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#素人作品
YAMATO
824
#ほのぼの
#大人の恋
E―さん
29
「――えっと……一応そこにいるあなたの恋人、新沼晴永の弟です」
「……っ」
息が詰まる。
――弟。
その一言で、昨日からずっと感じていた違和感が、脳裏でゆっくりと繋がり始める。
浮気をして帰ってきたにしては、あまりにもいつも通りに、瑠璃香のことばかりを気にしてくれていた晴永。
瑠璃香のあからさまな拒絶にも、わけが分からないみたいに戸惑うばかりに見えた。
あれは……すべて嘘偽りない態度だったのだ。
そういえば以前、晴永が言っていた。
自分には一歳下の弟がいて、イタリアンの料理人をしているのだと。
瑠璃香の視線が、晴永と晴留の間を何度も行き来する。
似ている。
いや、似ているどころではない。
背格好も、顔立ちも、髪型も。遠目なら、見間違えてもおかしくないくらいに。
兄弟だから似ているのは当たり前だが、晴永と晴留は、まるで一卵性双生児のようにそっくりだった。
強いて違いを挙げるとするならば、身に纏う雰囲気がほんの少し違うことくらい。
晴永より晴留の方が、のほほんと春風めいた空気感をしている気がする。その程度の差だ。
でも、だからこそ、思う。
「……じゃあ」
掠れた声が、ようやく喉から零れた。
「昨日、藤井田さんとこのお店の前にいらしたのも……」
「……え?」
瑠璃香の言葉に、晴留が目を瞬かせる。
「――もしかして、俺と千紗さんが一緒にいたの、見られてたの!?」
その反応で、瑠璃香の胸が大きく揺れる。
やはり昨日、自分が見たのは――。
「うわ、マジか……」
晴留は額を押さえて、小さく呻いた。
「ひょっとして、そのせいで兄さんと気まずくなってたり?」
「……っ」
図星だった。
瑠璃香が言葉に詰まったことで、晴留の顔に申し訳なさそうな色が浮かぶ。
「ごめんね。俺のせいだ」
「はーくんのせいじゃないでしょ。別にやましい関係なわけじゃなし」
千紗がすぐさまフォローに入ったけれど、それを遮るように、
「……どういうことだよ」
晴永の低い声が、割って入った。
状況を掴み切れていないんだろう。
だが、何となく何かを察したみたいに晴留と千紗を見て……それから真っ直ぐ瑠璃香に視線を移した。
「昨日から態度おかしかったの、もしかしてそのせいか?」
「……っ」
瑠璃香の肩が、小さく震える。
晴永は、本当に知らなかったのだ。
分かっていたけれど、今の反応で、それを痛いほど感じさせられてしまう。
胸の奥が、じわりと熱を持った。
安堵と。
それ以上に――。
(……私、晴永さんのこと、疑っちゃってた……)
喉の奥が、ひりつく。
指輪を受け取った時、晴永のことを信じると心に決めたはずなのに――。
「……ごめん、なさい……」
罪悪感で、ぽつんとひとこと謝るなり、晴永の顔をまともに見返すことができなかった。
そんな瑠璃香に、晴永が一瞬驚いたように息を呑む。それから、本当に意味が分からないとでも言いたげに口を開いた。
「……ちょっと待て、瑠璃香。なんで謝るんだよ」
「だって、私……」
そこで言葉を詰まらせた瑠璃香を、晴永は何も言わずに待ってくれる。
コメント
2件
誤解でよかったー。そしてるりかちゃんを責めないはるながくんが好き❤️
おお…まさか弟さんだったとは!あの浮気疑惑が一気に晴れてスッキリしたわ~。瑠璃香が罪悪感で「ごめんなさい」って謝るところ、切なかったけど、晴永が優しく「なんで謝るんだよ」って返すのがもう…ああ、このカップル本当にいいな。誤解が解けて胸のつかえが取れた感じ、こっちまでホッとしたよ✨