テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
莉瑠が救われる時間は、食事の時間と入浴だった。30分で出なければならないが、シャワーを浴びるとリラックスできた。
(どうしてわたしの思考はまともじゃないんだろう?考えることしかわたしには言葉がないのに、どうして?)短期大学での課題は、文字が支えてくれた。本当にそれだけだった。頭の中で考えようとしても、うまく考えられない。
入浴を終え、病室へ戻る莉瑠。美咲とすれ違った。「莉瑠さん、今日はいろいろ話してくれてありがとう、ゆっくり休んでね」莉瑠は今日初めて美咲に話すことができたのだった。「はい、お話を聞いてくれてありがとうございました」莉瑠もお礼を言った。
あとは、もう歯を磨いて寝るだけ。けれど美咲に話せたことで莉瑠の心は楽になっていた。
もう子供の頃にあった空想力も莉瑠は失い、知性しかない。いつも得体の知れない精神症状に悩まされながら、日々を送ってきた。「それじゃあゆっくり休んでね、莉瑠さん」美咲はそう言って、歩いて行ってしまった。「あの女の言う事なんか聞くな、わたしの言う事を聞け」幻聴が莉瑠に命令する。「お前の言うことなど聞くもんか」莉瑠は幻聴に言い返した。
(ああ、やっぱり治らないの?)莉瑠は幻聴が聞こえたことにがっかりした。
その夜は、それでも、それ以降幻聴は聞こえず莉瑠は眠りについた。