そうだぞヴァイオレッタ。こんな毒親の言うことをいちいち聞いて従う必要は全くないんだ。自分の人生をこんな簡単に短絡的に決めつけるなんてるとんでもないことだろ。
ズバッと言ってやれ。
「…その、結婚…とか…わたくし…。」
「うん、うん。」
もじもじと肩を寄せ胸を震わせるヴァイオレッタ。
「そうではなく、ちゃんとしたところに就職して…たとえばリユージさまの所で働けば、わたくしたちは食べ物に困らないのですか?」
「ここは食べ物も豊富な国だし〜そうかもねぇ〜☆」
「ここの城下町にはなんでも揃ってるな。城のはよく買いに行ってるぞ。」
「わたくし、毎日、弟や妹のために朝から晩まで働いて、食費を稼いできていましたの。それでも低賃金で…育ち盛りの子供のご飯が賄えなくて限界が来ているのです…。」
「母親(ヴァルヴレッド)なにしてんだよ…。」
「…うぇっへっへっへ。参ったね〜返す言葉もナシ☆」
ヴァイオレッタは深刻な顔をしていた。
「お母様は今働ける状況ではありません。お母様は今、お酒の力を借りてここまで来ているのです。」
「お酒の力?」
ヴァルヴレッドはフンと軽く鼻を鳴らすような仕草をしてそっぽ向いた。
「誤解してらっしゃるかと思いますが、お母様は今、というか普段はとてもお優しくて気弱な方です。
わたくしのお父様がいなくなってからは心を病まれてしまい、裏山に引きこもっておりました。」
「今の話の流れからは想像もつかないほど純粋だった女性のドラマが今はじまろうとしてるのか。」
「そのような生活でしたが、定期的にこのようにお酒を摂取しては暴れております。」
「自分の言う通りにしないと、発言も気をつけないと一国を滅ぼそうと考えてるレベルのお酒のやらかしなんて初めて見たぞ。」
「本日も突然、目隠し状態でこちらに連れてこられて…何がなんだかでしたわ。一週間ぶりにお母様が姿を現したと思ったら、これなんですの。」
「カオスだろ…。」
ぐぅ〜〜〜。
ヴァイオレッタのお腹が鳴る。おいおい。
「あっ、、あのリユージ様、わたくしのことどう思いますか!??」
お、俺のこと食べないだろうな…!?
「わたくしは自分や兄弟の幸せと同じ位、お母様の願いも叶えたいと思っております。働けて、美味しいご飯もたくさん食べられ、平和に暮らせて、一族の血を守ることができるならーーーお母様のお話、ヴァイオレッタは喜んでお受けしたいのです!」
美しい大きな黄金色の瞳がうるうると光っている。
「俺は俺自身のことをよく知らない。そう言う状況で無責任に子供を作るって、乗り気にはなれんよ。」
「ではー働けないということですか?」
「君の体に負担がかかることだぞ。俺も慎重にもなるさ。」
「心配してくださるのですね…。」
「俺は孤児院出身だ。本当の父も母もどこにいるのかも知らない。助けてくれた今の両親には心から感謝しているんだ。だから間違ったことはできない。」
「カタイ男だな、我はますます気に入ってるぞ〜☆」
「とりあえず、お前はカグヤを返してくれ。」
「わたくしは…どうすれば?」
「待っていてくれ。俺は自分のことを調べる必要がある。ヴァイオレッタの就職の件は許可をしよう。とりあえず俺の監視下の元、ちゃんと働けるか試用期間を設ける。話はそれから追々考えるつもりだよ。」
パンっと弾ける音がして、空中からカグヤが落ちてきた。
「ーーー!?」
「うおおおっ」
カグヤをキャッチすると、カグヤは何故か茹でガニのように真っ赤になっていた。何かの術にかかってないか心配になる。
「大丈夫か!?」
「……問題ないです。」
「本当か?」
「こんなにも音が聞こえない世界は、初めてでした。正直、居心地が良いくらいでーー」
ヴァイオレッタが言う通り、アビリティが通用しない空間だったのだろう、突然のことでカグヤも目をぱちくりさせていた。
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