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「なるほど、ヴノはその頃のズィナミ、姉弟子に出会っていた訳か」
「そうなのね、アタシ達が弟子入りするよりずっと前ってことよね?」
バストロとフランチェスカの言葉にヴノは答えないがどうやら随行員の一人、ズィナミは二人の知己であるらしい。
年寄り特有の、思い出を美化する余りに己の世界に酔いしれてしまう、現象に入ってしまったと判断したレイブはすかさず突っ込みを入れたのである、こんな事が出来るのも、バストロやジグエラ以上に、判り易いお爺ちゃん猪のヴノと日々一緒に過ごし続けてきたこの数年の経験、それが活きているのである。
「それで? 王様と王様候補の皆からさ、さっき言っていた『シンセイギン』? の事を教えて貰ったって事なんだよね? 竜と魔獣を消滅だったよね、何でそんな危ない代物をハタンガの人達はゴライアスの子供達に持たせたんだろう? 僕やシパイ、まだ無事でいるとすればイシビベノブや一番小さなガトも持っているかもしれないんだよねぇ、何でだろう? 判る、ヴノぉ?」
常日頃、自分と一緒に過ごし、さらに親しげで優しい言葉をかけ続けていた懐っこい声にヴノは即答する。
『おうおう、勿論判るぞい! 彼らが言っておった話によるとな、レイブ、お主達が持っている『シンセイギン』とは、普通の人、獣、モンスターには一切無害な物、らしいのじゃよ…… 貫いても切り裂いても一切の傷を負わせる事は出来ない不思議な素材で出来ている、そう言う物なんだそうじゃて…… 反して、マツリを通して人々や無害な獣の為にその身を危険に曝(さら)している、魔獣や獣奴(じゅうど)、竜に対しては抗い難い致命傷を与える武器となる、それが『シンセイギン』の特性、そう言って居ったのじゃよ! まあ、今しがたお前達も見て居た通り、彼らの言葉に嘘は無かった、そう言う事なんじゃろうのぉ』
一旦言葉を切ったヴノ。
『シンセイギン』の特性の理不尽さを聞かされたフランチェスカは抗議の叫びを上げたが、この期(ご)に及んでもその美しい顔の表情を一切変化させていない、仮面か? そう思ってしまう程の無表情を貫いたままである。
「やっぱりっ! それって人や獣、無辜(むこ)の命に仇なす忌むべき最終兵器じゃないのよ! 判るでしょう? 竜が提供してくれる鱗、それが唯一の原料となる粉薬、石化防止の特効薬ユーカーキラー、守護獣や獣奴の血液からしか造れない人や竜の回復薬である血清、アキザーキラー…… その二つが作れなくなっちゃうわよぉ! だとしたらレイブが持っている『シンセイギン』、そのナイフはこの世に存在してはいけない物なんだわっ! アナタっ、バストロっ! どこか遠い海の底にでも捨ててしまわなければいけないわよっ! 違うゥッ?」
「まあ待てよセスカ、危険なだけの物だとしたら森王達が知っていたりハタンガの人々がレイブ達に持たせたりしないだろう? 危ないと知りつつも捨て去る訳にはいかない、そんな理由が有るんじゃないか? もしそうでなかったとしてもな、レイブにとってはたった一つだけ手元に残った生まれ故郷の思い出の品だ、捨てろなんて俺は言えんし言う気も無い、セスカお前も言うなよ、お前の弟子、シパイだったか、もうこれ以上この子達から何一つとて奪う事は俺が許さない、絶対だ」
「…………え、ええ」
「師匠……」