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「…………んん…」
暗殺ターゲットとナイト
腹部に違和感を感じながら体を起こす
「傷が…」
てっきりもうダメだと思った
ここで終わりなんだと…しかし,あの状況から生きている事が不思議だ
「起きたの…お前」
視線を横へと向けると,殺そうとした張本人のイトフがそばの椅子に腰を掛けていた
一瞬で,警戒態勢を取るが…殺意のない男の顔と血抜きを行ってる最中を見ると、一度に湧いた怒りはゆっくり抜けていくような気がした
「お前が私を助けたのか?」
「勘違いするなよ助けた訳じゃないあくまで身を守る為だから」
次第に血抜きが終わりを示す音が鳴ると、イトフは立ち上がり、部屋を出ていった
入れ替わるように、入ってきたのは白衣の男
「助からないと思っていましたが、とんだ生命力ですね」
「はぁ?まさかお前が助けたのか?」
「俺はお前なんて見殺しでも良かったんですようちのメイドが煩かったので仕方なくです」
点滴を付け替える
「うげっ……なんか変な気分だ…」
「二度とこんな目に会いたくないなら、怪我も無茶振りもしない事ですね」
男は手袋を取り、女の顔面目掛け,手加減込みで投げつける
怒りの大声が飛び交うが、無言で扉が閉まる音がした
数日間経ち__
点滴生活だった体もすっかり動くようになり、
ベットから降りて大きく背伸びをする
「ふわぁ〜……調子戻ってきたかぁ?」
怠けた声で独り言を呟くと,朝ごはんの匂いに釣られキッチンへ向かおうと廊下から出ていった
向かっている途中で、イトフと出会った
しかし、話を持ち出されることも無く、そのまま無言で先に行かれてしまったのだ
「……まだ居たのか…」
「おはようございます。人間様、イトフ様」
「はぁ?…イトフ???」
キッチンの前で,ロボットに丁重な呼び名と挨拶をされているイトフ
イトフは慣れてるように受け答えをしている
「挨拶はいいよ。ご飯食べたいから早くして」
訳が分からない状態に思わず
怒りが思い切り出てしまう
「こいつに殺されかけたってのに!未だ追い出さず普通に生活してんだ!!!」
「煩いな朝から…ほんとに女なの…?」
「人間様、これには訳があるのです!彼を屋敷に置いているのは先生が決めた事なのです」
「あの男がか!?尚更頭おかしいんじゃないか??殺されかけたってのに置いておく意味が分からないな!」
すると何処からか話を聞いてた男がタオルを持ち顔目掛け投げつけて来たのだ
飛んできたタオルを握りしめ男を睨みつける
「どういうつもりだ…!」
「やっと起き上がったかと思えば煩いですね,顔でも洗ってきたらどうです?」
「話逸らすなこの死に損ない!!」
「はぁ…それはお前でしょう?」
「………一気に煩くなったな」
食堂__
長い机に置かれた朝食を、それぞれ離れた席で食事をする3人の影と後ろに立つメイドがあった
隅の椅子に座り2人を横目で睨みながら食べる食事は楽しいわけが無い
(こいつらさえ居なければ…)
ただしかし飯は美味い…
このスープも暖かくて、お肉もいくらでも食べれちゃうな…
「あんたよく食うな…」
食事に夢中で見られてる事に気付かず,イトフに離れた席から声を掛けられる
「…悪いかよ」
「確かに美味いかもしれないけど…ロボットが作ってるって考えたら…そんな美味そうに食べれない」
確かにそうだ。
イトフの話に白衣の男は何も言わずに黙ってスープを飲み続けている
馬鹿にされたように言われた言葉を他所に珍しく反撃もせずに食事を続けた
「なんとでも言えよ。お前が食ってた飯がどんなだったか知らないが…私はそこらの自販機の支給品だったからな」
「へー…そんなの食ってたの」
「それに比べたら美味いもんだろ…作り立てだし温かい」
「確かに」
すると食事の終えた男が席を立つ
メイドが白衣を差し出すと男はそれを受け取り、一言だけ発した
「ご馳走様」
メイドが会釈をし、男は奥の扉から食堂を出ていくとイトフも席を立ち,無言で別の扉から食堂を出ていった
閉まる扉を見つめているといつの間に背後に居たメイドが声を掛けてきた
「人間様,実はデザートの方もあるのです」
「…!…食う!」
長い廊下を1人歩くイトフは,辺りを見回しながら怪しげに行動している
とある部屋へと入ると、自分の愛用の銃を見つけ出し手に取る
「良く好き勝手してくれたね…sumo」
口元が不気味に微笑むとイトフが部屋から静かに出ていった
「うま……!」
食事を済ませ、デザートを口に運びながら美味しさのあまり歓声を上げた
「そちら杏仁豆腐でございます」
「杏仁豆腐…甘くてコクがあって美味い!」
「人間様,そこは”美味しい”ですよ」
「意味は同じなんだから良いじゃないか」
しかしそんな言葉にロボットは首を振る
「人間様は女性なのですから…口調を柔らかくすれば…先生も少しは見直されると思いますよ」
「なんであいつに」
「先生のお母様も賢く清らかでとても優しい方だったのですよ」
「………お母さん…?」
すっかり忘れてたな…お母さんなんて言葉
記憶が無いほど昔に死んでしまってるのに、言葉だけでも不思議な感覚がある
あいつにもいたのか…まぁ当たり前だが、あんな性格からじゃ母親が居たなんて事感じ取れないな…
「杏仁豆腐、美味しい」
「ありがとうございます!…そうでした、今日から言葉使いを習うようにと先生に言われませんでしたか?」
「は…?習う?いや、そんなの知らないが…」
そもそもまともにあいつと喋ったりしない
「先生から”利口なナイトに仕上げろ”と言われています。お体も治ったようなので今日からよろしくお願い致します」
「はぁ!?誰がアイツのナイトだ!!今すぐ○してやる!!」
「困ります!!先生の命令を果たさなければ!」
カチャカチャ__
「…こんなものだろう」
修理を終え、ロボットの電源を入れる
体中に電源が隅々まで入り、目元が光る
起動したロボットは立ち上がると音を鳴らしながら,男の前で頭を下げる
「無駄に治して…数増やしやがったな」
イトフはそう言いながら銃を向ける
「見つけたか…やはり壊しておくべきでしたね」
「俺の取られた血液分…お前に出してもらう」
すると起動したばかりのロボットが二人の間に入り込む
「……守ってくれてるみたいじゃん…良かったね、」
「退きなさい…また俺に修理させるつもりか?」
「それは失礼しました…」
「持ち場に戻れ」
そう言うとイトフの前を通過し、部屋の外へと出ていった
「何時まで立ってるつもりですか?それとも…弾抜かれてる事にすら気付いて無いのですか?」
呟くように言うと向けられた銃が下ろされる
「知ってる…脅しくらいにはなるかと思ったんだよ」
「俺を殺せば,屋敷中の虫共が食いつくようにお前を殺すでしょう」
「あの女もか?」
「……ナイトですから当たり前でしょう。悲しみはしないだろうけれど」
「寂しいものだね」
「逆に都合がいいので助かります」
弾のない銃を持ち直すとイトフは男の部屋を後にした
男のポケットにイトフの銃に詰められていた弾が入ってる事も知らずに