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私
の名前はアルスラーンです。
パルス国の王太子にして、国王アンドラゴラス三世の甥にあたります。
十四歳になりました。
つい先日まで、伯父王アンドラゴラス陛下の御領地ペシャワール城にて、家庭教師たちに学んでおりました。今は王宮に帰りまして、騎士見習いたちと訓練をおこなっております。
さすがに殿下と呼ばれるようになりました。
しかしそれは私が望んで得た地位ではありません。
一年ほど前にとあるゲーム実況動画を見ていて知ったのだが、「アイテム」というのは英語圏では「Item」と書くらしい。しかし日本ではなぜか「item」と書かれていることが多い気がするのでちょっと驚いた。あと「~コレクション」という単語もあるし、やっぱり英語の方が正しいんじゃないかと思ったりする今日この頃である。
さて、それを踏まえて今私が言いたいことを簡潔にまとめるとこうなる。
「アイテム集め楽しい!」……うん。これだけ言っておけば大丈夫だろう。あとは勝手に想像してくれるさ。
「ねえ、わたしにもその本見せなさい」「えー嫌だよ」「じゃあ一緒に行くわよ」「それってつまりデート!?」とかなんとか。
そういえば最近、女の子に話しかけられる機会が増えた気がするぞ。やっぱり僕の魅力が世間に浸透してきているのか……フッ、罪作りな男だぜまったく。
「あのぉ〜……」「ん?」「これ落としたみたいですよ〜」「あっ! 僕のハンカチ!!」「はい♪」「ありがとうございます!」「いえいえー」
「お姉さん可愛いですね! 今度お茶でもしましょうね! 連絡先交換して下さい!」「えぇ!? あ、その……」
「おいそこの女ァ! オレ様と勝負しろォオオオ!!!」「きゃぁああッ!」「なんだテメェエエエッ!!」「邪魔だどけェッ!!」「痛ったぁあい! ぶつかったじゃないですかっ! 謝ってくださいっ」「知るかボケぇええっ!!」「あーもう……やめてくださいよぉ~」
街角で少女が絡まれていた。その光景を見て、思わず口元が緩んでしまう。しかしそれも一瞬のこと。すぐに表情を引き締めると、「待てコラァアアッ!!」「ぎゃあっ!?」俺は男たちに掴みかかり、ボコボコにした。
***
「ありがとうございましたっ」
助けた女の子に礼を言われながら、俺は大きく手を振ってその場を去った。
さっきまで見ていたドラマのワンシーンみたいだった。女の子を助けるヒーロー。うん、悪くない。
――でもやっぱり違うかな。
あの子を助けた時に浮かべたのは笑顔じゃなかったし。あの子が笑ってくれたとき浮かべた表情は喜びでも幸福でもなかった。ただ安心して嬉しかっただけ。だからわたしが笑う時はいつも泣いていて泣きながら笑っている気がする。それでもやっぱり嬉しいときは笑顔を浮かべたい。だってそっちのほうが楽しいもん。
誰かを喜ばせたくてやってることなのにどうして自分が泣くことになるのかよくわからないけどきっとそれは大切なことだと思う。
わたしはあなたのそばにいるだけで幸せな気分になれる。あなたは違うかもしれないけれど。
わたしはいつまでここに居られるかな?