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「すまん。旅行慣れしてるって言っておきながら、ちょっとハイになってたみたいだ。ドーパミン出まくって先の事も勢いで決めようとしてたかもしんねぇ」
「んふふ、分かります。興奮してる時ってちょっと神ってる感じになりますよね。私も徹夜ハイになった時、部屋の片づけとか水回りの掃除を始めて……」
遠い目になると、尊さんが笑う。
「それ、分かる」
「尊さんも一夜漬けしてましたか?」
「しねぇよ。しっかりコツコツ派だ」
「やっぱり~! 尊さんは一夜漬けなんてしないで、ちゃんと熟成して味を染みこませるタイプだ」
「スルッと食いもんの話になるなよ……。俺は浅漬けも好きだけど」
「浅漬けも美味しいですよね……。あれはサラダだ」
私は京都の祖母が作ってくれた浅漬けを思い出し、涎を垂らしそうになる。
「……ま、ゆっくり考えていくか。手離れのいいものから少しずつ、な」
「はい!」
私は頷き、再度尊さんの隣に座って彼の腕を組んだ。
**
その後、二日の休養を経て、私たちは三泊四日の白浜温泉行きへ出かけた。
町田さんは『ご多忙でしょうけど、お体を壊さないように適度に休憩を挟んで楽しんできてくださいね』と言ってくれた。
予定では羽田から南紀白浜空港まで飛行機で移動し、そのあとはハイヤーを使っての行動になるようだ。
フライト時間は十一時四十分で、十二時五十分にあちらに着いたあと、少し遅い昼食をとる事になっている。
南紀白浜空港行きはJALがメインなので、第一ターミナルでの待ち合わせになる。
国内線なので普通席でもまったく構わないんだけど、普通席より若干ゆったりしているクラスJに乗るそうだ。
将馬さんや百合さんの体の負担を考えると、そのほうがいいのかもしれない。
今回同行するメンバーは、将馬さん、百合さんご夫婦の他に、ちえりさん、大地さん、小牧さん、弥生さんだ。
大地さんも本来は仕事があって忙しいだろうけど、『女所帯の中に尊が一人だけは可哀想だ』と、夏休みをずらして同行してくれるらしい。
私たちはJALのカウンター前で待ち合わせをしていて、そちらへ向かって歩いていると、久しぶりと思える面々の姿があった。
「朱里さーん!」
私たちに気づいてブンブンと手を振ったのは、小牧さんだ。
以前に〝こま希〟で会った時は素敵な着物を着ていたけれど、今日はロングヘアを纏め髪にし、レモンイエローのワンピースを着ている。
そのパッと目を引く色が、明るい彼女にぴったりだと思った。
「お久しぶりです!」
私はタタッと小走りになり、彼女たちのもとへ駆けつける。
今日の私のコーデは、黒いノースリーブに鮮やかなバイオレットのフレアスカート、上にグレージュのカーディガン、黒いスニーカーだ。
飛行機に乗るので髪は二つ縛りにしている。
尊さんは普段とあまり変わらず、白Tにグレンチェックのテーパードパンツ、黒いスニーカーだ。
「朱里さん、こんにちは。変わりない?」
将馬さんと百合さんは近くのベンチに座っていて、私たちを見て歩み寄ってくる。
百合さんはライトグレーのトップスにライムグリーンのパンツを穿き、白いレースのカーディガンを羽織っている。
「百合さん、お久しぶりです! うわぁ、綺麗な色の服を着こなされてますね。素敵!」
手放しに褒めると、彼女は照れくさそうに微笑む。
「歳と共に否が応でも地味になっていくから、色々工夫しているわ」
そう言った彼女は、後ろから歩いてきた尊さんに目を向けて笑いかける。
「尊、久しぶりね。熱中症になっていない?」
若干、彼に話しかける百合さんの表情や声にぎこちなさを感じたけれど、彼女も努めて親しくなろうと努力しているのが分かった。
「お久しぶりです。俺は元気にやれています。……ゆ、…………、お、…………お祖母ちゃんも体調を崩していませんか?」
〝お祖母ちゃん〟と言う時、尊さんは口ごもり、少し赤面する。
(頑張れ!)
私は心の中でエールを送る。
「平気よ。気遣いをありがとう。先日、オーストラリアのお土産が届いたわ。わざわざありがとうね」
「いいえ、少しばかりで申し訳ないですが」
そんな祖母と孫のやり取りを、周りの人たちはニコニコ笑顔で見守っている。
コメント
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みぅだよ🤍🥀 第838話、読み終えたよ〜。 尊さんと朱里さんの「浅漬けはサラダだ」みたいなゆるい会話、ほっこりしたし、そこから旅行の風景に切り替わる流れがすごく自然だった。百合さんと尊さん、ぎこちないけどちゃんと“孫”って呼ぼうとしてる尊さんの赤面、めっちゃ尊い……!(語彙力) 続きも気になる。旅行中に何か起きるのかな? 楽しみにしてるね🌙