はっ……__私は目を覚ました。少し眠っていた
明珠は何処に?此処は__
「目を覚ましたのですか、瑤楽様 」
「此処は_」
「屋敷です。怪我をしていると聞き」
「っ……誰から」
「 “ 旅人 ” と仰っていました。名は濤と。お知り合いですか」
明珠…私を知らぬ振りをするのか。わかった、あなた様の思い通りに動こうとしよう…あなたが死なないで私の傍にいてくれる道は、……ここであっているのか
「……いいや、」
「あの…その旅人に…御礼をしたい、」
もう会えないか、そう思った時だった。外がやけにどたばたとしていた
「離せ!私は帰る!もう用はない!_」
「明……っ、」
明珠の声がした。明珠!と呼び掛けそうになったがすぐに口を閉じた。美明珠は北での評判は悪かった。北ではあまり名を出せない
「ぁ…瑤楽…様」
あははと此方を見ては首の後ろを掻いていた。正直嬉しかった。明珠と会えなくなるのはとても辛かった
「彼は瑤楽様をご存知なのです?」
「柱に名が書いてある…そこで知っただけさ」
昔遊び半分で名を柱に書いていた。よく気付くもんだ。きっと
” 今 “ 見たのではなく ” 昔 “ に見たのだろう
「失礼_美濤と申します。よきお見知りおきを_」
演技がとても上手かった。先に濤と出会ったものには美明珠という名を聞いているはずだ。濤で通したいのなら_と思い私は聞いた者にそれは誤解だと伝えた
「上手くやってくれ、美…濤……」
名字を変えなかったのは、面影を残してくれているのだろうか…少し嬉しくなった
口角が上がりそうになるのを必死に耐えた
「誰かこれを止めてくれ!、」
畏まっていた濤は一瞬に解け、すぐに暴れた。何に怯えている?私は濤の足元へと目を向けた。濤の足には何かがへばり付いていた
「人形の御札…… 」
「なんなんだよこれ、さっきからずっとくっついてくる、!」
「誰かの強い欲で動き出す御札ですね_」
「はぁ、?強い欲……?」
「独占欲です。 」
ドキッとした。私の意思では…ないだろうな…そっと御札へと手を差し述べた。私が手を差し伸べると御札は普通の形へと戻りペラっと剥がれ堕ちた
「……ぁ…瑤楽様、」
私の意思だった。
この御札は張った人が解かないと、元の形には戻らないと言うものだ
「手を差し伸べただけで取ったのですか…流石瑤楽様!凄いです!」
パチパチと拍手をされると死にたくなるほど恥ずかしい。
「ぁ…濤…何故此処に……」
「この御札が連れてきたんだ、俺…ぁ私は帰ろうとしたけど離してくれなくて」
「ごめん」と小さく呟いた。無自覚で御札を人の形にし濤の足へと張り付けた挙げ句、私の欲で濤を此処まで連れてきてしまった。何処まで私は欲深い奴なんだ、と私は確信した