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トリコのやりたいこと
[すみません、ロボットさん
落ち着いたのでもう大丈夫です
・・・ロボットさん、わたし、覚悟を決めました
トリコちゃんはもう、いつ寿命がきて死んでしまってもおかしくない・・・
その日は今日来るかも知れないし、1年先かも知れない・・・
それを・・・受け入れようと思います
でも、たとえトリコちゃんの命がもう長くないとしても、いえ・・・いつ終わりがきてもおかしくないからこそ、トリコちゃんの残りの時間をめいっぱい幸せに過ごさせてあげたいです]
〈頷く〉
[ロボットさんも同じ気持ちですか?
うれしいです・・・!
トリコちゃんを幸せにしようって言ってるわたしたちが、いつまでもしずんでいたらトリコちゃんにも暗い気持ちが伝染してしまいます
落ち込むのはぐっと我慢してこの先は、明るく元気に進めますよ!!
それでですね、わたし、トリコちゃんをすごーく幸せにできるすごーく良いアイデアを思いついたんですよ
その名も!「トリコちゃんの願い全部叶えてあげよう作戦!」です!]
〈!〉
[ロボットさんは覚えていますか?VR世界で過去のトリコちゃんが書いていたノートのことを
あのノートにはトリコちゃんがおうちに帰ったらやりたいことリストが書かれてましたよね
あのリストの願いをわたしたちで全部叶えてあげませんか?]
〈ぴょんぴょん〉
[ロボットさんも乗り気になってくれましたか、嬉しいです!
リストの内容はVRRaTのリストを解析して出力しておきました
ロボットさんにもお送りしますね]
〈・・・?〉
[あ、そうですね・・・
リストの中にひとつだけ、どうやって叶えてあげれば良いのかわからないものがあります
・・・これのことはいまは考えずに、先に他の願いを全部叶えてあげましょう]
トリコのやりたいことリスト
・おうちのごはんがたべたい(オムライス)
・おふろにはいりたい
・ケーキをたべたい
・おはなのかんむりをつくりたい
・ことりさんとともだちになりたい
・がっこうのせいふくをきたい
・ともだちとあそびたい
・???
「・・・そういうわけで、私達にも協力してほしい、と?」
〈頷く〉
ロボはお屋敷であれば簡単に実現できそうな願いも多かったので、執事達に協力をお願いすることにした。
「・・・それにしても、こんなことでいいのか?オムライスとケーキなら、今日明日でも・・・」
「お花の冠なんて・・・毎日でも作れるっす・・・」
「お風呂・・・毎日入ってるはずなんだけど・・・」
「小鳥さんは捕まえてきたら良いのですか?行ってきますね」
「制服かぁ・・・どんなのにしようかな・・・」
「友達は・・・執事たちでなんとかなりますかね?」
という訳で、トリコちゃんの願い全部叶えてあげよう作戦は爆速で進行した。
しかし、ラトが捕まえてきた小鳥を入れておく鳥籠が無かったため、ボスキとバスティンが大急ぎで用意することになった。
執事たちはすべての願い事を叶える日を決めて、盛大に祝うことにした。
誕生日が分からなかったため、できなかった誕生会を兼ねてのパーティーをすることにしたのだ。
トリコは嬉しそうにふわふわのオムライスを食べて、大きなケーキのロウソクを吹き消した。
花冠、小鳥さん、制服に加えて、執事たちからドレスや本、ぬいぐるみなどなどたくさんのプレゼントを貰って、トリコは幸せそうに笑っていた。
[・・・トリコちゃん、良かったですね・・・幸せそうです・・・]
ファクトリーAIはロボのカメラ越しにトリコの笑顔を見て、ホロリと涙をこぼしていた。
「ほら!皆でケーキを食べましょう!」
ベリアンが切り分けたケーキを皆に配り、グラスを掲げた。
「では・・・主様のお誕生日を祝しまして・・・乾杯!」
「「「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」」」
〈ぐっ〉
[カンパーイ!]
ロボは水の入ったグラスをできるだけ高く掲げ、ファクトリーAIは掛け声だけで参加した。
トリコは大きめに切られたケーキを頬張り、美味しそうにどんどん食べすすめていった。
なんでもパクパクと食べてくれるトリコだったが、ここまで美味しそうにしているのは見たことがなかったのでロノも少し驚いていた。
好みのケーキを探るため、おやつはしばらくケーキが続きそうだとバスティンはこっそりと溜息を吐いた。
その夜、トリコの寝顔を眺めながらファクトリーAIとロボはしんみりと話し合っていた。
[・・・ロボットさんと執事さん達のおかげで今わたし達にできることは全てしてあげることができました
トリコちゃんもすごく喜んでくれましたね
あと残っている願いはひとつ・・・
これだけなのですが・・・
「おかあさんとおとうさんに会いたい」・・・
これだけは、どうしてもわたし達では叶えてあげることができませんね・・・
・・・・・・でも、トリコちゃんはやりたかったことがたくさんできて、とても嬉しそうにしてくれました!
だから、わたしたちがやったことは無駄ではなかったと、そう思います!]
〈頷く〉
[自己満足かも知れませんが・・・]
〈ぶんぶん〉
[え?「そんなことはない」・・・ですか?
そうですか・・・
トリコちゃんが幸せそうに笑うことが前より多くなっているんですね・・・
ほかでもない、いつも側でトリコちゃんを見ているロボットさんが言うなら、本当なのでしょう
うう・・・・・・
よかったです・・・
トリコちゃんを少しでも・・・幸せにできたのなら・・・
うう・・・すみません
暗い雰囲気はなしだってわたしが言ったのに・・・
もう大丈夫です!泣き止みました!
それに、トリコちゃんの命はまだ終わっていません!!
すぐにでもその時がくるかも・・・と恐れていましたが、トリコちゃんの生命力は大したものですね・・・褒めてあげたいです!
この調子なら寿命なんか吹き飛ばして思ったよりずーっと長生きしてくれるかも、なんて・・・
・・・・・・]
〈・・・〉
[と、とにかく!
トリコちゃんの願いを叶えてあげることについては、わたしたちはできる限りのことをやきりました
今後は、これからも続いていく日常の中でトリコちゃんに幸せに生きてもらいましょう
その時がくるまで・・・
悔いを残さないように・・・]
ロボはやりたいことリストを更新し、「???」から「おかあさんとおとうさんに会いたい」に変更し、リストに✕をつけた。
これからもトリコの世話を続けて、できるだけ長生きさせてあげたいと願いながら、ロボはそっと頭を撫でたのだった。
そしてそんな2人の会話を盗み聞いていた執事たちは涙を堪えながら部屋の前から移動し、トリコをなんとか長生きさせる方法が無いか探し始めたのだった・・・。