こんばんわ!
本日、体育の授業中バレーボール、ガチって転んだ女!スイ星です!
因みに擦ったからお風呂の時目ッッッッ茶痛かった☆
今回は中也目線かな?
だんだん終わりが近づいて来るよ……(笑)
其処は路地裏だった。
然し表通りから距離があり、建物によって日光が遮断され薄暗い。
三人の男と、赫色の髪をした青年───中原中也が居た。
少し勢いを付けて足を下ろす。
──────バキッ!
「がっ……!」敵の骨が軋む音と、唸り声が上がる。
俺は懐から煙草を取り出し、ライターの火を移す。息を吐くと、白い煙が後を追った。
「……………」
足元には三人の敵。簡単に云えば仕事中だ。
──────カツンッ
靴音が響く。視線を向けた。
「やぁやぁ素敵帽子君!元気そうだねぇ!」
元気な声で武装探偵社ンとこの名探偵───江戸川乱歩が、駄菓子やら何やらが入った買い物袋を持って云って来た。
チッ………仕事中に来るなよ。
まぁ、促したネズミは処分したし、問題はねェか。若し何か首を突っ込んでくるなら、その時はちったァ遊んでやるぜ。
口角を斜め上に上げる。
「一寸乱歩さん!何で敵組織の幹部に会いに来たんだい!?」
その後ろから、両手に買い物袋。同じく武装探偵社の、何とも梶井曰く探偵社の専属医………名前は確か───「大丈夫だよ与謝野さん。此方から危害を加えなきゃ相手も何もしてこない。停戦中の交戦はお互い禁止されてるからね」
おぉそうだ、与謝野晶子だ。梶井が何故か妙に震えながら話してたな。まぁ鉈振り回してる女だし………。
「ンで、何の用だ?此方は仕事中だ。早急に済ませろ。」
「あ〜用はね…………」
名探偵が笑顔で近付いて来る。袋から何かを取り出し、ソレを俺にずいっと近付けた。
思わず目を丸くする。
その手には────一本のラムネが握られていた。
「これ素敵帽子君にあげるよ、昨日の太宰の件でのお礼」
「お……おう?有難な」
名探偵からラムネを受け取る。
「昨日って………何の話だい?」
女医が目を見開きながら聞いてきた。
「太宰の事を“与謝野さんに伝えて医務室に連れてったのは僕”だけど、“太宰が倒れているのを僕に伝えた”のは素敵帽子君だ」
「えっ…」女医が驚きの声を上げる。
「そンで名探偵、俺の処に来たのはコレを渡す為か?」
「うん、そうだよ。そう云う訳だからじゃーね」
名探偵が俺に背を向けて歩き出す。女医がそれに続いた。
「なァ」俺の声に二人が振り返った。「太宰の調子は如何なンだ?」
何故こんな事を聞いたのかは、自分にも判らなかった。
只、勝手に口が動いたのだ。それでも、其の時の自分に後悔は無かった。
名探偵が此方を向いて静かに云った。
「精神科病棟に入れたけど?」
さらりと云われた言葉に思わず声がもれる。
「…精、神科…病棟……?」
何処からか「焦り」という感情が湧き上がった。
「うん」名探偵は俺が焦っている事に首を傾げながら云った。
「………………………そうか」
***
六年前。
俺と太宰は、首領の命で遠征任務に中っていた。
その道中────
「あぁ〜最悪」
喉を嗄らしながら太宰が云う。
蝉の鳴き声は夏の暑さを強調しているようで、太陽の斜熱は肌を通して感じ、ジリジリと俺達の体力を奪って行った。
外套を腕に持ち、お互い夏の暑さに汗を流す。
「何で宿まで徒歩で行かなきゃいけないのさ……しかもその宿が山奥とか、もう一寸好い処にしてくれたって佳いでしょう…」
嫌味を云う太宰の手を、俺は引っ張る。
「その宿が絶景で有名なんだと……あと温泉が躰に善いとか何とか………」
反対の手で汗を拭い、鞄を担ぎ直す。「つーか手前重ェンだよ!態と体重かけてンだろ!!」
「あっバレた?」
「死なす!!」
「でも中也、僕本当に疲れたんだよ。一寸休もうって…………」
太宰の息は少し荒くなっており、頬が赤く火照っていた。
熱中症になって寝込まれるよりかはマシか……。
太宰は、頭が切れて手先も器用だが、決して何でもできる訳では無かった。
ポートマフィアに這入っても数回風邪をこじらせた事はあったし、その所為で倒れた事もあった。
まぁ、あン時は丁度任務の作戦について話し合ってたから部下が誰も居なくて佳かったが……。
そう。太宰は、決して何でもできる訳では無い。
「………日陰あるから、其処で休憩すっか」
「うん…」俺は太宰の手を引っ張った。
森の木々が影をつくり出し、俺達に休みを与える。
涼しい風が頬をなぞった。
「……ゴクッ、ゴクコク…」
太宰の喉仏が上下に揺れる。
水筒の中に入っている冷たい水を、太宰は飲んでいた。
「ほんと暑い………」
太宰は俺に水筒を渡してくる。俺は受け取って中の水を飲んだ。
冷たい水が、熱くなった躰をひんやりと涼しくさせた。
「太宰、宿まで後どれ位だ?」
「ざっと三キロ」
「……………………」
「…………………」
お互い一瞬黙り込む。まだ三キロも……という言葉が脳裏に現れたからだ。
「……ンじゃあ疾く行くぞ、宿に間に合わねェ」
太宰の手を掴み引っ張る。
だらしない返事をしながら、太宰は立ち上がった。
「あと、三キロ……矢っ張山道きちぃなぁ………」鞄に水筒を戻す。「太宰、行くぞ」
太宰の方を向くと、太宰は違う方を向いていた。妙な雰囲気を漂わせて。
「………………………太宰?」
俺は太宰の隣に立つ。視線の先には森の木々に囲まれる白い大きな建物があった。
近くには駐車場があり、数台の車が停めてある。
「何だアレ?」
「────精神病院……否、精神科病棟の方が正しいかな」
静かな口調で太宰は云う。
「こんな所に病院なンて在ったのか……」
「アレは只の病院じゃないよ」
その言葉に、俺は視線を太宰に移した。
「アレは────只の病院なんかじゃない」
そう云って太宰は振り返る。
「彼処は狂人が入れられる場所なんだ。だから若し入れられたら自分は狂人、廃人という事になり、人間失格の烙印(ラクイン)を押されてしまう。地獄のような場所だよ」
太宰が纏うその雰囲気は、俺とこの世界から太宰を切り離していた。
「何でそンなに知ってンだ?」
「____…」
太宰が俺の方に振り返る。
「さぁ?何でだろうね」
俺達は再び宿に向って歩き出した。然しその途中に、太宰は云った。
「ねぇ中也。若し君が彼処に入れられたら、僕が君を助けてあげよう」
「だけど、若し僕が彼処に入れられたら────」
────僕を助けてね。
「…………そうか」
俺は名探偵と女医にそう云い残して、その場を後にした。
靴音が響く。
助ける?
俺は敵組織の幹部だぞ。
いくら元相棒だからって、彼奴を助ける義理なんて無ェ。
それに彼奴は……………。
─────僕が君を助けてあげよう。だけど若し──────────僕を助けてね。
「………………くそっ……」
歯を食いしばる。
そして、静かに空を見上げた。
あの後俺は、太宰に何て答えた………?
コメント
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今回も相変わらず最高ですね! この話は私の勉強の励みになっていました!本当にありがとうございます! これからも楽しみにしています!