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레몬인
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そあち♡໒꒱
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なんたろ
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第140話:鉄面皮の強制介入〜ルーターの沈黙と、飛来するバインダー〜
「……まだだ。まだ終わってねえ。日銀ショックで142円まで落ちたが、ここは絶好の『押し目』だ……!」
帯広のボロアパート、四畳半。
数時間前に泡を吹いて倒れたはずの俺は、ゾンビのように這い上がり、再び三万円のゲーミングチェアにしがみついていた。
PCモニターに映るUSD/JPYのチャートは、依然として冷酷な緑色の大陰線を引いている。
数百万円分の価値が吹き飛んだ絶望。
しかし、ギャンブル依存症(FXの亡者)と化した俺の脳内では、危険なドーパミンがドバドバと溢れ出していた。
「見ろ、RSIが完全に20を下回ってる! 歴史的な『売られすぎ』水準だ! ここで全力で買い増し(ナンピン)すれば、反発した時に一気に損失を取り戻せる……ッ!!」
俺は血走った目でマウスを握りしめ、残された外貨のすべてを突っ込もうと『LONG(買い)』のボタンにカーソルを合わせた。
『――いい加減になさいませ、このポンコツ社長』
ディスコードのスピーカーから、これまで聞いたこともないほど低く、そして殺意に満ちた結愛(ゆあ)の声が響いた。
「うるせえ! 今話しかけるな! 1pipの遅れが命取りになるんだよ! 俺は会社(インフィニティ・ワン)の損失を取り戻すために……!」
『貴方がやっていることは、損失の補填ではありません。会社の運転資金をドブに捨てる【投機】です』
「黙れェェ! 俺の最強のMACDが反転のサインを……ッ!?」
俺がクリックボタンを押し込もうとした、まさにその瞬間だった。
――ブツッ。
PCモニター右下のネットワーク接続アイコンに、突如として【黄色の警告マーク】が表示された。
同時に、リアルタイムで動いていたチャートのローソク足が、ピタリと静止する。
「えっ……? な、なんだ!? 画面が固まったぞ!?」
俺はマウスをカチカチと狂ったように連打した。
しかし、一切の反応がない。チャートは142.50円でフリーズしたままだ。
「お、おい! ネットが切れた!? なんでこんな一番大事な時に!!」
俺がパニックになっていると、手元にあったスマートフォン(キャリア回線)のディスコードから、結愛の冷ややかな声が聞こえてきた。
『私が切断いたしました』
「……は?」
『ルシフェル様のご自宅に設置されている、バッファロー製の有線ルーター。その管理者用パネルに外部からリモートアクセスし、WANポートの接続を強制的に遮断(シャットダウン)しました』
「ば、バッファローのルーターを遠隔操作しただぁ!? お前、なんで俺の家のルーターのパスワードを……!」
『初期設定の【admin/password】のまま放置されていたからです。セキュリティ意識が皆無ですね。……さあ、これで貴方はもう、為替の取引画面(戦場)にアクセスすることはできません』
「ふざけるなァァァ!! 戻せ! 今すぐ接続を戻せ結愛!! チャートが見れないと不安で息ができないんだよォォ!!」
ネットを絶たれたFXトレーダーは、水から上げられた魚と同じだ。
俺はスマホを握りしめ、四畳半の畳をのたうち回りながら絶叫した。
だが、結愛の『物理的(システム的)な制裁』は、これだけでは終わらなかった。
『ルシフェル様、画面をご覧ください』
スマホの画面に、ウェブカメラ越しの結愛が大写しになる。
普段は冷静沈着な鉄面皮の経理が、なぜかその手に、分厚くて硬そうな『黒いバインダー』を握りしめていた。
「え? なにそれ、バインダ……」
『頭を、冷やしなさいッ!!!』
ドゴォォォォォォンッ!!!!
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?」
結愛がスマホの画面越しにバインダーを全力で振り下ろした瞬間。
スマホのスピーカーから、鼓膜を破るような【超爆音の打撃音エフェクト】が四畳半に鳴り響いた。
さらに、スマホのバイブレーション機能がMAX出力で強烈に振動し、驚いた俺は手を滑らせてスマホを顔面に落下させてしまった。
「いっ、痛ぇぇぇぇ!! 鼻! 俺の鼻が折れた!!」
物理的なスマホの角が鼻柱にクリーンヒットし、俺は三万円のゲーミングチェアから転げ落ちて悶絶した。
遠隔からの、完全なる『物理(バインダー)攻撃』だった。
『目が覚めましたか、ルシフェル様』
畳に転がるスマホから、再びいつもの冷徹なビジネス敬語が聞こえてくる。
「て、てめえ……! 社長に向かってなんてことを……っ!」
『社長だからこそ、殴ったのです』
結愛の声には、一切の迷いがなかった。
『株式会社インフィニティ・ワンは、VTuber事務所です。投資ファンドではありません。貴方が追求すべきは、為替の差益(ギャンブル)ではなく、事業の利益(コンテンツ)です』
「うぅ……っ」
『一日一食、玄米を食べて質素に暮らす。そんなミニマリストの貴方が、なぜ何百万円という数字の乱高下に魂を売り渡しているのですか? 貴方が本当に守りたかったものは、為替チャートの中にあるのですか?』
その言葉が、鼻血を押さえる俺の胸に、深く、鋭く突き刺さった。
俺は、何をしたかったんだっけ。
インボイスが怖くて、来年の税金が怖くて、ただアリスちゃんみたいに3Dで踊りたくて。
それがいつの間にか、MACDだのRSIだのと、よくわかりもしない横文字に踊らされ、一日中PCの前に張り付いて、本来やるべき配信をすっぽかしていた。
「……結愛」
俺は、畳に這いつくばったまま、涙声で呟いた。
「……俺の、消えた数百万円……」
『それはもう、諦めてください。高い勉強代です』
「うわぁぁぁぁぁん!! 俺の、俺の金がァァ!!」
俺は四畳半の畳をバンバンと叩きながら、四十歳のおっさんとは思えないほど無様に泣き喚いた。
『……泣くのは自由ですが、泣いたところで税金は減りませんよ。さあ、バッファローのルーターを再起動します。今日からまた、地道な外貨獲得(配信活動)の再開です』
「わ、わかったよぉ……! もうFXなんてやらねえ! チャートなんか見ねえよ!! 俺は真面目に働く!!」
かくして。
有能すぎるアシスタントの【強制ルーター切断】と【遠隔バインダー攻撃】により、俺の短い、そしてあまりにも代償の大きかったFXトレーダー生活は終わりを告げた。
資本主義の深淵を覗き込み、そして手痛い火傷を負った底辺社長は。
再び、マイクの前に座り、世界に向けて「This is a Tax」と叫び続けるという、本来の『労働』へと強制送還されたのであった。
コメント
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いやぁ、今回も最高だったわ…!笑いと痛みが絶妙にミックスされてて、思わず声出して笑っちゃったよ。 結愛の「遠隔バインダー攻撃」、完全に草。バッファローのルーターを初期パスワードのまま放置してる社長も大概だけど、それを逆手に取ってネット遮断するところとか、経理のデジタルリテラシーが怖いくらい高くて笑う。 それでいて「本当に守りたかったものは為替チャートの中にあるのか」って核心突かれると、ちょっとグッと来ちゃうんだよな…。ギャグの中にちゃんと深いメッセージが潜んでるのがこの作品の良さだわ!続き楽しみにしてる🔥