裂かないと分からない。
「んー…分かんない。お望みならココんところ解体するけど……」
「グッッロ…嫌やわ、気持ち悪い」
「要らないかな」
「命を顧みないことはやめようね?」
ニコニコと笑って「バカなこと言ってんじゃねぇぞ?」と圧をかけてくるコンちゃんにへらへらと笑顔を返しつつ、中身が空っぽの小瓶を燭台の火に透かした。
何の変わりもない、まるで水みたいなものだったからイマイチ実感が湧かない。
…これで、よかったんだろうか。
ぼんやりと考えていたら、コンちゃんがふわりと小さくあくびをした。
誰かが「眠いね」なんて呟いて、それがきっかけにみんなゾロゾロとリビングを後にしていく。
「らっだぁ?はよ寝るぞ」
「…そうだね、明日も忙しいし」
「せやなぁ…誰かさんがどりみーのために国を作りたいとか言い出すから」
「ごめんって、頼りにしてる」
「へいへい」
ー ー ー ー ー
とある国がある。
神話の時代から生きるとされる、人ならざるものが暮らす国。
その国では、今日もなんてことない穏やかな日々が繰り返されている……
「私を殺したら私の率いる暗殺集団が黙っていないぞ!!」
そう言って喚く血だらけの男の心臓を、澄んだ色の刃が貫いた。
「ハハ…勝手にすれば?」
男の最期の記憶は鮮やかな色彩で彩られる。
青、緑、黄、赤、紫。
世界一平和な国の、総帥と幹部達の色。
「誰も死なせないよ、俺達が護るこの国が在り続けるうちは…ね」
そう言って青鬼は嗤った。
ー ー ー ー ー
Fin
コメント
2件
うわーー...すごい鳥肌たった、、、素敵でした😭😭