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『こんにちは。
水曜日のスケジュールです』
毎回そんな言葉から始まる一通のLINE。
その文字を打つ顔はLINEを送るたびに歪んでいった。
「ねこ…?」
「ニャ~」
演者の演技と合うよう音響を入れる。
「…君も1人?僕と一緒だね」
場にいる皆が演技に注目する。
本番まであと1ヶ月。最初はこの役を嫌がっていたものの、今となってはハマり役を超えて自分の一部…いや一部どころか70%を占めるくらいにまでに成長(ほぼ依存)してくれていた。
演出・脚本を手掛けると決まる前から、ずっとこの子みたいな子にやってほしかったシーンをやらせると心に決めていたのだ。
どれだけ自分が魅力かとか、役に合っているとかを説明して押して押して押したおかげもあるのだろうが、あの子自身が役としっかり向き合ってくれたおかげだ。
「しっ、ほらいけよ。…お母さんが待ってるだろ」
演技は続き、もう一人の登場人物が上手から出てくる。
何十回も見た光景。だけど見るたびに上手くなっていっているのがわかるそんな演技にどんどん惹きつけられていった。
「ゆなちゃん、めっちゃうまくなったね」
シーンの練習が終わり、その一言を放つ。
すると役から魂が抜けるようにもとの明るい顔へ戻った。
13歳の中1の子だけど子役5人の中でダントツで上手。周りからの評価も高いし気が利く。この役もこの子じゃないとできなかっただろうし重なるところが沢山ある。
「ありがとうございます!…えっと気になったんですけど、先生もうちょっと遅めに出てくるほうがいいんかなーって…ちーちゃんどうですか?」
「それいいかもね!先生次やってみてくれる?」
「おっけーっす」
「めっちゃ仕上がってるやん!あとソロの歌私と合わせるだけやなぁ!!次のシーンがめっちゃええとこやし、頑張ろな!!」
「いや阿部さん歌ちゃんと練習してきたんでいけますよ!音下げてもらったし」
他愛もない会話。そこに混じる自分。
自然に笑えているのだろうか。
まだ誰も知らない。笑ってもらえるように笑っていることも。全部全部1人で抱えこんで黒く何かが染まっていっていることも。
「じゃあ次のシーン行きましょか」
「「はい」」
「あのあきさんほうきとちりとりってありますか?」
「あ、まって忘れたかも…w」
「じゃあ今日エアーでいきます」
「え、せんせーいけるんですかw?」
「前みたいにならんようにするからいける(多分)」
「期待しとこ」
「そんなん言うとるけどほんまにソロいけるんやろなー?」
「できますって!」
「ちなみに」
「はい!」
「…はい」
「ちーちゃんもね!」