オリキャラのストーリーです
ただ君の声が聞きたい
心からそう願った
七夕は多くの人が願い事を短冊に書く
七夕の由来なんて知らないしどうでもいいけど
どうせ古くからの風習と言ったところだろう
そんなもの信用なんてできないし
願いが叶ったというのは自分の努力か
ただの運に過ぎない
こんな紙切れに願いを書いたところで
願いが叶うか叶わないかは変わらない
もし願いが叶うのならば早く叶えて欲しい
星side
俺の平穏な日常はある日を境に消えた
いつも通りの学校の帰り道
1台の車に跳ねられた
不慮の事故だ
幸い一命を取り留めたものの
加害者は逃走
俺は聴力を失った
その後救急車に運ばれ
入院することになった
看護師 夢乃さんこの方怪我が治るまで入院する ことになりました
星 ペコ
夢乃 …ペコ
なんて綺麗なんだろうと思った
本を読む彼女は俺が見た中でいちばん綺麗だった
どんな景色にも劣らないほど美しいと思った
彼女のことを知りたい
心からそう思った
看護師 夢乃さんと星さんは同い年だから
よかったら仲良くしてね
夢乃 コクッ
看護師 彼は耳が聞こえないから話す時は筆談ね
夢乃 …!コクッ
夢乃が紙と鉛筆をとる
夢乃 ”初めまして”
星 …!
星 “初めまして”
夢乃 ”夢乃(ゆの)って言います”
星 “星(せい)です”
夢乃 ”よろしくお願いします”
星 “こちらこそ”
初めはお互い緊張していて話も弾まなかった
ただ少し会話を交わすだけで俺も心は高鳴った
これが恋なんだとすぐに認識した
一生懸命文字を書く姿も
全てが綺麗だった
日が経つにつれ俺たちは仲良くなった
俺たちが出会ってもうすぐ半年になる
夢乃 ”もうすぐ七夕だね”
星 “そうだな”
夢乃 ”前に話したけど”
“私病気なの”
話される前から何となく病気であることは察していた
よく検査をしていたり
薬を飲んでいた副作用だろうか
髪が日に日に抜けていた
夢乃 “白血病って言う病気でね”
”この病院に来てそろそろ1年になるの”
星 …!
昔聞いたことがある
白血病の余命は1〜2年
夢乃 ”私もうすぐ死んじゃうんだって”
星 “え…?”
夢乃 ”そんな悲しそうな顔しないでよ”
信じられなかった
夢乃は真っ直ぐで優しくていつも笑ってた
もうすぐ死ぬなんて素振りは全く無かった
星 ”死ぬのが怖くないの?”
夢乃 “去年から余命が1〜2年なのは分かっ てたから”
過去
夢乃side
最初は発熱が続いた程度だった
ただの風邪程度だと思っていた
普段よりも熱が長引いたため病院へ行った
医師 落ち着いて聞いてください
夢乃さんは白血病です
母 え…?治るんですよね?
医師 最善を尽くします
抗がん剤治療を行います
治るとして最低3年は必要ですね
何を言っているのか分からなかった
病気?
治らないかもしれない?
母 夢乃ならきっと大丈夫よ
そう慰めてくれた母の手はいつもの優しく暖かい手ではなく、少し冷たく震えていた
そこから治療が始まり私は白血病について調べた
半年も経つと身に染みて分かり始めた
私はもう長く生きられない
誰よりも分かった
だから私はもう生きる希望を無くした
生きている今を楽しもうと決めた
未来に希望は抱かないと決めた
病院では基本看護師さんとしか話さない
学校ではいつも1人な私に友達は居ない
生きている今さえ楽しめなかった
唯一好きなのは読書だった
いつだってヒロインの気分になれた
いつだって私を笑顔にしてくれた
そんな私にも星という友達ができた
嬉しかった
私の気持ちはだんだん
友達ではなくなった
初めて知った
これを恋ということ
本の世界ではなく本当にする日が来ると
思っていなかった
過去をそして未来を少しだけ恨んだ
夢乃side
夢乃 ”怖くない…とは言いきれないけど”
”それ以上に今を大切にしたいから”
星 …!“そっか…”
夢乃 …ポタッ
私の瞳はじんわり熱を帯びていて
手には雫が零れていた
星 …!
私今泣いてる…
夢乃 もっと生きたかった
もっと星とお話したかった…
星に好きだって伝えられるほど
長い時間隣に居たかった(涙)
星は困った顔をしてた
当たり前だ
私は今声を出してるだけで紙に書いていない
何を言っているのか伝わっていない
でもその方が良かった
私の気持ちなんて知らなくていい
星side
本当は知っていた
夜遅く夢乃の背中が震えてること
聞こえはしないけどきっと泣いてる
何となく察していた
でも気付かないふりをしていた
夢乃は僕に隠していたから
死んでしまうことも
それが怖くて悲しいことも
隠していたから
思い出したくないだけかもしれないから
知らないふりをしていた
でも思っている以上に限界だったみたいで
俺の前で泣いていた
俺は声をかけられない
何を言っているかも分からない
ただ重く動かない身体を無理やり動かし
ただただ抱きしめた
夢乃はなにも言わず
いや聞こえなかっただけかもしれないが
ただ俺の肩を濡らしていた
その翌日
夢乃は静かに息を引き取った
俺が最後に見たのはいつものように
“おやすみ”と書いて笑顔で眠った顔だった
星 …
母 あの星さんですか?
星 …?
母 あっ…
(紙に書く)
母 ”星さんですか?”
星 コクッ
母 ”夢乃の母です”
そう声をかけてきたのは夢乃と少し似た女性だった
母 ”夢乃の荷物を整理していたらあなた宛 の手紙がありました”
それだけ言って女性は病院を去った
手紙を開くとそこにはいつもの夢乃の字が並んでいた
正直それだけで泣きそうだったがそれをグッと堪えて手紙を読み進めた
星へ
これを読んでる頃には私はもういないのでしょう。
初めて星が来たあの日私の日常は輝いたものになったよ。
友達が居なくて正直寂しかった私はお話出来る相手が居るだけですごく嬉しかった。
耳が聞こえないと聞いた時はとても驚いたな。
そんな素振り見せなかったから。
星は優しくてすごく素敵な人だと思った。
いつからか私が星を見る目は友達じゃなくて恋愛対象だった。
私が泣いた日、星はすごく優しくて暖かい手で私の背中をさすってくれた。
星はなにも考えていなかったかもしれないけど私にとってはすごく心強かった。
暖かい体でただ力いっぱい抱きしめてくれたことがとにかく嬉しかった。
星、私はね死ぬのがすごく怖かった。
すごくすごく怖かった。
でもね今を大切にしたいっていう気持ちは嘘じゃなかった。
星との毎日を大切にしたい。
思い出を作りたい。
ずっと隣に居たい。
これは嘘じゃない。
星のおかげで毎日がすごく楽しかった。
正直まだ死なないんじゃないかな、このままずっと星とお話できるんじゃないかな。
なんて思っちゃった。
でも現実は甘くなくて。
織姫と彦星は私の願いを叶えてくれなかった。
星の隣にずっと居たい。
毎日そう願ったんだけどな。
思いは届かないままだった。
星はこの先辛いことも沢山あると思う。
でもね私の分まで沢山生きて欲しい。
沢山楽しいことを知って。
辛いことも知って。
私の事なんて忘れて恋をして欲しい。
長くなってごめんね。
最後に
私の真っ暗な人生に色をつけてくれてありがとう。
絶望してた私の人生に光をくれてありがとう。
恋を教えてくれてありがとう。
私の一生分の感謝を伝えるよ。
本当にありがとう。
あなたに恋をした1人の少女より。
読み終わるころ俺の涙は止まらなかった。
俺は夢乃の声を1度も聞くことなく
夢乃は天国に行った
もし七夕とやらで願いが叶うなら…
いかがでしたか?
良ければコメントお願いします
以上
おつ栞音