テラーノベル
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『本音と建前』
tg視点
コン、コン――
玄関のドアを、誰かがノックしていた。
音は優しくて、だけどやけに心臓に響いた。
tg ……っ
胸ポケットの中で、震えた。
昨日の夜、しおたんが寝たあとに、こっそり引き出しから見つけた俺のスマホ。
電源は切れてたけど、充電してスリープ解除したら――
知らない人から、メッセージが届いた。
『ちぐさくん?今どこにいるの?』
俺は、怖くて。けど、助かるかもしれなくて。
気づいたら、「たすけて」って、返信してた。
だけど――
so ねえ、ちぐちん
背後から、しおたんの声がして、俺はビクッと肩を揺らした。
tg それ、どこで手に入れたの?
しおたんの目が、笑ってない。
けど、口元はゆるやかに微笑んでいて、それが余計に怖かった。
tg ご、ごめん……俺、勝手にっ
so ううん、いいの
しおたんは俺の手からスマホをそっと奪い取ると、ふっと画面を見た。
so 助けて、って送ったんだ。ちぐちん、そんなにここがイヤだったの?
声は優しい。けどその奥に、底のない深さがある。
俺は何も言えなかった。
コン、コン――
またノックの音。今度は、少し強い。
その音に、しおたんがくすっと笑った。
so ねえ、迎えが来たよ。ちぐちん、行くの?
tg …い、行かない。俺、しおたんのそばにいる……
so よかった
そう言って、しおたんが俺の頬を撫でた。
so ちぐちんを、連れて行かせたりなんて――絶対に、しないから
その瞬間――
ガチャリ。
外から、鍵の回る音がした。
俺としおたんは、同時にドアを見た。
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