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【第5話:休日の殺し屋と次なる影】
1. 24時間ぶりの「定時退社」
成田の決戦から丸一日。
佐藤(42歳)は、自宅の6畳一間のアパートで、久しぶりの「完全な休日」を満喫していた。
エアコンを18度に設定し、使い古した座椅子に深く腰かける。手には冷えた缶ビール。テレビ画面には、昨夜見逃したアニメの配信映像。
「……これだよ。これこそが俺の求めていた人生だ」
窓の外は眩しい午後の日差し。危険な現場も、サイレンの音も、爆薬の匂いもない。
昨夜振り込まれた報酬100万円(300万の3等分)の通帳をチラリと眺め、佐藤は満足げに頷いた。
「これだけあれば、しばらくは安い仕事を受けずに済む。次の案件までは最低でも1ヶ月は休業だ」
一口ビールを煽った、その瞬間。
ドンドン! ドンドン!!
アパートの薄い玄関ドアが、破壊されんばかりの勢いで叩かれた。
「佐藤さーん! 入りますよー!」
「ちーす、お邪魔しまーす!」
鍵をかけていたはずのドアが、カチャリとあっけなく解錠され、春日(19歳)とニトロ(爆弾魔・女子高生)が不法侵入してきた。
「お前ら……! なんで俺の家を知ってんだ!? てかどうやって入った!?」
佐藤が飛び起きる。
春日はピカピカの限定スニーカーを履いた足をバタつかせながら、リビング(兼寝室)へ上がり込んだ。
「いやー、ダークウェブで佐藤さんの住民票データ買ったら速攻で住所出たっす」
「売るなよそんなもん! ニトロ、お前手に持ってる怪しいピンは何だ!」
「え? 南京錠のピック。3秒で開いたよ。おじさん家、セキュリティゆるゆるだね」
ニトロは手に持っていたピッキングツールをポケットに仕舞うと、勝手に佐藤の冷蔵庫を開けて高級アイス(佐藤が自分へのご褒美に買ったやつ)を取り出した。
「あ! 俺のハーゲンダッツ!!」
2. Z世代の散財と、忍び寄る「通知」
「で、何しに来たんだよお前ら。俺は今日から長期休暇なんだよ」
佐藤は頭を抱えながら座椅子に戻った。
春日はドヤ顔で最新型のiPhoneを掲げた。
「いやー、100万入ったから買い出しっすよ! スマホとスニーカー買って、あとTikTokのフォロワー増やすための広告費に20万突っ込みました!」
「バカかお前は! 15万円で汲々としてた生活をもう忘れたのか!?」
「あたしはねー、特製ニトロエンジンの改良パーツと、軍用の高性能プラスチック爆薬(C4)の原材料を爆買いした!」
ニトロはアイスを頬張りながらピースサインを作る。
「危険物取締法以前に裏社会のルールに抵触してんだよ! 少しは貯金という概念を覚えろ!」
説教を始める佐藤だったが、二人は全く堪えた様子がない。
「まあまあ佐藤さん。今日は俺たちの『チーム結成お祝い』ってことで、ピザ奢ってあげるんで許してくださいよ」
「あたしLサイズ3枚食べるー」
「俺の休日を返せ……」
佐藤が大きな溜息をついたその時、テーブルの上に置いてあった佐藤のスマホ、春日のスマホ、そしてニトロのスマホが、同時に激しく振動し始めた。
ブブブブブブブブ……!
異様なシンクロ。
3人は顔を見合わせ、それぞれの画面を見つめた。
画面に表示されていたのは、協会のアプリからの【緊急一斉送信】だった。
3. 次なる敵は「身内」
佐藤は嫌な予感を抱きながら、通知をタップして開いた。
そこに書かれていたテキストを見た瞬間、車内で見せた佐藤の鋭い「プロの目」が蘇る。
【緊急通達:コード・レッド】
内容:協会・関東支部のデータセンターが、何者かによって物理ハッキングされました。
盗み出されたデータ:関東エリアに所属する全「清掃員(殺し屋)」の個人情報、本名、および暗殺履歴。
犯人グループ:元・特別監査部所属「叛逆者(ならず者)チーム」
指示:ただちに該当グループを特定し、データを奪還せよ。
*特別報酬:一頭につき500万+永年特別手当 *
「……マジっすか」
春日の顔から、いつもの軽薄な笑みが消えた。
「全清掃員の個人情報……? ってことは、俺たちの顔写真も本名も、裏社会全体に流出するってこと……?」
「流出したら、あたしたちが過去に消したターゲットの遺族とか、敵対組織から一生命を狙われ続けることになるね」
ニトロもアイスを食べる手を止め、真顔になった。
佐藤は缶ビールをテーブルに置き、低く呟いた。
「ただの暗殺依頼じゃねえ。……俺たちの『命の権利』を賭けた生存戦略だ」
「元・特別監査部」といえば、第1話で二人の前に現れた「黒傘の女(アルマ)」と同等、あるいはそれ以上の戦闘スキルを持つエリート暗殺者集団だ。
「……佐藤さん」
春日が佐藤を見た。
「やるしかないっすよね。俺、せっかく買った限定スニーカー履いて逃げ回る人生なんて嫌っすよ」
「あたしも。あたしの爆弾技術を盗み見されたらムカつくし」
佐藤はボロいアパートの天井を見上げた。
エアコンの風が、虛しく部屋を冷やしている。
「……はあ。俺の1ヶ月の長期休暇が、開始5分で消えたな」
佐藤は立ち上がり、押し入れの奥から黒いビニールテープと、新しい高圧バッテリーを取り出した。自作スタンガンのチューンアップを開始する。
「春日、敵のハッキング経路を特定しろ。ダークウェブの有料noteでも何でも使え」
「合点っす!」
「ニトロ、持てるだけの爆薬を準備しろ。派手にやるぞ」
「りょーかい! ガチのやつ持ってくね!」
定時退社を夢見る冴えないベテラン、ハイテクに強い生意気なZ世代、そして狂気の爆弾魔。
100万円の休日を奪われた3人の「本当の戦い」が、今度こそ幕を開けた。
(第2期へ続くかわからないが、まあやる気が出たらやろうかな😊)
コメント
1件
読み終わりました〜! ほのぼの休日から一転、3人のスマホが同時に震える緊迫感、めっちゃゾクゾクしました…! 「俺の休日を返せ」って佐藤さんの嘆きに笑いつつ、最後の「命の権利を賭けた生存戦略」って言葉にガチの緊張感が走りました。 次の展開、すごく気になります…!