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八雲瑠月
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『おっ!? ラノケン側の準備ができたようだな』
口姫のマスクをしたような声と共に多くの歓声がVRゴーグルのヘッドフォンから聞こえてくる。
転送された場所は同じオペラ劇場化した体育館だが、埋め尽くされた百鬼夜行のような人外のアバター達と観客席とその前にある解説席と記載された長机には口姫と教子先生、教師らしき眼鏡の女性がいた。
口姫のマスクはそのままだが、英語のマウス(口)とマウス(鼠)を連想してアバターを作ったのか、頭には鼠耳と、鼠の尻尾があった。教子先生は(教)は(京)の京都に変換したのか、花魁風の着物姿になっている。もう一人の教師は植物系のモンスターであるアルラウネ娘か何かをイメージしているのか、髪は大きな花が咲いており、葉っぱと蔦で編み込まれたような衣服を着ている。
現れた舞台の書也にスポットライトが当たる。当然のように注目が集まり、観客席の座っている人数に圧倒され、バーチャルな世界である事を忘れ、書也の足がガクガクと震えた。
「書也さん、一人が本番ボタンを押してしまうと、ラノケンメンバー全員が転送されてしまいますのよ」
ラノケンメンバーと共に転送されたエロスが溜息をするように言う。
「す、すいません!?」
書也は勢いよくエロスに頭を下げる。
『くくっ。性別を間違えているラノケンのルーキーもいるみたいだが、そのアバターは新聞部に小説を出そうともしなかった罰ゲーム的なプレゼントだと思ってくれ』
舞台に立っている口姫が言う。
「バーチャルな世界に誘い込んで、いきなり罰ゲームかよ!?」
マスクを上げて悪戯な笑顔の口姫に書也の抗議の声も無視され、代わりに観客席から笑い声のガヤが聞こえ、「マジうける」「バ美肉少年かよ」「www」など、画面にコメントが流れてくる。
『このVR生配信は現国学院のブログで限定配信となっている。観客席のアバターで参加しているのは、現国学院の初等部、中等部、高等部、卒業生OBと先生方だ。なお、先生方の配慮から、実名を避け、ペンネーム表記とする。ラノケン側とマンケン側のアバターには実名とペンネームが表記される仕様だ。MCは私、新聞部の口姫と……』
口姫が手を向けると、スポットライトが当てられ、バニーガール衣装の聞姫が現れる。
『同じく実況の聞姫が進行する。そして解説はご存知の方も多くいると思われる現語教子先生、ラノケンの顧問でもあるお方だ。担当教科は現代語、ライトノベルはもちろん、ラノケン側の解説をしてくれる』
「……よろしく」
スポットライトが照らされ、解説席と記載されている長机に座っている教子先生は軽く頭を下げる。
『次に漫画研究部の顧問、素描花美先生。担当教科は美術。科によってはこの先生に美術を教わったという人も少なくはないだろう」
教子先生の隣の解説席に居た眼鏡のアルラウネ娘の教師にスポットライトが照らされる。
「素描花美です。絵の観点から解説したいと思います」
ぶっきらぼうな教子先生に対し、花美先生は笑顔で言って、会釈した。
『次に紹介するのはラノケンメンバー! ペンネーム中二病だ。一年のルーキーで、駆け出しの実力は未知数。やはりペンネームの通りに中二病作品か!? ダークホースなルーキーだ』
シェヘラザードの書也に再びスポットライトを照らされ、聞姫によってオークションの商品のように手をかざした。舞台のスクリーンには書也のレーダーチャートで【文章表現力】【構成力】【キャラ設定】【世界観設定】【知識】【リアリティ】【台詞回し】【コンセプト】などが表示されるが、全て?マークとなっていた。
『では、中二病。意気込みを語れ』
聞姫がマイクを向けると、恥ずかしそうに書也はもじもじとする。その反応に『恥じらう姿がかわいいとか』とか『男の娘かわいい』などのコメントが飛び交った。
『えと……が、頑張ります!』
その書也の返答に聞姫のうさ耳が垂れ下がる。
『はぁ? それだけかよ。次!』
キレ気味に聞姫が言った後、口姫が腕を動かし、スポットライトが照らされる。
『同じくルーキーと言っても中等部からラノケンに入部を続けている期待の新星! ドジっ子食いしん坊! ラブコメからファンタジー、幅広いジャンルを書き、ラノベのキモである挿絵はマンケンを凌ぐ事ができるのか?』
愛のレーダーチャートは一~五ある数値の中で【文章表現力一】【構成力三】【キャラ設定三】【世界観設定三】【知識三】【リアリティ四】【台詞回し三】【コンセプト三】と表示されている。
『ドジっ子食いしん坊でネット小説をあげている事から、既にファンは獲得済みのようだ。応援してくれるファンに応えてやれ、ドジっ子』
聞姫がマイクを向けると、愛は緊張した表情も見せずに口を開いた。
『みんなの期待に応えられるように頑張るよ!』
愛が笑顔で両手を振ると、観客席から歓声が上がる。愛のファンは多いのか、『ドジっ子食いしん坊頑張って!』や『応援してるぞ!』のコメントが多かった。
『次は……ツンデレ。このペンネームについては察していただければ分かるだろう。ラノケンで二年間、書き続けた努力は伊達ではない! 巨大ロボットものやヒーローものが大好きで、小説に取り入れている。愛、友情、努力といったものをテーマにした小説が多い。見た目通りに熱いラノベ作家だ』
友美のレーダーチャートは一【文章表現力三】【構成力二】【キャラ設定三】【世界観設定二】【知識二】【リアリティ二】【台詞回し五】【コンセプト二】と表示されている。
腕を組む友美は恥かしいのか、頬を赤く染めながら、彼女のサラマンダー娘の身体のアバターの炎エフェクトが燃え上がり、火柱を上げる。顔から火を吹くとはこういう事を言うのだろうか?
友美に対し、『お前の熱血小説を見せてやれ!』『俺だ! 大好きだ! 結婚してくれ』などのコメントが流れ、友美はさらに恥ずかしくなったのか、腕を組んだまま、顔を逸らした。
『ツンデレ、お前は現国新聞であげている連載小説やネット小説での人気も高いようだな。ファンに対して言う事はあるか?』
聞姫の質問に対し、友美はさらに顔を真っ赤にする。
『まあ、頑張れって応援してくれる奴が一人でもいるなら……頑張るけど……も、もちろん! マンケンには絶対に負けないわ!』
『ファンに対しても妙なツンデレ……さすがだな。次は……マッドサイエンティスト』
聞姫からそのペンネームが出た瞬間、ブーイングと歓声が同時に起こった。『鬼畜作家!』『グロ外道小説やめろ!』『神作家降臨!』『マッドの小説、俺は好き』など、賛否両論のコメントが流れていく。
遅れて、理香理香にサーチライトが照らされ、レーダーチャートが表示される。理香のステータスは【文章表現力四】【構成力三】【キャラ設定二】【世界観設定二】【知識五】【リアリティ四】【台詞回し二】【コンセプト三】であった。
『ん? マッドはファンもいれば、アンチもいそうだな? この状況でマンケンとの勝負は勝てそうかマッド?』
『無論だとも。皆に私の研究の成果を見せ、ラノベに漫画より優れている部分があるという事を知らしめようじゃないか!』
理香のコメントが終わっても、ブーイングと拍手は鳴り止まなかった。