違うんだってと、自分らは必死に止めたと、そう私の報せを聞いて慌てふためく皆を見て、内心嘲笑いながらその場を立ち去ったあの日。
彼奴らは運が良くてももうこの世には居ないだろうし、きっと生きてても苦しんでる。個人的にはあいつらに相応しいご褒美だと思う。
けれど、どこか他人事だった私はその光景を見て、気分のいい物ではないと思った。
「 …琴葉? 」
そう言われて、はっとする。おそらくぼーっとしていたのだが、どうも何を考えていたかが思い出せない。
目の前で手を振りながら心配そうな表情をして私の名前を呼んだ彼女の名前は [ 九霊院 雨衣 ] 。
紫髪と赤目で普通とは違う性質の獣耳を持った、妖怪と狐人の混ざった妖狐。
世間でもかなり有名な九霊院家の長女と認識されていて、今年で18歳。雪が降り今年の終わりを彷彿とさせるこの季節には、確かもう誕生日を迎えていた筈。
そんな彼女が、珍しく「頼みたい事がある」と連絡をくれたから、今日はそれに付き合っている。
特に予定もなく暇だった私にとっては、願ってもない事だったから丁度良い。そう思い、普段なら断るのだが今日は引き受けている。
「 わわっ、びっくりした〜!ごめんごめん、ちょっとぼーっとしてて…。 」
実際よりも大きなリアクションを取り、びっくりした様に振る舞いながら、申し訳無さそうに少し虚偽を加えながらも事実を伝える。無理に嘘をつくよりかは信憑性は増すだろう、と思ったからそうしたのだ。
「 そうなの?なら良いんだけど…具合悪かったらいつでも言ってね? 」
心配そうにそう言いながら、眉を下げながら笑った雨衣ちゃんは、こっちだよと手招きをしながら再び歩き始めた。
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