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- すげぇ!
- なんかわかんねぇけど、
- なんかわかる!!
今度は、描いた地獄の絵を見ながら、メモを書き殴る。
ナギと“契約”したおかげで見え方、感じ方が変わった。霊能力を強化するって話だったけど、契約してからやっと意味がわかった。
眠ってた第六感が覚醒したって感じだ。直感が強くなっただけじゃない。なんというか、、、
“なんとなく”がはっきりするようになった。
だから契約が終わったあと
すぐ
絵を見返さず、必死にメモをとった。
【契約前】と題字をつけて。
契約を交わす前の目で見た時に思ったこと、感じたこと、考えたことを必死になって洗い出した。
絵を描き終えたあとから、どう描き直そうかをずっと考えてた。そのおかげで迷いはなかった。忘却より早く、速くと、書き起こした。
そんで、やっと、書き終えて
今、
変化した目と感覚で、改めて自分の絵を見返してる。そしてページをめくり、【契約後】という題字をつけてメモをしている。
- やっぱり見え方が全然違う
契約直後に絵を見ないでよかった。もしそのまま絵を見返しながらメモを書いてたら、、、
絶対に後悔していた。
こんな機会はなかなかない。記憶を頼りに描く。けれど視界が変わる前と後、その両方の見方を記録できるんだ。言ってしまえば、数分で十年分の変化を得られたようなもんだ。
- 契約してよかったわ
こんな最高すぎる特典がついてくんだから。
- よし、
- もういっちょ集中
*
*
*
- 地獄の炎はこの描き方だとまだ弱いな
- 粘着質だったけれど、火力はあった
- この絵にはそれが足りない
- でもそれより、いやそうじゃない
- あれは慈悲が滲んでたんだ
- それがここにはない
- 他にもまだまだある
- 新しい発見ばかりで面白い
- 変わったんだ!
- 変わったおかげだ!
- 感嘆してる場合じゃない!
- もっともっと!よく見ろ!気づけ!
*
*
*
出し尽くした。
ここまでに起きた経験は全て書き起こした。
そんな気がする。
今の段階でやるべきはもうない。
あとは時間を置いて見返すだけだ。
そしたらまた変わってるはず、、、
それを踏まえて、また描き直すんだ。
- 家帰ってすぐやるか?
- そんで日を跨いでまた描くか
- 一週間くらい、、、いや一カ月だな
- それくらいはかけて描こう!
- あぁ
- 描きたいものがあるっていいわ
- 気持ちいい
- この感覚も久々だわ
- めちゃくちゃ生きてるって感じ
- それがずっと鳴り止まない
これもいつぶりだ?小さいときは趣味って感じもせずただ好きでやってたし、中高で部活やり始めてからは暇つぶし、大学は、楽しかった。そうだな。大学時代がめっちゃ没頭してた。懐かしい。
- なんで忘れてたんだ?
- この感情を
- この感覚を
- ずっと惰性で描いてたのがアホらしい
- いや、でも、あれはあれでいいのか?
- この変化があるからこそ意味がある
- 気がする
- だな
- でも、でもなんか、もっとこう、、、
- 好きなもんを描いてるのが楽しい
- それもあの時間あってこそだ
- でも、それでも
- とにかく今のが楽しい
- ああ!!そうだ!!
- こんなって好きに、、、
- 描きたいものを描けばいいんだよ!
- それも間違ってないんだよ!!
- もっとはやく気づければよかった
- って地獄見せられたおかげだもんな
- 契約で霊能力を得たおかげだよな
- ほんとにナギにはマジで感謝だ!
- たぶん自力では無理だったはず、、、
- ってそんなんは今はどうでもいい!
- 今は
- 早く
- 早く早く
- 家に帰って、続きを描きたい!!!
- この衝動も待ち遠しさも全部!全部!!
- さいっっこうに気持ちいい!!!
- 今を生きてる!!!
- 息が出来てる!!!
この充足感に浸っていたい。
「ねぇ?」
「ん?」
「きみって変態??」
「うわっっっ!!!」
気づいたら超近距離にナギがいた。
- いつからいたよ!?
- 猫かこいつは!!!
俺は睨みつけようとナギの方を向いたら
目が合う。
首を傾げて俺を見るナギ。
笑ってはいない。さっきのはからかいじゃなかったらしい。純粋に俺に興味を持ってる目だ。なにか期待されてる目だ。顔だ。
- うん
- ほんと顔は、いいよな
でもそれよりも、なによりも、やっぱ
- 相変わらず綺麗な瞳だよなぁ
脳がもう創作方面に切り替わってしまっている。そのせいでナギの瞳が次の観察対象になってしまった。
目は猫みたいに大きくて、光があたる具合で色が変わって見える。資料用に買った天然石みたいだ。ラブラドライトだったか?でもこんなに輝いてない。深い真紅と宵を思わせる蒼が同居している。そこから生み出される純粋な美がまた良い。
- こんな宝石でもあればな、、、
「“夜明け石”のこと?あれ部屋にあったかな、、、?」
「なんだそれ、、、って、あ、、、」
そういえば、こいつ思考を読めるんだ。じゃあ今のも、さっきのも、、、うわぁ、、、
- 、、、クソッタレ
「はぁ!?!?どういうことじゃ!われぇ!?アタシに言ったんか?そうやんな?でしょ?ね?ねぇ??なんなんですか??どういう意味ですか???聞いてます今!!答えて!!」
「お前が悪い」
「だ!か!ら!どーゆーことゅーか、説明せいっってんだよ!おら!」
「プライバシーを侵害しまくってんだよ!!妖怪女!!!」
「人間!!!!です!!!なんどなんど言えばわかるの!?!?なんで?ねぇ?信じるって契約したよな??信じろよ!!信じる努力しーろーよーーーー!!!」
「じゃあせめて人間らしくしろや!!!」
「なんじゃおらぁ!!?表出ろ!!ぶんなぐ/
パンッッ!!
榊さんが手を叩いた音が大きく響いた。
「二人とも落ち着きなさい。まずナギ、お前が本気で殴ったら人間は死ぬぞ」
「あ、、、」
- マジかこいつ、、、
「わかったら頭冷やせ。黙ってこれでも飲んでろ。、、、千葉くんも、はい。カフェオレ用意したからこれで一息ついてみるのはどうかな?ずっと作業してたから疲れてるでしょ」
「ありがとうございます」
すっと差し出されたカップを受け取れば、ちょうどいい暖かさだった。飲んでみれば、温くもない。そして甘い。染みる。
- 気遣いの天才かな、、、
なんて感動してると榊さんが、ちょっと真剣な顔で頭を下げてきた。
「いろいろすまないね」
「いや!榊さんは全然悪くないので、謝られても、、、!!」
「いやいや、あれは私の教育不足だ、、、」
「野生を生きる猛獣の調教よりも難しいと思いますよ。それ」
「あははは!わかってはいるんだけどねぇ、、、ははは。一応アレでも、昔よりはマシになってるんだ」
「アレで、、、」
それってもはや災害じゃねぇか、、、
「口調とか距離の近さとか、あとは一旦考え出すと止まらないとことかは、どうにもならなかったんだ、、、」
榊さんの苦労が凄まじい哀愁を放つ。あの白髪もストレスじゃなかろうか。
これ以上この話を続けるのは良くないな。話題を変えよう。
「あ、昔っていうと付き合い長いんですか?」
「幼い時から顔馴染みではあったよ。でもまぁ、一時期だけだね。この喫茶店を開くちょっと前に再会したんだけど、それからのが長いかな」
「そういえば仕事って喫茶店で働くだけじゃないですよね?っていうか絶対それだけじゃないですよね?」
「そっちはナギの管轄だね。私も手伝いはするけど、、、千葉くんもそっちの要件で来たんだよね。ナギの大声がなくても一目でわかったよ」
「マジすか?」
「うん。慣れてる僕でもちょっと驚いたね」
- だからあの神社の神主も、、、
最初にお祓い受けた神社。
確か、まだそこまで霊障がひどくない時に、高校時代の先輩に会った時にやけに神社に行けって勧められたんだよな。
結局すぐには行かないで、ひどくなってから行った。
けど最初は断られたんだよな。それを無理言って、先輩の名前出して、どうにかやってもらった。でも終わった後に『効果ないと思います』なんて言われたんだよなぁ、、、
それでインチキって思ってしまった。しかも先輩からの『行った?』って確認の連絡ずっと返してねぇままだわ。
- 申し訳ねぇ、、、
ってか先輩も霊能力高かったりする?
一応、元カノは霊感があったはず、、、なんかそういうこと言ってたな、、、?
知らないだけでこういう世界は身近だったのか?
「榊さん、話は変わるんですけど、霊感っていうか、霊能力?でしたっけ?それが強い人って案外いたりします?」
「変えたくはないんだけど、、、まぁ答えるね。実際はそこまではいないかな。私は“家系的”にそうだったってだけだよ」
「はぁ。実は知り合いの紹介である神社に行ったんですけど効果なくて、、、」
「そりゃぁ当たり前でしょうねぇ?」
「は?」
大人しくカフェオレを啜っていたナギが、急に話を割って入ってきた。
「ちゃんと説明しなさい」
「チバ、アンタに憑いてるのは“神”だよ」
「はぁ!?!?」
- 神?
「いやぁ、ねぇ?キモいなぁこれ。鬼海がダリィとか言ってませんでした?」
「あの闇医者もんなこと言ってたな。ってかどういうことか教えろよ!」
「アイツもコレの正体わかってると思うけどなぁ。というかあの腹黒なら前のめりで対処しに行きそうだけど?やけにあっさりぶん投げてきたんよねぇ〜」
「ナギ!自己完結させてないで会話に戻りなさい!」
「榊さんの言う通りちゃんと答えろ!そもそも先生はできないって言ってたぞ!」
「ああ、なるほど。お前も気に入られてるな。其方に憑いてる神よりも厄介だぞ、あのぬらりひょん」
「さっきから聞いてれば、君たちひどくないかい?」
振り返った。
俺たち三人とも全員が、
いるはずがない、いたらおかしい、いなかったはずの、四人目に顔を向けた。
ナギが直前に言ってた“ぬらりひょん”って言葉をまさに体現している。まさに
気づいたら、いた。
コメント
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わあ、第十四話、お疲れ様でした! 主人公が契約後の新しい感覚で創作に没頭していく様子が、本当に生き生きとしていて気持ちよかったです。「今を生きてる」「息が出来てる」という高揚感がひしひしと伝わってきました。そして何より、あの闇医者がぬらりひょんみたいに現れたラストには鳥肌が立ちました…次が気になりすぎます!