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時計を見たら、もう3時を過ぎてた。
スマホをいじっても、動画を流しても、
目だけがずっと冴えてる。
ふと、隣の部屋の襖が、すっと開いた音がした。
るかだった。
パーカーを羽織って、髪は結ばずぼさぼさのまま。
「……眠れない」
ぽつんと、まるで天気の話をするみたいに言う。
俺は布団の上でスマホを持ったまま、目だけ動かして返した。
「俺も」
それだけで、しばらく沈黙。
でも、なんとなく、そのまま外に出ることになった。
⸻
夜道は、人っ子一人いなかった。
街灯の明かりが、アスファルトの上にふたり分の影を並べていた。
るかは、自販機で買ったカフェオレを片手に持って、
それを口に運びながら、無言で歩いてる。
「……別に話したいことあるわけじゃないんだけど」
いきなり、るかがそう言った。
「でも、部屋にいるよりマシ」
俺は缶コーヒーを片手に、横を歩きながら言う。
「わかる」
⸻
少し歩いた先の公園で、ふたり並んでベンチに座った。
るかは脚を抱えるようにして座って、空を見ていた。
「……たまにこういうの、いいかもね」
「何が」
「意味のないこと。だらだらしてるだけのやつ」
「それしかしてないだろ、俺ら」
るかは、くすっと笑った。
それは、ほんの一瞬の、無防備な顔だった。
⸻
カフェオレの缶が空になる音がして、
るかは立ち上がった。
「……帰ろ」
俺も立ち上がって、ベンチの背伸びをしながらつぶやいた。
「次、朝まで眠れたらいいな」
「それは無理」
「だろうな」
⸻
ふたり、また並んで歩く。
街灯の下で、少しだけ影が重なってた。