一番近くて、いちばん遠い

※ 治侑

侑 「」 モブ女 『』

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それから時が過ぎ1週間がたった。

俺は角名の言った「意外と近くにいるかもよ。」という言葉の意味が未だに分からないままだ。

俺の近くにいる人となるとやっぱりサムしかおらんからなぁ、て思っとるけど絶対ちゃうから分からへん。

「んまぁ、考えるだけ無駄やしやっぱどうでもええわ。」

「はよこれ終わらして帰ろ。」

そう、俺は日直の仕事が終わっていないので放課後まで残っているのだ。

教室でただ1人。学級日誌を書いたり、教室の掃除とかいろいろやらなあかん。

もう1人の日直の人はというと、バイトやらなんやらで忙しくてできひんて言うとった。

それで俺に全部日直の仕事丸投げ。

さすがに酷すぎやろ。掃除とかならまだしも黒板消したりそんくらいはできるはずや。

「はぁぁぁ。だるっ。これだからほんま喧し豚って奴は…。」

あ、せや。しかも来月には期末テストあるから勉強せなあかん

「あー、もう嫌やぁぁ。」

誰もいない教室で独り言をポツリと呟く。

そしたらいきなりガララ__とドアが開く音がした。

誰だろうと思い振り返ってみると、…

『あ、侑くん！？』

走ってきたのか、息切れしとる伊藤さんがおった。

「え、伊藤さんやん。なんかあったん？」

『えぇっと。宿題のプリント忘れてもうて…あははっ笑』

「なんやそんなことかいな。」

『そんなこととちゃうわ！』

たかが宿題のプリント忘れたくらいでそんな焦るなんてどんだけ真面目なん。

俺なんか存在すら忘れとる時あるし、なんなら銀に答え移さしてもらっとる。

まぁ、こんなこと北さんにバレたら間違いなく説教くらうから絶対だれにも言わへんけど。

そんなどうでもええ事を考えとったら伊藤さんが俺に話しかけてきた。

『てか、そういう侑くんこそなんでまだ教室におるん？部活は？』

「あー。日直の仕事がまだ残っとるんや。部活は体育館の点検があるから今日は休みやねん。」

『そうなんや。それは気の毒になぁ。』

「別に手伝ってくれてもええんやで？」

なーんて冗談やけど__

『ええよ。』

「は？」

『日直の仕事、手伝ったるよ。』

「え…」

『私の恋愛相談聞いてくれとるし、そのお礼みたいな？』

「……」

『え、あかんかった？』

「いや、お前喧し豚やないんやなって思っただけや。」

『……。』

そんなこと言うんやったらやっぱり帰んでってその後俺は言われたから、 冗談やんか〜って言うて日直の仕事を手伝ってもろた。

俺は学級日誌を書いて、伊藤さんには教室掃除を手伝ってもらうことにした。

伊藤さんのことを俺はどうこう思ってはないけど、治との関係とかがやっぱり気になるので治がちょうどいない今、少し聞いてみることにした。

まぁ、俺は一応2人の恋のキューピットやし。

「なぁ、最近治とはどうなん？」

『え、治くん？』

「ほら、その…恋愛…とかのあれや。俺は手伝うとかいいながらそんな大したことやってあげられてへんけど。」

『あぁ。そのことやったら…私、明日治くんに告白する予定なんや。』

「っ…。」

ズキッ__

と少し胸のあたりが一瞬苦しくなるようなそんな気がした。

『今日もな、治くん一緒に昼ごはん食べてくれてお弁当作ってきてあげたらめっちゃ喜んでくれて嬉しかったねん！』

「ほな、ええ感じなんやな。脈アリなんやったらよかったやん。」

『おん！それにな、治くんと明日駅の近くのイルミネーションを一緒に見る約束したんや！』

ズキッ__

と再び胸がまた痛むようなそんな気がした。

伊藤さんの話す一言一言の言葉が俺の心を締めつける。

そして、俺のこの片思いは一生叶うことはないという現実をつきつけられる。

悔しい。悲しい。辛い。

今すぐにでも泣いてしまいたい。

なんで俺じゃないんやろ。

なんで俺はお前と兄弟なんやろ。

なんで俺とお前は男同士なんやろ。

そんな思いが俺の頭をよぎる。

素直に治に” 好き “という思いを伝えられる伊藤さんが羨ましくて仕方がない。

もし仮に、2人が恋人同士になったら、俺は素直に心から「おめでとう」と言えることができるんやろうか。

それとも、後悔をしないために叶わない恋と分かっていても、この気持ちだけは治に伝えた方がええんやろか。

伝えたい。けど伝えられないこの想い。

でも、後悔なんかはしたくない。

叶わない恋だと分かっていても、0.001%の希望を信じたい。

「俺、決めたわ…。」

『？、何を？』

「俺も明日、 好きな人に告る。」

『お、おぉ…！いきなりやなぁ。』

「やから、応援しとってな！」

『お、おん！頑張ってな！』

俺は好きな相手が一緒なのにもかかわらず伊藤さんにそう断言した。

そして、書き終わった学級日誌を先生に提出するために手に持ち、伊藤さんと別れの挨拶をして家に帰っていった。

明日が楽しみやな、サム。

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続く𓂃◌𓈒𓐍