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「甘い誘惑」
ステージの熱気がまだ身体に残る夜。
控え室のソファに腰を下ろした私は、ペットボトルの水を飲み干して、ふぅと息をついた。
「お疲れ。今日も頑張ったね。」
ふいに背後から声がして、びくりと肩が跳ねた。
振り向くと、若井滉斗さんがいた。ステージ衣装のまま、髪もまだ少し濡れている。
「…若井くんこそ、お疲れ様。」
「うん。……でも、なんか緊張してたでしょ?」
「え?」
「ずっと見てたから、わかるよ。」
そう言って、彼はすっと私の隣に座った。
肩が触れるか触れないかの距離。心臓の鼓動が急に早くなる。
「なんで緊張してたの? 俺が近くにいたから?」
「ち、違うよ、そんな……!」
「嘘つき。」
彼は、いたずらっぽく笑うと、私の髪をそっとかき分けた。
露わになった首筋に、彼の吐息がかかる。ぞくりと背筋が震えた。
「ずっと、触れたかった。」
「若井くん……?」
返事を待たずに、彼の唇がゆっくりと私の首筋に触れた。
そして、熱を帯びた舌先が、そこを這うように優しく――舐めた。
「んっ……」
思わず声が漏れる。恥ずかしくて顔が熱くなる。
「こんな反応されると、余計に止まらなくなる。」
彼の手が腰に回り、距離はもうゼロになった。
「夢じゃないからね。ちゃんと覚えてて。」
耳元で囁かれたその言葉が、胸の奥に焼きついた。