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深澤side
照に告白されてから、
まだ返事はしていない。
たった一週間。
なのに、やけに長く感じた。
仕事では顔を合わせているはずなのに、
あの日みたいに、二人きりで話す時間はなかった。
胸の奥に溜まるものだけが、日に日に重くなる。
——今、何してるんだろ。
考えないようにしても、
ふとした瞬間に浮かぶのは、照の顔だった。
その時だった。
テーブルに置いていた携帯が、短く震えた。
通知。
画面を開いた瞬間、
息が一瞬止まる。
知り合いのSNS。
そこに写っていたのは、見慣れた男。
頬を赤らめて、少し目の焦点が合っていない照。
ニコッと笑っていて、
その肩には、知り合いの腕が回されている。
——肩、組んでる。
写真の下には、軽い文字。
「岩本君と飲んでるよ」
……それだけなのに。
胸の奥が、ざわついた
理由は分かってる。
分かってるから、余計に否定できない。
俺は、こんなことで動揺する立場じゃない。
それでも、
知らない誰かの隣で、
あんな無防備な顔をして笑う照を見た瞬間
胸の奥に、はっきりした感情が湧き上がった。
——嫌だ。
考えるより先に、指が動いていた。
「どこ?」
送信してから、少しだけ後悔する。
でもすぐに、位置情報が返ってきた。
……近い。
ジャケットを掴んで、家を出る。
夜風が冷たいのに、頭はやけに冴えていた。
店に着くと、知り合いが手を振る。
その隣で、照が椅子にもたれていた。
「……ふっかぁ?」
名前を呼ぶ声が、いつもより柔らかい。
酔ってるな。
分かりやすいくらいに。
「照、飲みすぎ」
「えー、そんな飲んでないってぇ」
ふにゃっと笑う。
その距離の近さに、胸がきゅっと縮む。
「悪いね、ちょっと酔っちゃって」
知り合いが言う。
「俺、連れて帰るから」
言葉が、自然に出た。
断る余地を与えない声だったと思う。
照の腕を取ると、
素直に体重を預けてくる。
……重い。
でも、嫌じゃない。
タクシーの中、
照はうとうとしながら、口を開いた。
「ん…ふっか…」
「照、飲まれすぎ」
「……迎えに来てくれたの?」
「ああ」
それだけ答えると、
照は安心したみたいに目を閉じた。
家に着いて、ソファに座らせる。
「水、飲んで」
「ん……ありがと」
受け取る手が、少しだけ震えてる。
その様子を見て、胸の奥がまたざわつく。
——俺の前ではこんな顔、見せるくせに。
ふと、さっきの写真が頭をよぎる。
肩を組まれて、笑っていた照。
理由の分からない苛立ちが、
ゆっくりと形を持っていく。
“独占欲”
認めたくなかった感情が、
こんなにもはっきりしている。
「ねぇ、ふっか」
「ん?」
「俺さ……」
言いかけて、照は言葉を失う。
酔ってるからだ。
でも、それを理由にして、少しだけ安心してしまう自分がいる。
——今は、言わなくていい。
照の前に立ち、
その赤い頬を見る。
他の誰かの隣に立つ照を想像しただけで、
胸がこんなに乱れるなんて。
……もう、答えは出てる。
俺は、静かに息を吐いた。
「……好きだよ」
聞こえていないのを、分かってて。
それでも、確かめるみたいに。
湧き上がる独占欲が、
その感情が、
ようやく俺に教えてくれた。
俺は照の唇と重ねた。
“好き”という事実を確かめずにはいられなかった。
コメント
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ふっかさん気持ちに気付いたのね💛💜💛💜