テラーノベル
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時は、現在に戻る。
山奥の夕暮れ。和洋折衷の古い建物の前で、加賀美と姫は立ち尽くしていた。目の前にいるのは、先刻「たたりニャー!」と叫んだネコミミの美少女だ。
頭には、どう見ても後付けではない猫の耳がぴんと立っている。
薄い昔風の着流しを纏い、その生地は透けていて、若い瑞々しい胸の膨らみや、腰から下がるしっぽの付け根がほのかに見える。
しっぽは彼女のお尻から本当に生えているようだった。敵意というより、警戒と少しの困惑が混ざった金色の瞳が、二人を見つめている。
猫と人間のマイクロマシンゲノムが混ざりあった人達が住んでいるらしい。
そう言った人はこの未来世界ではたまにいるのだ。
「ここは猫神様の土地ニャ。余所者が来ると、やばいニャー」
小さな声なのに、言葉の端に確信がある。
姫は両手を前に出して、なるべく穏やかに微笑んだ。
「道に迷ってしまったのでごぜぇやす。一晩でいいので、泊めてくれやせんか?」
そのとき、建物の奥から別の足音がした。
現れたのは、もう一人のネコミミ美少女だった。
先ほどより少し大人びて、豊満な身体を薄い着物で包んでいる。
胸元も腰のラインも、生地越しに柔らかく contoured されている。
彼女は二人の様子を一瞥すると、耳をひょこっと動かして言った。
「道に迷ってしまったのですか? ここの主に聞いてみます。とりあえず、中にどうぞニャ」
加賀美は一瞬だけ姫を見たあと、短く頷いた。
警戒を解いたわけではない。
ただ、この時間に山を下りるより、屋根のある場所で情報を得た方がいいと判断したのだ。二人は大人のネコミミに案内され、建物の中へ足を踏み入れる。
土間は想像以上に広かった。天井が高く、古い梁が暗がりの中に沈んでいる。
そこから続く廊下は異様なほど長く、左右の障子や壁には古い絵や飾りが並ぶ。
豪華なのだが、照明は少なく、空気が少しだけ重い。足音が木の床に吸い込まれていくようで、不気味さが背筋を伝った。
「……広いな」
加賀美が低く呟く。姫は加賀美のジャケットの裾を、そっと指で摘まんでいた。
突き当たりの部屋に通される。
そこは一転して豪勢な空間で、何重にも重ねられた座布団の上に、背の小さなネコミミ美少女が座っていた。見た目は幼い。
しかし、そのしっぽは確かに二股に割れ、先端がゆっくりと揺れている。
猫又——そう呼ばれる存在の、最も古いものだという雰囲気が、静かに部屋を満たしていた。
金色の瞳が、二人を値踏みするように細められる。
「お主たち、何か用か。余所者はお呼びでない」
姫が一歩前に出る。
「私達は道に迷ってしまったのでごぜぇやす。一晩、泊めていただけないでしょうか」
加賀美も警察手帳を開き、身分を示した。
「警視庁の者です。道に迷い、ナビも通じなくなった。迷惑はかけません」
猫又の少女は、小さく鼻を鳴らした。しっぽの分岐した先が、座布団をトントンと叩く。
「警察と探偵か。……ふうむ」
しばらく沈黙が落ちる。やがて彼女は、ゆっくりと口を開いた。
「この家には、これからタタリが来るニャ。それを防いで、止めてくれるなら——泊めてあげるニャ」
部屋の空気が、また少し重くなる。姫はしかし、目を輝かせて腕を捲った。
「ガッテン承知之助! 任せてくだせぇ!」
見えを切るように胸を張る姫の横で、加賀美が太陽穴を押さえた。
(大丈夫か、こいつ……)
心配は尽きない。だが、すでに日は沈みかけ、外の山道は闇に沈もうとしている。猫又の少女は満足そうに、あるいは面白そうに、二股のしっぽを揺らした。
「では、決まりニャ。今夜のタタリ——防いでみなさい」
長い廊下が、どこかで軋む音を立てた。
猫神家の一族が守るこの土地に、これから何が来るのか。
加賀美はジャケットの内側に手を添え、姫はやる気だけを全開にしていた。
続く。
猫とろ
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ねらち
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コメント
3件
66話、読ませていただきました! ネコミミ美少女たちの登場にドキドキしっぱなしでした。特に猫又の少女が「タタリを防いでみなさい」と言うシーン、しっぽの二股や金色の瞳の描写が凄く雰囲気あって、ゾクゾクしました。姫の「ガッテン承知之助!」で一気に空気が和む感じ、好きです(笑)。加賀美の心配顔もリアルで、また二人のやりとりが見たくて仕方ないです。続き、気になりますね!