テラーノベル
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登校中の空は真っ青で朝から日差しが強く照らされ肌が暑く感じる。梅雨が明けて本格的に夏本番の暑さがやってきた。学生たちが通学路を歩く中に一際目立つ赤髪をした彼が紛れているのを見つけて僕は躊躇いなく声をかけた。
「ばぁうくん、おはよ」
「………お。おはよ」
「…うわ、すごく眠たそうだね」
「ああ…昨日、遅くまでバイト入ってたから…まだ寝足りねぇ。」
眠たそうな目を擦りながら欠伸をしている彼は少しお疲れモードの様子だった。でも、そんな状態でもサボらずに学校へ通っている姿は以前からするとかなり成長だ、とてるとは感心していた。
新学期の1日目に小学生以来の再会を果たしていたはずだったが、お互いに認識し合っていたがなかなか話しかけられずにすれ違いをしてしまっていた。でも、例のカツアゲ事件の日にようやく和解が出来たみたいで普通に会話するようになった。ばぁうくんとまた話が出来るようになって嬉しくて学校へ行くことが以前よりもっと楽しくなった。
ばぁうくんのサボり癖について僕が五月蝿く詰めると授業中寝てしまう事があっても途中で離席することは無くなっていた。
「毎日学校に来てえらいえらい♪」
「…てるとが五月蝿いからな」
「また留年したらどうするの!寧ろ僕に感謝してよね」
「はいはい。」
感謝どころか適当にあしらわれてしまう。…まあ態度はともかくこうやって一緒に学校へと通えれている事実だけでも良い傾向だよね。
一緒に教室へ入ろうとした手前に明るい声に呼び止められる。
「てるちゃん、ばぁうくんおはよー!」
「あ、まひちゃんおはよー!」
「おう。」
隣のクラスで親友のまひとくん。最近では僕がばぁうくんのことを紹介したことがきっかけでばぁうくんとも仲良くなった。ばぁうくん自身他人との関わりを避けてたみたいだけど、現在では少しずつ受け入れている部分もあるんだと思う。前にばぁうくんから家族について少し話を聞いていた。遊んでいた同時は僕は知らされていなかったし、子どもの頃からずっと1人で悩んで抱え込んでいたことを想像すると心が痛む。だから、友だちとして今は少しでも心の支えになりたいなあって思う。
「ねぇねぇ!もうすぐ夏休みだから何処か遊びに行きたいよね!もちろん夏祭りは外せないよね!…あと海でバーベキューとか!」
「まひとは食べたいだけじゃねぇの?」
目を輝かせながら話しているまひちゃんの頭の中が食べ物で膨らんでいるに違いない。
でも、そっか、もうすぐ夏休みか…。
毎日ばぁうくんと顔を合わせていたが、長い夏休みの間はそれが叶わなくなることを悟り心の何処がで寂しさを感じた。
「夏祭りはまだ先だから、まずはバーベキューかな!」
「俺夏休みもバイト。」
「そんな毎日ってわけでもないでしょ!ね!てるちゃんも行きたいよね!」
「うん、楽しそう」
「何でそんな盛り上がってんの?」
僕たちの背後から声をかけられて振り返ると高身長の金髪男子が首を傾げてこちらへ近づいてきた。
「よ!ばぁう」
「…なんでそまが居るんだよ」
「居たら悪い!?一応ここの生徒ですけど!?」
「そうま先輩、おはようございます」
ばぁうくんと一個前に同じクラスだったそうま先輩だった。ルックスも良く誰に対しても優しい。何だかんだでばぁうくんのことを気にかけていて面倒見の良い性格も持っている。
「みんなで海でバーベキューしたいなって話してたんですよ」
「おおー!夏らしくていいじゃん!」
「ですよね!そうま先輩も一緒にどうです?」
「え!いいの?!行く!」
「…まひと、何でそうまも誘ってるんだよ」
「楽しいイベントは人数居た方が絶対盛り上がるでしょ!」
「……」
「ばぁうとてるとも参加するんだろ?」
「ばぁうくんは夏休みもバイトあるみたいで…」
「ふーん……じゃあ、てるとは行こうな!」
そうまがにやりと笑っててるとの手を両手で包みこみにこにこ笑顔を向ける。てるともそれに対して「行きます」の笑顔で返す。それを見ていたばぁうが少し不機嫌そうな表情でそうまの頭をしばいた。
「痛ってー!!」
「…俺も行くよ」
「よし!じゃあ日時諸々は後日ね!」
「おっけー!」
予鈴のチャイムの合図で各自教室へ戻って行った。てるとが席に着くと隣で盛大な溜息を漏らしている。
「…はぁ、あの2人はしゃぎすぎだろ」
「ふふ、でも海楽しみだね」
「あいつら…俺たち以外にも呼ぶぞ絶対」
「あー…確かに、クラスの子に話したら広まりそうだよね、この話」
「…てるとは行きたいだろ?」
「んー…まあ、そうだね。」
ばぁうくんが行くなら。と言葉は出さずに心の中に閉まった。あくまで僕たちは友だち同士。これ以上のことは望まない。
「…つか、てると泳げるの?」
「ん、たぶん」
「たぶんかよ、笑」
「そう言うばぁうくんは?」
「………忘れた。」
「ちょっと!笑 そっちの方がやばいでしょ」
僕が心の何処かでまだ君のことに恋心を抱いていても、気付かない振りを続けていく。この先卒業してお互い大人になって別々の道を歩むようになっても。いつか君が最愛の人と一緒になる日が来ても。僕たちは友だち同士の付き合いをする。だからいま、他愛のない会話を隣で出来るこの時間、君と一番近くで居られるこの学校生活を大切にしていきたい。
「その前に、赤点回避しなくちゃだね」
「………夏休みに補習授業はごめんだな」
「経験あるの?」
「…去年の夏」
「…だめだよ、ばぁうくん。ちゃんと勉強してね」
「……へーい。」
続く。
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