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世界で一番


ーATTENTIONー

・男の友情って素晴らしいよね。っていうお話。

・腐ではない。そう。

・2人とも名前ついてないです。

・今のところ一話完結です。好評だったら続くかも。


◇◇◇


大嫌いなアイツが死んだ。


事は突然に起こった。



◆◆◆



僕はアイツが大嫌いだった。一方的にだ。勉強は完璧で見た目もまぁ…悪くなかったし皆から慕われてた。非の打ち所のないようなやつだった。

だから。僕は完璧なアイツが気持ち悪くて人間じゃないように思えて嫌だった。


◆◆◆


ある日の事だった─。僕はアイツと仲良くなって弱みを握ってやろうと思いついた。だから大嫌いなアイツに近づいたんだ。


「…なんだ君かい、どうしたんだい?」

アイツの柔らかい声がした。世界で一番嫌いなね。

「、、いやぁ、別に?そう思えばあんまり話したことがなかったな。なんて思ったからさ、」

「…そうかい、、」


その後は少し沈黙があった。僕から話を振ればよかったんだけどね。本をパラリと捲る音しか聞こえなかった


「…その本って面白いの?」

僕は沈黙に耐えきれず言葉を発した。

「…そう、だね、とても面白いよ。でも…君にはまだ少し早いかもしれない。興味があるなら今度貸すよ、?」

僕はやっぱりアイツが嫌いだ。

「いや、気になっただけだから遠慮しとこうかな…ごめん」

「そう、大丈夫だよ。」


その時のアイツはやけに寂しそうな顔をしてたな。



◆◆◆


「…。」

僕はいつものあの場所へと向かった。アイツの弱みを探るために。

「………」

来ない。来ない。いくら待っても。どうして僕を待たせるんだ??


……その週は、アイツは一度も“ここに来なかった”


◆◆◆


…今日も居ないか。と期待せずにあの場所へと向かう。でもそこにアイツは居た。少し心が躍った気がした。


「…、ごめんね、先週は。」

アイツは僕に真っ先に謝ってきた。

「まぁ、うん。別に良いよ、」

言い訳は聞きたくなかったから許した。

「……あの、さ…僕、言わな…ごめん、何でもない」

「…なんだよ、遠慮せずに言ってよ、僕たち…友達、だろ?」

正直“友達”という自分が発した言葉に疑問を抱く。まぁ…仕方ないか。とあきらめた。


「…うん、そう…だね。」

アイツは今にも消えそうな声だった。

「…僕、もうすぐ死んじゃうんだ。ちょっと重めの病気が見つかっちゃって、」

「は?」

心の底から、腹から声が出た。

「え、え?死ぬ…?嘘だろ??なぁ…?」

嫌いなアイツのことでもとても可哀想に思った。もっと一緒に居たいと思った。


「…嘘じゃないんだ。僕は…もっと君と話をしたかった。でも、もう…駄目なんだ。僕はもうじき死ぬ…だから、さ。もう、終わりにしよう、?僕たちが会うのは…ね。」

アイツの目には涙が光っていた。泣いてるじゃん。本当は嫌なんじゃん。


「ッ馬鹿!」

僕は叫んだ。アイツは驚いた顔をしていた。


「僕ももっと話したい!だからさ、最期まで…僕の側で話をしよう、?」

僕の目にも…水が光った。決して涙ではない。決して───。


◆◆◆


「…」

今は病院の一角。大嫌いなアイツと一緒に。

「……僕、もうすぐ…死ぬんだ…、」

アイツはポツリと言った。いつもはもっと元気いっぱいなのに、なんでそんな…でも、運命には逆らえない。

「…僕、君と居れてよかったよ。楽しかった。僕が死んでも。忘れないでいてくれる?」

アイツは──まるでもう死ぬみたいに…震えていた。目尻には涙がたまっていた。

「忘れるわけない…」

でも…それと同じくらい僕も泣きそうだった。頑張って声を捻り出した。


「、今までありがとう。大好きだよ。」


ピーーー…と心電図が音を立てて止まった。

僕は心が済むまで泣いた。

あぁ…世界で一番嫌いで世界で一番憎くて─世界で一番大好きな…親友が、今この世のなかから姿を消した。


…あぁ、あれだけ嫌いだったはずなのに──

胸の中が悲しみで埋め尽くされている。…夢でも良いから、出てきてくれよ。お願いだから──

「…僕も、大好きだよ…」

最後の一声を頑張って捻り出した。

アイツは…まだ頬に涙をのっけたままだ。せめて、安らかに──…天国で元気にやってるといいな。


僕は…もう冷たくなったアイツの額に唇を落とした。

看護婦が来るまでは。僕たちだけの残り少ない時間を──。

「…先に逝くとか…僕が向こうに逝ったら真っ先に愚痴ってやるよ。」

…じゃあな。世界で一番嫌いで大好きなお前。


END

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