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ライブまで、あと三日。
練習室の空気はいつもより重く、湿っていた。
鏡に映る五人の姿。
今日もただ誰も笑わず、誰も声を荒げず、ただ音だけが反響していた。
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☔️seed
こさめはマイクを握る手を握り直す。
心臓は高鳴り、指先がわずかに震えた。
__大丈夫。今日も本気を見せれば、きっと分かってもらえる。
だが、目に映るのは冷たい視線ばかり。
仲間も、ファンも、スクリーン越しのコメントも。
“また手を抜いた”
“やる気ない”
画面には文字が並び、こさめの心に小さな棘を残していった。
リハーサル中、二番の入りで声が掠れる。
🎼🎮「……大丈夫?」
メンバーが尋ねる。
🎼☔️「ちょっと昨日夜更かししただけだよ!ニコッ」
酷い笑顔で返していたと思う。
その瞬間、全員の視線がこさめに集まる。
沈黙が重くのしかかる。
誰も口には出さないが、空気が語っていた。
__やっぱりこさめは、本気じゃない。
そう言われている気がした。
夜、帰宅した部屋。
机の上には歌詞ノートと録音機材。
びっしり書き込まれた文字。
消しては書く。
それの繰り返し。
練習の痕跡が、あまりにも正直に残っている。
🎼☔️「……まだ入りが甘い。高音も雑。」
低く、誰にも聞かれない声で呟く。
ヘッドフォンを耳に当て、
何度も何度も録音を繰り返す。
声が掠れ、喉が痛くても止めない。
その努力は、誰にも届かない。
画面の向こうのコメントは、ただ冷たかった。
“本気じゃないんだろ”
“足を引っ張るだけ”
こさめは小さく枯れそうな笑顔で笑った。
🎼☔️「そうかもしれんな……」
笑顔は軽く、無力感を隠すためだけの仮面だった。
その夜、枕に顔を埋めながら思う。
__俺がいなくなれば、みんなは少しでも楽になるだろうか。
誰にも理解されず、誤解だけが膨らむ孤独。
それでも、こさめは明日もステージに立つ。
自分だけの小さな誇りを胸に、へらへらと仮面をつけて。