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「どうやって、許し得てここ来たんだよ」
「どうだっていいじゃん。それ必要?」
「いーや。俺が個人的に聞きたかっただけ。けど、前より顔スッキリしてんな」
「うん、まあね」
「ふーん、それも教えてくれねえのか。ケチだな」
「ケチって……」
星流祭前日、下見を兼ねて帝都に来ていたが、やはりと言っていい、あまりにも人が多すぎて、参ってしまいそうだった。きた瞬間から、うえっ、と吐きそうになってしまい、アルベドにめちゃくちゃ心配されたのは本当に申し訳ない。それでも、私が人混みが苦手だったことを、彼が覚えていてくれたのはありがたくて、本当に彼が隣にいてくれる安心感は大きかった。
アルベドも、私とフィーバス卿の関係を心配していたようで、どうやって星流祭に来る言い訳をするのか気になっていたらしい。そんな、言い訳も何も、私だったら、それっぽい理由をつけて多分行かせてもらえただろうし、アルベドが懸念するほどのことは起きなかったと思う。それでも、最近外出が多いこともあって、こそこそ何かをやっているんじゃ……てフィーバス卿に思われても仕方がないなとは思っていた。それでも、許容してくれるのは、私が彼の娘だから……か。
「……」
「どうしたよ。次は暗い顔になってよぉ……」
「ううん。いいことがあった分、なんだか、悪いことしている気分で、ちょとって思ったの。今回の星流祭……辺境伯領地から出てきて、いろいろチャンスだと思っているから。絶対に、何か足跡残さなきゃって思ってる……って感じ?」
「よくわかんねえな。まあ、明日だしな、本番は」
「なんか、ここまで来たって感じ、がする。アンタがいてくれたからだよ。ここまで、頑張ってこれたのは」
「何だよ。ここで終わりみたいな言い方」
「あ、いや、そう言うんじゃなくて、単純に、アンタのおかげでって、小出しに感謝を伝えた方がいいかなって思って」
自分で言っていて、なんだか照れくさくなったので、ここらへんでやめた。
アルベドは、にま~とした顔で、見てきたが、気のせいだろうと思うことにして、首を横に振る。すると、ぽんと頭に重みがのっかり、次の瞬間にはくしゃくしゃと頭を撫でられてしまった。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと!?せっかくきれいにしてもらったのに!?」
「今でもきれいだぞー別に、見なり気づかう必要ねえじゃねえかよ」
「あります!今は、辺境伯令嬢なんです!お父様の顔に泥ぬれません!」
「それくらいで、塗ることにはならねえだろ……つか、エトワールだったころは、もっとさばさばというかしてたじゃねえか。女ぶっても意味ないからな」
「女ぶっているつもりはないけど。てか、令嬢っぽくないってアンタ前言ったからでしょ!?」
「俺のせいにするのかよ。おい、痛い、痛いって!」
ぽかぽかと思わず殴ってしまい、これも、令嬢っぽくないと言われる理由の一つだろう。今日は、お忍びのため、髪の色を変え、変装魔法を施してきているが、アルベドは全く隠す気もなく、その紅蓮の髪をなびかせている。
(アンタみたいな、目立つ人間ととなり歩きたくないんですけど!?)
こんな、美形で、赤色で、目立たないわけがなかった。闇魔法の人間は、歓迎されない祭りだと前にいったくせに、自ら目立ちに行くその心はどういうことだと文句を言いたくなる。彼はいったい何なんだと。目立ちたくないという気持ちは私と同じだろう。それでも、どう考えても目立っているのだから、もう少し、抑えてほしいところではあるが。
(いや、私が気付いていないだけで、気づかれないようにする魔法をかけてるのかもしれないけれど!)
まだ、魔力探知という物が不十分であるからして、彼は、魔法で自身の魔力を隠すことが出来ている。気づく人がいるとして、それは、ラヴァインとか、ブライトとか、あそこら辺のレベルの魔導士になるだろう。
私も、レベルを上げれば気づけないこともないのだろうが……
「うーん」
「何唸ってんだよ」
「いや。なんか魔法かけてる?」
「申し訳ない程度には、な。つっても、目立ちにくくする魔法ってのは、ぶつかった時点で、相手が認識しちまうから、あまり意味ねえっつうか、気休め程度っつうか」
「ふーん。魔法しているんだ。うっすらだから、気づかないってこと?」
「まあ、平たく言うとそういうことだな」
「それ自身が、アルベドのユニーク魔法かと思った。ただの性質?」
「性質だな。元から、人に魔力探知されにくい、魔力を持ってるのは性質」
と、アルベドはめんどくさそうに答えた。それって、いいかえれば、めちゃくちゃメリットなのに、本人からするとそこまでではないらしい。
となると、アルベドのユニーク魔法と相性が単に悪いということなのかもしれない。勝手に、考察してしまって悪いな、と思いながらも、未だ教えてもらえない、アルベドの切り札――ユニーク魔法は、それはもう、たいそういいものなのではないかと思ってしまうのだ。
「だから、お前視線!怖えんだけど」
「ふふふふ……いつか、アルベドのユニーク魔法が分かる日が来るのかと思うと待ち遠しくて」
「あんな魔法、早々使いたいもんではねえけどな」
「やっぱり、代償系?」
「答えられるとしたら、そうだな、代償が必要だな」
アルベドは珍しく私の、ユニーク魔法に対する質問に答えると、当ててみろと言わんばかりの挑発顔で私を見てきた。あてられるものなら当てたいけれど、それが、周りに聞かれたら、切り札の意味がなくなるだろうな、とこれ以上詮索することはやめた。
ラヴァインは知っているみたいだったし、そもそも、ラヴァインのユニーク魔法も分からない。グランツのように、バレていても問題なく、むしろ知られていることで抑止力になるという物は、必ず存在する。
(ラヴァインは、きっと、アルベドの攻撃食らったことがあるってことだよね……それはご愁傷さまだと思うけれど)
考えようによると、いや、前の世界、災厄が起こった時、私と離れて行動するとき、アルベドと、ラヴァインは衝突した。その時に、アルベドは何かしらのユニーク魔法を使ったわけだ。それほどまでに、ラヴァインも災厄でおかしくなっていたから、とめる方法としてそれが最適解だと。
「まあ、凄いユニーク魔法ってことで、期待してる」
「何で期待するんだよ」
「だって切り札じゃん。それ絶対に」
「切り札か……だから、さっきも言ったが、使いたくねえよ。あんなもんは。使わなくていいように、動いてくれよ?ステラも」
「ラヴァインを完封できるほどのユニーク魔法……ラヴィのユニーク魔法も分かる?」
「勝手に教えるわけにはいかねえよ。弟の秘密を」
「そういうときだけ、弟の方持つの?あ、てか、ラヴィは結局どうしたのよ」
「……さあ」
「さあって」
アルベドは、しらね、と視線をそらした。
あれだけ行きたいと言っていたのに、結局お留守番か、それとも、ヘウンデウン教の動きを再確認しに行ったのか。どっちかは分からないが、いないのは少し寂しい気もした。
(ただ、まあ、一緒にいたら変に思われちゃうかもだし)
それもあるから、簡単に一緒に行こうとはいってあげられない。
「まあ、来たくなったら、そのうち合流するだろ」
「……」
「また、その目。はあ、俺は本物だよ。ラヴィのやつが変装してるんじゃねえ」
「じゃあ、大丈夫!」
「やっぱ、そこ気にしてたのかよ……」
「疑うことの必要性を教えてくれたのはアルベドでーす」
「俺のせいかよ……はあ。まあ、とりあえずは、星栞書きに行こうぜ。ま、これも、前の世界通りにな」
と、アルベドは私に手を差し出すと、二ッと笑って、その紅蓮の髪をなびかせた。