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手を置いて椅子から立ち上がり、そして教室から出た。隣のクラスも人はおらず、教室を見渡すと誰もいない。

やっと辿り着いた1-2クラスの扉を開けると、人がいた。だが、何か変だ。全く動かず、呼吸の音すらしない。死んでいるのだろうか。

「あの……す、すみません」

声をかけながら女に近づくと、彼女は暗い目でこちらをみてきた。生きているようだ。少しホッとする。

にこりと微笑んで話しかける。

「貴方の名前は?」

「真央」

真央は声をかけられて嬉しくなり、弾んだ声を出す。表情も明るい。彼女は全員行方不明のせいで、誰とも話していなかった。久しぶりに話せて胸が高まる。

「君も一人なんだ」

「うん、そうだね」

そう言っている真央の肩には、化け物が乗っていた。目が複数あってこちらを覗いている。ケタケタ笑っていた。恐怖のあまり顔を青ざめる。体が石のように固まってしまう。

彼女は気づいていないようだ。

「ひっ……」

「何か私についてる?最近体が重いのよね」

「いえ、何もついてないですよ」

誤魔化して、そのまま行こうとしたら真央に止められる。そして真っ黒な赤ん坊を見せられる。

彼女はとても朗らかな表情で見せてくる。子供がずっと欲しかったのだ。

「私の子供よ」

「子供?」

それは複数の目がついた人間の赤ん坊のような存在だった。背後にいる化け物とそっくりだ。まさか……。


あることに気づき、悟はその場から逃げていく。しかし背後からはあの女がやってくる。背中から足が生えていき、それを使って蜘蛛のように歩いてきた。足が速すぎる。追いつかれる。

彼女は顔を見られてしまったのだ。父親にさせるまで、生きて返すわけにはいかない。

「待ちなさーい!」

「ひっ!」

一瞬恐怖のあまり硬直してしまった。しかし無理やり足を無理やり動かして、風のように逃げる。逃げる。

階段を降りて、そのまま玄関へ出ようとした。しかし、尻尾から蜘蛛の糸を出されて捕まってしまう。

「うっ……」

「さあ、私たち家族になるのよ」

「絶対に嫌だ。こんな化け物となんか」

「ふふ。ダメよ。さあ、行きましょう」

嬉しそうに微笑む真央に蜘蛛の糸を取られて、そのまま手で握りしめられてしまった。眠気に襲われて、意識を失う。



気がついたら自分の家に戻っていた。おかしい。あの時は学校にいて、変な化け物に追われていたはずなのに。記憶が途切れていた。考えても考えても思い出せない。

ベッドから慌てて体を起こして台所へ向かうと、母の明子が立っていた。彼女は大きな口を開き、鋭い牙を見せて焼かれた豚肉をモグモグと食べていた。とても美味しくてほっぺたが落ちそうだ。

「母……さん」

近づいて呼びかけると、そこにいたのはいつもの母である。しかしお腹をよく見ると、もう一つ口があった。母は化け物になっている。

彼女自身はそんなことに気づいておらず、ずっとお腹が空きすぎてぐるぐると鳴っている。とても腹が減っていた。

悟は喚き散らす。

「僕の母さんを返せ!化け物め!」

「なんのことかさっぱり分からんな」

そう腹の口に言われて食われそうになった瞬間、手から黒い猫が現れて退治してくれた。これは一体なんだろうか。

しかし母は倒れたまま動かない。目から涙が溢れてくる。母さんを死に追いやった化け物は許さ……そう考えていた瞬間手が動き、生き返った。起き上がると、口裂け女のようになっていた。

そして何事もなかったように、料理を始める。その様子に汗を流して、恐る恐る近づいていく。もしかしたら襲われるかもしれない。

「か、母さん……」

「あら、どうしたの?」

「本当に母さんだよね?」

「ええ、そうよ。貴方のお母さんよ」

そう背中を向けて言われたので、ほっと一息つき料理を待っていた。そして出てきた料理はとても美味しそうだ。

細い春巻きにレタスとキャベツのサラダ、肉汁が溢れるハンバーグに野菜たっぷりの味噌汁。どれも美味しくて、一気に食べてしまう。

「母さん、美味しいよ!」

座った母は口裂け女の口で喋る。彼女は息子が美味しそうに食べている様子を見て、満足している様子だ。

「ありがとう」

彼女の瞳は前髪に隠れて見えないけれど、とても喜んでいるようだ。

そして「いただきます」と手を合わせてから彼女も食べる。大量に作った豚肉のハンバーグを一気に平らげていく。そんなに食べたら胃がもたない。

「か、母さん……そんなに食べないでよ!」

腕を掴んで止めるものの、全く止めようとしたない。むしろ加速してしまう。

「肉汁たっぷりの豚肉ハンバーグ、美味しいわ」

「ううっ……母さん!」

目から涙をこぼして止めようとしたが、止まらない。無理やり止めようとしたが、皿まで食べてしまう。もうこの人は僕のお母さんじゃない。


そのまま目から涙を流した状態で外に出ようとしたら父が帰ってきた。

「父さん。母さんが変なんだ!お肉をたくさん食べて……」

父をよく見ると、とても背が高くなっていた。足を曲げて入ってき、天井に頭がついてしまう。これが父!?そんなわけない!

悟は恐怖のあまり、青白い顔で声を震わせる。

「ああ、悟か。仕事から帰ってきたぞ」

「父さんどうしたの!?」

「何がだい?」

「背が高すぎだよ!」

「気のせいだ」

そうすました顔で言い、にこりと微笑んだ。父は父のままで安心してしまう。

父も息子が生きていて、心の中で感動していた。

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