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一つ屋根の下、地雷注意報

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一つ屋根の下、地雷注意報

21 - 第二十話:「夜風のなかで」

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2025年05月19日

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ファミレスを出ると、夜の空気が少し冷たくなってた。
駅までの帰り道、

俺とるかは並んで歩いた。


るかは、さっき食べたパフェのカップを両手で抱えるように持って、

ストローをいじりながら、前を見てた。


別に、何を話すでもない。


だけど、

ふいに、るかがぽつりと口を開いた。



「……小さいころ、アイスとかあんま食べさせてもらえなかった」


俺は驚いて、

るかの顔をちらっと見る。


るかは、前を見たまま、

かすれた声で続けた。


「甘いもの、食べたら怒られてた。太るからって」


「……」


「別に、今さら気にしてないけど」


るかの声は、淡々としてた。


でも、

その肩が、少しだけ小さく見えた。



俺は、何て返したらいいかわからなくて、

手をポケットに突っ込んだまま言った。


「……好きに食えばいいだろ。誰も文句言わねぇし」


るかは、

一瞬だけ俺を見て、

すぐに目をそらした。


「……うん」


それだけ。

でも、

その声は、ほんの少しだけ、あたたかかった。



信号待ち。


赤信号を見上げながら、

るかはまた、ぼそっと言った。


「……あたし、わかんないんだよね」


「何が」


「……どうすれば、普通になれるのか」



信号が青に変わる。


俺は、

そのまま答えず、歩き出した。


普通なんか、別に、なれなくてもいいだろ。

俺はそう思ったけど、

たぶん、今ここでそれを言うべきじゃない気がして、

何も言わなかった。


代わりに。


歩きながら、

るかの袖を、無言で軽く引っ張った。


るかは驚いた顔をして、俺を見た。



それだけ。

何も言わない。


でもたぶん、それでよかった。


二人で、

並んで、駅まで歩いた。


夜風が、すこし冷たかったけど、

心は、少しだけあたたかかった。

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