テラーノベル
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ある日の夕暮れ時、父に呼び出されたかと思うと馬車に乗り出かけることとなった。
「父上、どこに向かわれるのですか?」
「…..」
父は何も言わずただ前を向いて馬車を進めていた。
(どこに行くのだろうか…)
そんなことを考えているとついつい睡魔に襲われ、気づけば眠りに落ちていた。
ガタン
「ん…、ここは?」
馬車が止まる振動で目を覚ました僕は目的地に着いたと思い、辺りを見渡が眼前 に広がっていたのは、木々の生い茂る真っ暗な森だった。
「出ろ」
父は冷たく言い放ち、その瞳は僕を見ていなかった。
「ここでいったい何をするのですか?」
僕が問いかけても返事はなかった。ただ、その後に続いた言葉がまるで雷に打たれたような衝撃を与えた。
「…お前はもう必要ない。魔獣に襲われて死んだことにする。」
その言葉が耳に届いた瞬間、僕は言葉を失い心臓が止まるかと思った。
「……ぇ?」
父の目には、ただ冷徹な無情さが漂うだけだった。
「……ち、父上」
声が震えた。
「僕は……何か、間違えましたか?」
するとーー
「…ぐふっ!」
腹部に鈍い痛みが走り吹き飛ばされていた。
「ぐっ、げほげほ!」
何が起きたのか分からず、辺りを見渡す。
(な、何が起きた?…ん?この水は…)
その原因は、父が放った水魔法だったのだ。そして、剣と魔除けの粉を無造作に投げ捨て、無言で去っていった。
(なんで……!)
咳き込みながら僕はひとり、暗闇の中に横たわっていた。
ーー突如、背筋を凍るような気配が走る。僕は急いで魔除けの粉をポケットに入れ、剣を構える。
「……っ!」
息を呑んだ瞬間、森の闇から滑るように現れる影。
グルルルゥゥ
「狼……!」
漆黒の毛並みをなびかせ1匹の狼が低く唸りながら、じりじりと距離を詰めてくる。よく見ると後方に2匹の狼が涎を垂らしながらの眼光を光らせている。
(飛びかかってこない、なんでだ?….!そうか、魔除けの粉の効果か!)
手にした魔除けの粉が微かに光を放ち、狼たちの動きを鈍らせている。
「……今のうちに逃げなきゃ!」
僕は剣を握りしめ、全力で駆け出した。
しかし、獲物を逃がすまいと疾風のごとく狼達が追いかけてくる。
(クソッ! 森の外まで保ってくれ──!)
だが、ここに来るまでの道も方角すらもわからない状態では分が悪すぎる。そんな中、魔法の粉の効果が徐々に薄れ始めていた。
グルルルルゥ
狼たちの唸り声が鋭さを増す。次の瞬間、素早く跳躍した一匹が襲いかかる。
「くっ──!」
反射的に剣を振るうが、狼の動きは予想以上に速い。剣先が空を裂くよりも速く、鋭い爪が肩を掠め、熱い痛みが走った。
「いっ……!」
だが、ここで怯むわけにはいかない。震える指に力を込め、僕は振り向きざまに剣を振り抜く。
パシュッーー!
手応えを感じるものの狼の毛皮が硬すぎてかすり傷程度しか与えられていない。狼は体をうねりながらも、すぐに体勢を立て直し、低く身を構えた。
(マズいっ…!このままじゃ……!)
焦りが冷たい汗となって背を流れる。 その時だったーー
狼たちが突然、ピタリと動きを止めた。
「……?」
それまでの獰猛さが嘘のように、狼たちは耳を伏せ、わずかに後退する。
ーーギチギチギチギチィ ……!
大地が震えた。
(何か巨大なものが、この森を踏みしめているような…?)
すると、前方の方で微かに暗闇を引き裂くような巨大な影が見えた。
ドンッ!!
「くっ….い、いったい何が……?」
木々を薙ぎ倒し漆黒の森から姿を現したのは、3メートルを超える巨体な熊。
巨大な鉤爪を持ち、返り血を浴びたような赤黒い体毛、全身に戦いの傷を刻んだ、獰猛な強者。
その圧倒的な威圧感に、先程まで捕食者だった狼達すらも恐れをなして逃げていく。
「……っ!」
鋭い眼光が僕を捉えた瞬間、雄叫びをあげながら地を揺るがす勢いで踏み込み、それと同時に巨大な爪を振り下ろす。
「くっ……!」
アレンは咄嗟に剣を振り上げ、全力で防ぐがーーー
ガキィンッ!!
「なっ……!?」
剣はあっけなく砕け散り、残ったのは無力な己の両腕。そして、振り下ろされる死の一撃。
「……ぐっ!!」
凄まじい衝撃と共に僕の体は、木々をへし折りながら地面を数回転がり岩に激突し止まった。
「……がはっ!」
全身を駆け巡る激痛。右肩から左脇にかけて大きな傷と滝のように流れる血。呼吸が詰まり、視界が霞む。
(こんな所で…終わるわけ、には……)
だが、捕食者はトドメを刺すために近づいてくる。
そして、巨大な爪が視界を覆う瞬間ーー
僕の意識はそこで途絶えた。
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