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浩二はガラガラとスーツケースを引きずって三宮の夜の町を歩いていた、ネオンの光が濡れたアスファルトに反射し、まるでクリスマスツリーのように赤く揺らめいている・・・そういえばもうすぐクリスマスか・・・だからこんなにネオンが派手なんだな、そう思った矢先、歩くたびに腹の傷がズキズキと疼き、熱い鉄の棒で刺されるような痛みが走った。




「くそっ!なんでこんな時にタクシーが掴まらないんだ」



腹の傷がズキズキ痛む、やはり鎮痛剤を飲んでくればよかった、早く久しぶりの自分のマンションへ帰って横になりたい・・・まずは何も考えずに傷と体力を回復しなければ



そこでピタリと脚を止めた、早く回復して何になるというんだ・・・今の自分は兵庫県知事になる夢も、弁護士になる夢も、粉々に砕け散った・・・



鈴子に詫びを入れて彼女と仲直りすれば弁護士として再スタート出来るだろう、しかしそれもまた彼女の掌の中で転がされるだけだ



あんな女性は見たことがない!そして浩二は今の彼女は恐ろしくもあった、目的のためには手段を選ばない、彼女はそうやってのし上がって来たのだ、でないと西日本一の女性起業家で何十年も大企業の業績を上げ続けることは出来ないだろう


色々考えながらガラガラスーツケースを引きずって歩道を歩いていると、一台の銀色に輝くメルセデスベンツが浩二の横づけでゆっくり走っていた



「あれぇ~?やっぱり姫野さん?」



ベンツのパワーウィンドウが降りて、運転席から驚いている増田の顔が見えた



「増田さん・・・」




バンッ、「どうしたんですか?こんな大きな荷物を引きずって!旅行ですか?」



増田がベンツから降りて笑顔で浩二の所へやってきた



「いえ・・・そういうわけではないんですが・・・」


「うわっ!あなためちゃくちゃ顔色わるいですよ?傷が治ってないんじゃありません?」



浩二がここで我慢できずにうずくまった、膝がガクンと折れてアスファルトに手をつく、冷たい感触が掌に染み、吐き気がこみ上げた


慌てて増田がしゃがみ込み、浩二の肩を支えた


「どうしました?姫野さん!こりゃ大変だ!すっ・・鈴子に連絡っっ」



その瞬間、浩二が増田の腕を力いっぱい掴んだ



「ダメです・・・お願いですから、どうか彼女にだけは連絡しないでください・・・」


「どうしてですか!鈴子はきっと心配しますよ!」



「今・・・訳あって彼女の所を出て来たんです・・・僕は彼女と別れました」





どひゃーッとおどろく増田





「えええ?マジッすか?何でまた!どうして!」


「く・・・詳しい事は後で話します・・・どうか・・・彼女に連絡だけはしないでください・・・」



まっ青な浩二は今にも気を失いそうだ、視界が歪み、街灯の光が滲んでいく、渋々増田がコクンと頷いた




「わっ!わかりました・・・けどっ・・・ああっ!とにかく私の車へ!」





増田はあわてて助手席を開け、浩二をベンツに乗せていると、パパ―ッと後ろの車に邪魔だとクラクションを鳴らされた




「わーかったよ!そんなせかすなよ!」




増田は慌ててスーツケースをトランクへ入れて車を発進した、エンジンの低いうなりが浩二の鼓動と重なった




「姫野さん?どこへ行きます?鈴子の所が嫌なら俺の所でもいきますか?それとも病院?」




暫く運転していた増田が浩二を見た




「ありゃー!眠ってるな・・・こりゃ・・・本当に鈴子に連絡しなくていいのかなぁ~?」




シートに凭れた浩二の顔は、まるで死人のように青白かった




額に浮かぶ汗が、街灯の光を受けて妖しく光る、増田はハンドルを握りしめ、どうしたものかとアクセルを踏み込んだ


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