テラーノベル
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「嘘……嘘でしょ……」
モニター室に閉じ込められた私は、震える手で自分のスマホを握りしめていた。
画面に映っているのは、私の華やかなインスタのタイムラインじゃない。
X(旧Twitter)で爆発的に拡散されている、一本の動画だった。
『【衝撃】カリスマインフルエンサー美玲の本性。スタッフへの暴言と暴力がヤバすぎる』
動画の中で、私は狂ったように化粧品をなぎ倒し、マネージャーの佐藤に靴を投げつけていた。
スローモーションで再生される、私の醜く歪んだ顔。
「全員クビにしてやる!」という、耳を刺すような私の怒鳴り声。
「消して……誰かこれ消してよ!!」
投稿からわずか1時間。
リポスト数は10万を超え、コメント欄は見たこともないような罵詈雑言で埋め尽くされていた。
『性格悪すぎ。二度とツラ見せるな』
『これが「憧れの女性」? 笑わせんなよ』
『過去にいじめやってたって噂もマジっぽいな』
増えていく視聴数と止まらない通知
なのにフォロワー数は、目に見える速さで減っていく。
380万、330万、220万、110万……。
私が人生をかけて積み上げてきた「数字」という名の城が、砂のように崩れていく。
「違うの……これは演技なのよ! 映画の撮影なの!!」
必死に否定のツイートを打ち込もうとするが、指が震えてまともに文字が打てない。
その時、不意にモニター室のスピーカーから、視聴者の「生の声」が流れ始めた。
『あ、この服、○○高校じゃない?』
『美玲の地元民だけど、こいつマジで有名ないじめっ子だったよ』
『被害者の子、屋上から……だったよね』
「やめて、聞きたくない!!」
私は耳を塞いで床に丸まった。
かつて私が、あの子に向けた「嘲笑」が、今度は100万人以上の声となって私に降り注いでいる。
これが、あの子が感じていた絶望?
いいや、違う。私はあの子みたいに弱くない。
私は主役なのよ!
そのとき
閉鎖されたモニター室のドアが、ゆっくりと外から開いた。
逆光の中に立っていたのは、包帯を巻いた佐藤だった。
「……美玲さん。事務所から連絡です。スポンサー全社が降板を決めました。違約金、億単位になりますよ」
佐藤の声には、もう一欠片の敬意も、同情もなかった。
「佐藤……ねえ、助けて。動画を消させて。あれは演出だったって言って!」
すがりつく私の手を、彼は冷たく振り払った。
「無理ですよ。それに……あなた、さっき『遊び』だって言いましたよね? あの遺書を見て。……ネット民も、あなたの破滅を『遊び』として楽しんでるみたいですよ」
佐藤が差し出したスマホには、現在地のトレンド1位に不吉な言葉が踊っていた。
#美玲の公開処刑試写会
「さあ、行きましょうか。最後の舞台、完成披露試写会へ。あなたの全てを、全世界に生配信する準備が整いました」
暗い廊下の向こうから
何百人もの「観客」の拍手のような音が、幻聴のように聞こえてきた。
#インフルエンサー
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