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「君達も気に入った娘が居たら、場内入れてあげてくれても構わないからね? でもまさか楓君が一緒だとはね、少し意外だったよ」
黒川はニヤリとその口元を上げて見せた―――
「すみません黒川さん、仲の良い方って私、楓さんしか居なくって…… 」
VIP席のBoxに座り、本指名であろう女の子からオシボリを受け取る。お尻に違和感を感じ、横に腰掛ける楓を見る…… ニタニタと中年男性のそれと変わらない助兵衛な表情を浮かべている―――
―――おい、まて! 此処では止めろ、割れ目を解放しろ、そしてその顔やめろ。
「黒川さんお久しぶりです、私までお邪魔しちゃってごめんなさい。今日は有難う御座います。中々ご挨拶に伺えず申し訳ありません」
―――病気かあんた、普通に放すな、いや話せ、割れ目を話せ、いや放せ、そして普通に話すな。なんだこれ……
楓が軽く会釈をすると、黒川は気にするなと掌をヒラヒラとさせ葉巻への火種を待った。
高い天井から降り注ぐ豪華なシャンデリアは、幾千もの星空を思わせ幻想的な世界を作り上げる。集まり弾ける光の結晶が美しく着飾った女達をキラキラと包み込み一段と神秘的に際立たせた。そう、暗雲と伴に彼女が現れるまでは……
「お待たせしてしまって、申し訳御座いません黒川さん」
淡いブルー系の柔らかな気品漂うドレスが、甘い香りを漂わせふわりと舞い降りた。黒川の横に座ると言う行為が、彼女が二人目の本指名である事を示していた―――
―――楓の眼光が鋭く光る。
「あら、誰かと思えば楓姐さんじゃないですか? 黒川さんが女の子を連れていらしたと聞いていたので、どこの売れっ子キャバ嬢かと思ったら…… なんだ、そうですか残念…… 」
テーブル担当の黒服が楓に耳打ちする―――
「楓さん、相手にしたら駄目ですよ? 楓さんは今はお客様なんですから、気に食わなかったらおっしゃって下さい、直ぐに俺が外しますから」
「あぁ、タツ坊、心配しなくて大丈夫。久しぶりのこの感じ、思い出して来たから」