この作品はいかがでしたか?
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中学校からの帰り道に、一枚の写真が落ちていた。何でもない家族写真、公園で遊ぶ幼い女の子を、多分親が撮ったのだろう、どこにでもある写真だった。だけど彼女は、その写真がなんとなく覚えがあるような気がした。
次の日も、写真が落ちていた。前の日とは別の写真だが、同じ女の子が滑り台で遊んでいる写真だった。その写真に写っている女の子が自分と似ている気がした。それから毎日のように写真は落ちていて、どれも少しずつ違う場面が写っていた。何だか気味悪くて、無視することにした。ただ、気にはなったので、どんな写真かは確認していた。
ジャングルジムで遊ぶ女の子、鉄棒で遊ぶ女の子、登り棒で遊ぶ女の子、一輪車で遊ぶ女の子……。
ある日、いつもの帰り道に、小学生の男の子がたくさん集まっていた。地面にしゃがんで、何かを見ているようだった。近づいてみると、そこには大量の写真が落ちていた。どうやらみんなで写真を拾って集めているらしい。
「なにしてるの?」
彼女は男の子達に聞いた。すると彼らは一斉に振り向く。彼女の顔を見ると、皆一様に驚いた表情をした。そして、彼女に駆け寄り、
「この写真見てたの」と言って、手に持っていた写真を彼女に差し出した。
「え……? これ……」
何人かの男の子たちは、にやにやと笑っていた。写真に写っていたのはどこかの川だった。だけど問題はそこじゃない。そこには、いつもの小さな女の子も写っていた。とても楽しそうに、気持ちよさそうに、素っ裸で……。
大量の写真にはどれも、川で遊ぶ女の子が写っていた。そしてそのどれも服を着ていない。男の子たちは、その写真を見ていたのだ。思わず顔が赤くなる。
「ねえ! これはあなた達が集めたの!?」
彼女は怒ったように言った。
「うん!」
男の子達は悪びれもなく元気よく答える。
「返しなさい!!」
彼女は大声で怒鳴った。その子達から写真を取り上げる。
「いーじゃん別に!」
男の子の一人が言い返した。
「良くないわよ!! こういう事は絶対ダメなんだからね!」
彼女はそう言って、写真をかき集めるとその場を走り去った。家に帰って、ベッドの上に散らばった写真を片付ける。どの写真にも、小さな女の子が写っていて、やっぱり自分の幼い頃に似ている気がする。一体誰がこんな事をしているのか……。
翌日、学校へ行く途中でいつもの場所を確かめた。何もない。いつも学校に行くときには、写真はおいていないのだ。学校から帰ると、また男の子たちが集まっていた。今日も写真を見ているようだった。
「ちょっと君たち!」
彼女は怒って彼らに近寄っていく。
「あ、お姉ちゃん!」
一人の男の子が彼女を指差して叫んだ。他の子たちも一斉に振り向く。その瞬間、彼女は言葉を失った。そこには昨日の倍以上の写真が落ちていたからだ。今度の写真に写っているのは、お風呂場だった。当然女の子は服を着ていない。
「な、何やってんの……?」
彼女は恐る恐る聞く。
「だってこれ面白いんだもん」
男の子たちが答えた。
「だからって、人のものを勝手に見ちゃだめでしょ!」
「でも、僕らが落としたんじゃないし」
「じゃあ誰なのよ!こんな事するのは!」
「知らないよそんな人」
「とにかく、これは没収します!!」
彼女はそう言うと、男の子たちから写真を全部取り上げた。
「ああ~!! 返せ~!!」
男の子たちの叫び声を無視して、彼女は家へと帰った。その日の夜、彼女は眠れなかった。寝ようとしても目が冴えて、なかなか眠る事ができない。目を閉じて羊を数えるのだが、それも上手くいかない。
ふと思い立って、引き出しにしまってあったアルバムを取り出した。そこには彼女の子供の頃の写真が収められている。彼女はアルバムを開くと、ページをめくっていった。しばらくすると、ある一枚の写真に目が行った。そこに写っているは、あの落ちていた写真とよく似た場所だった。
よく考えてみると、そもそもおかしいのだ。お風呂の写真など、いったい誰が写せるだろう? 家族以外には無理だ。だが、落ちている写真そのものに見覚えはなかった。それなのに、なぜか見た事があるような気がした。
次の日、彼女は学校帰りにいつもの場所へ行った。すると案の定、写真が落ちていた。今度はプールだった。彼女は急いで写真を回収すると、その場から立ち去ろうとした。だが、その時、後ろから誰かに声をかけられた。
「何してるの?」
振り向くと、見たことのない中年男性がたっていた。こちらをみてにやにや笑っている。
「何でもありません」
彼女は少し不機嫌に答えた。
「そうかい、それは残念だ」
男はそう言うと、すっとどこかに行ってしまった。彼女はほっとして歩き出す。だが、すぐに異変に気づいた。足元に一枚の紙が落ちていたのだ。拾い上げて見ると、そこには小さな女の子が写っていた。どうやら写真のようだ。
「うそ……」
彼女は驚いて呟いた。なぜなら、そこに写っているのは彼女だったからだ。カメラに向かって、明るくピースサインをしている。だが、体には何も身につけていない、素っ裸だった。おそらく庭に作ったプールで遊んでいるときの写真だ。
「な、なんで……?」
彼女は呆然とした表情で、その場に立ち尽くした。(続く)
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