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今日は一体どうなっている?
優奈はついに頭を抱えたくなった。
名草、奥村、そして雅人。
それぞれとの会話はそのどれもが優奈にとって非常に濃く、何か大きな渦に巻き込まれているのではないかと思うほど。気を抜けば目が回りそうだし頭の中もハッキリ言ってゴタついている。
そこへ来て。
白髪をオールバックでかためる初老の男性。
背格好は雅人と同じくスラリとした長身で、年齢から見てもかなり逞しい筋肉質な体型をしている。
ブラックのシャツにノーネクタイ。ロイヤルブルーのスーツをスタイリッシュなシルエットで着こなし、渋さと貫禄、そして何とも言えぬ自信溢れるオーラを撒き散らす。
優奈のような思考回路の人間から言わせればいわゆる”イケオジ”的な雰囲気を醸し出し、黒塗りの外車から降りてきたのは。
「高遠のパパ!?」
雅人の顔こそ見えないが、ピリピリとした気配からどんな表情をしているのか予想できてしまう。
恐らくかなり久々の、対面だろうこの親子。
「優奈。そろそろジジィの出番だなぁ、逐一探ってたが出遅れた、すまねぇ」
硬直する雅人から優奈の手を引き、雅人の父である高遠はじめは、幼い頃によく聞いていた優しい声で、耳打ちした。
「相変わらず可愛らしいな、優奈。にしても、比べてとんだ腑抜けたポンコツヤローになりやがってんな、うちのクソ息子はよぉ」
そして今度は一転、大きな声を出し、確実に雅人の耳に届くようはじめは言った。
「え? 高遠パパがそれ言っちゃう? パパも結構さぁ」
「ははは、優奈は相変わらず俺に冷てぇなぁ!」
わしゃわしゃと豪快に優奈の髪を撫で、大きな笑い声を上げる。
懐かしさが胸を熱くした。
驚きから止まっていた涙だけれど、涙腺フル活用の優奈の目からは再び涙が溢れ出して来てしまいそう。
「よし、来い優奈」
「え!? どこに!」
そんな優奈の涙腺などお構いなしに、我が道をゆく高遠はじめは健在なようだ。
「なーに、心配すんな! 明日はこいつの会社まで送ってやるからな」
決定事項かの如くはじめは優奈の肩を抱き、横付けた車に乗り込ませようとするが。
「待て、あんたどういうつもりだ」
それを、雅人の地を這うような低い声が引き止める。
「おーおー、トンチンカンな息子よ。腐った脳みその男んとこに可愛い優奈を置いとけるか」
軽くあしらうような返しに、雅人は冷え切った瞳でこちらを睨みつけ、怒りを隠すことなくあらわにした。
「……ああ? 誰が腐ってるって?」
「腐りきってるだろが。今ここで優奈との関係をハッキリ言葉にできねぇヤローはスッ込んでろ! 優奈んとこの二人にはもう話通してんだ」