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初めて登った日から数えて、一年半が過ぎた。俺は高校三年の春を迎えている。城壁の丈はズボンのベルトの位置とほぼ等しい。理論上は……あくまで理屈上の話に過ぎないけれど……一跨ぎで超えられる。一跨ぎで上り、十歩あるいてから飛び降りればいい。
しかし、現実はそのようにはいかなかった。今日は、超えるのに二時間近くかかった。これは、城壁が一番高かった頃とあまり変わらないタイムだと思う。ついでに言うと、俺が「城壁」というと、ときどきケマルは笑う。城なんてどこにもないじゃないか、というのが彼の主張だった。でも、俺はこの呼び方が気に入っている。壁の向こうを向こうから見れば、囚われ人の住む刑務所かもしれないが、こっちから見れば希望を持つ支配者の城に思えてならない。