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次の日、彼女は学校が終わると、例の場所へ向かった。今日も写真を処分しようと思っていた。だが、今日もまた、男の子たちが集まっている。
「あれ? お姉ちゃん」
男の子たちは、彼女に気づくと一斉に振り向いた。
「あ、あなた達……」
彼女は男の子たちを睨みつける。
「今日も写真見てるの……? 懲りないわね」
彼女はそう言ってため息をつく。
「ちぇー、せっかくいいところだったのに」
男の子たちは不満そうに言った。
「なんで、お姉ちゃんがあの写真見ると怒るの?」
一人が聞いた。
「えっ……」
彼女は一瞬戸惑ったが、「別に、なんでもないわよ」と答えた。
男の子たちは、まだ写真に写っている裸の女の子が自分だと気づいていない。まさか本当の事を言えるはずもなかった。
「それより、こんな事はもう止めなさいよ!」
彼女は怒ったように言う。
「えー、つまんない」
男の子たちが口をそろえて言った。
「つまらないじゃないわよ!! あなた達がやった事のせいで、どれだけ私が迷惑してるか分かる!?」
「ぼくたちじゃないよ。それに、どうしてお姉ちゃんが迷惑するの?」
「そ、それは……とにかく、そういう事をしちゃダメなの! 分かった!?」
「はあい」
男の子達はしぶしぶ返事をした。
帰り道を変えようかとも思ったが、写真がそのまま置きっぱなしになったら……と思うと不安で、それも出来なかった。家に帰ってからも、彼女はずっと悩んでいた。一体誰があんな写真を撮っているのか……。もしかしたら、父の仕業かもしれないと思った。父は娘を溺愛していた。そんな父が、娘の幼い頃の姿を撮りたいと思ってもおかしくはない。
だが、父の性格からして、こんな手の込んだ悪戯をするとは思えない。では、他の誰かが撮ったという事になるが、いったい誰がそんな事をするというのだろうか。考えてみれば、今まで落ちていた写真は、どれも彼女が写っているものだった。しかも、その全てに、お風呂場やプールといった、明らかに盗撮されたと思われるような場所で写されていた。もし自分が誰かにこんな風に覗かれていたとしたら、きっと怖くて夜も眠れないだろう。だが、写真に写っている自分は、まっすぐカメラを見つめて笑っている。普通の盗撮とは違う気もする。そう考えると、ますます犯人が分からなくなる。
「ううん……やっぱり考えすぎよね」
彼女はそう自分に言い聞かせてベッドに入った。翌日、学校で友達に聞いてみた。
「ねえ、私の子供の頃の写真って持ってる?」
「えっ、何急に……? まあ、あるけどさ……」
友達はアルバムを開いて、その中の何枚かを見せてくれた。
「これと、これと……、あ、あとこれはおじいちゃん家でとったやつ」
「おじいちゃん……?」
そのとき彼女ははっとした。写真に写っていたお風呂は、子どものときに遊びに行ったおじいちゃん家のものではなかったか。ただ、彼女の祖父はもう何年も前に亡くなっていた。だからおじいちゃんが犯人のはずはない。ただ……。
その日、彼女は母親に聞いてみた。
「ねぇ、おじいちゃんって、HPとか作ってなかったっけ?」
「おじいちゃんのHP? あったわね、そんなの。どうしたの、急に?」
「ううん、別に。ちょっと思い出しただけ。あれ、どうやってみれたっけ?」
「ううん、もう長いこと見てないからね……」
結局、おじいちゃんのHPは、ひろった写真を画像検索することで見つかった。当たり前だが、おじいちゃんに悪意はなかったので、そこに写っているのはほとんどが無邪気に遊ぶ幼い頃の彼女の姿だった。
だが、中には、今だととてもHPには載せないような、彼女の裸の写真なんかも無数にあった。どこかの誰かが、それらの写真をダウンロードして悪用したのだ。HPには、彼女の入学予定だった小学校の名前も書いてあった。犯人は、それを見て場所を特定したに違いない。HPの年代から、彼女が中学生だということを計算して……。
ただ、犯人も幼い少女の現在の姿はわからなかったはずだ。もしかしたら、写真をばらまくことで、それに反応する人間を、つまり幼い少女自身を探そうとしていたのかもしれない。
次の日、いつもの場所に行ったが、男の子たちはいなかった。写真もない……、いや、一枚だけ落ちていた。いつものように裸で微笑む幼い彼女。ふと気になって、写真を裏返して見た。そこには「○○中学校○年○組 ○○ちゃん」と、彼女の名前が書かれていた。(終り)