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「おまえと会った時も、そうじゃなかったのか?」
「ああ……うん、えーっと……」
見れば見るほど、テレビの中の男性と自分が会った彼とは、似て非なる人物のような気さえして、困惑する。
だけど、それを話したところで、父にはたぶん信じてはもらえない気がした。
「おまえも、考え直してみたらどうだ? あんないい男は、そうはいないと思うが」
「うん……まぁ、また機会があれば」
曖昧に返事をして、会話を切り上げた。
おかしいな……。どっちが本当なんだろう?
だけど、どちらが本当だとしても、こんな風に社交的にも振る舞えるのなら、先行きが心配だなんて勝手に思ったりして、申し訳なかったかも……。
画面からは、「KOOGAの二代目は、まだお若いながら、敏腕なようですね」と、賞賛をするアナウンサーの声が聴こえてきて、私はやや納得のいかないままテレビを消した。
一人ぼそぼそとお弁当を食べながら、(なぜ、あまりにも違いすぎていて……?)と、考え込んだ。
たった今見たメガネの似合うクール系インテリで人当たりの良さそうな彼の姿と、ほんの数日前に会ったばかりの愛想がなくとっつきにくいような彼の印象が、全く一致しなかった。
もしかして、本当に別人で、双子だったりとか……。
でも、そんなこともないかと思う。クーガの御曹司が双子だなんて話は、私の知る限りでは、聞いたこともなかった。
だけど、だったらどうして、まるで別の人みたいで……。
どれだけ考えても見当もつかなかったけれど、たぶんもう会うこともないんだろうから構わないじゃないと、結局は頭の中で結論付けた。
何よりそう結論を出した方が、もやもやと続いているなんとなく憂うつな気持ちからも解放されるようで、私は彼のことは、もうきっぱりと忘れてしまうことにした──。