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拝啓、お母さん、お父さん―――
私、どうやら異世界で魔王になってしまったみたいです―――
これからどーなっちゃうのォォっ~~~!!
でも、それはそれとして―――
せっかく異世界に来たんだから楽しまないとね―――!!
魔王のステータスをほとんど受け継いだ未央は浮かれていた。
「いやいやいや―――、でもちょっと待って!」
「このステータスがホントにすごい訳~~??」
「実はさ―――、外にはレベル200,300の奴がゴロゴロいたりしない?」
未央は両腕を組みながら、魔王に簡単な探りを入れてみる。
「この世界のレベル上限は100だ―――」
「実際、我も元はレベル100だったが、引き継ぎの影響でレベルが10下がってしまった。」
「この世界では一般的な冒険者でレベル20、少し強い冒険者でレベル30、英雄クラスならレベル60だ―――」
「レベル90もあれば十分―――」
「天地を割くことも一国を滅ぼすのも難しくない。」
「ほえェ~~~!!」
そんな話を聞いて未央はポカンと口を開けている。
あまりにもぶっ飛んだ話が出てきてしまったので、脳がパンクしてしまう。
「だからこそ、しっかりと考えて使わないといけないぞ!」
確かにそうだなと未央は少し冷静になった。
「確かにそうだよね―――」
「ねぇ魔王さん。貴方はこの力を使って何で世界征服がしたかったの?」
ふと疑問に思ったことを未央は聞いた。
魔王は遠くを眺めて、過去を振り返るようにポツリと話し始めた。
「余は、この理不尽な世界を変えるために世界を統一したかったのだ―――」
「それってつまり?」
「この世の中は、戦争、争いが絶えない。」
「そのせいで魔族の子ども、いや他の種族の子供たちも同様に飢餓や病気で亡くなってしまうことが少なくない。」
「そんな戦いを全て終わらせたかった。」
「誰もが平和に生きることの出来る世界を創りたかった―――」
「へェ~~~、イイじゃんッ!!」
「あれ???でも、あなた魔王よね?」
「魔王って言ったら残酷なことをしたりするイメージしかないんだけど―――??」
「それこそ子どもを生贄にしたり―――」
「いや、余は生きていた頃もそんなこと絶対にしなかったし、させなかったぞ!」
「余は自分と同じが強い者にしか挑まなかった―――」
「ふっふっ、じゃあ何で勇者に敗れて滅ぼされてんのよ―――」
未央は噴き出して笑い出した。
少し魔王は恥ずかしそうにこう言った。
「勇者とは仲良くしたかったが、奴が話を聞く前に戦いを挑んできたし、余も部下が近くにいたから仲良くしようって表立ってできなくて―――」
「それで相討ちって・・・馬鹿じゃないのw」
「うるさい、うるさい!」
完全に魔王の黒歴史のようだ。
「でもさ、魔王って言ってもあなたいい人そうだね。」
「分かったよ私あなたの意思を引き継ぐわ。」
「この世界を征服する。」
「ただし、誰も可能な限り傷つけないし、傷つけさせない。」
「できるのよね?」
「無論だ―――、余の力は圧倒的であるが故どんな者も無力化できる。」
「でさ私、元の世界に戻りたいんだけど?」
「魔王になった後に戻れたりできるの?」
「余の力では無理だな。」
「そっか―――」
未央はしょんぼりする。
「だが、神ならできるだろうな。」
「其方ここに来るまでに誰かに会わなかったか?」
「そういえばエレベーターで女の人に会った。」
「とても不気味な人だったけど、お前には魔を統べれるだろうとか言ってた。」
「やはりそうか。」
「そいつはこの世界の神―――、女神だ!」
「そして余が世界を征服した暁に殺そうと思っていた!」
「えっ、殺すってまた物騒な…なんで?」
「奴はこの世界を理不尽に操作している節がある。”運命”とかいう都合のいい言葉を隠れ蓑にしてな。」
「余はそれが許せなかった。」
「だから神である奴を殺し、余が神になろうとした。」
「しかし、それも夢半ばで敗れたがな―――」
「まだ憎んでるの―――?」
「もはや、それは過去の話―――」
「余は既に死んだ身だ―――、もはやその気はない。」
「其方がもし元の世界に戻りたいと願うなら奴と接触する必要がある。」
神とか魔王とか話が壮大になってきたな―――
未央はそう感じていた。
「でも、会うって言ってもどうやって?」
「女神様なんでしょ?」
「このヌバモンドでは古くからこんな伝承がある。」
「”全ての種族を統べる者、神と見える”」
「余はその言葉は本当だと思っている。」
「いやというよりも神がこの世界を自分の面白くするようにそんな伝承を残していると思っている。」
「この世界そのものが奴にとっての遊び場なんだろうな―――」
「それが余は許せなかった―――」
「高みから生物が苦しんでいるのを見ている。」
「だからこの世界の全ての種族を統べて奴に挑戦しようと思っていた。」
「―――が、勇者に阻止された。」
「負けてしまったんだよ。」
魔王は、少し悔しそうに天井を仰いでいた。
「大体、話は分かったよ―――」
「女神様うんぬんはあるけど、平和にしたいって思いは一緒だから―――」
「それに元の世界にも戻れるようにしたいしね―――」
「私も世界を征服できるように頑張るよ!!」
そう言って私は両手を握りこぶしにして体の前に挙げた。
こうして、未央の魔王としての異世界生活が始まった―――