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「ごちそうさま〜。美味しかったわ〜」
「おそまつさまでした」
朝食を終えたアオイたちは、ウジーザスたち六英雄の能力を共有し合い、それぞれの対応方針も固めていた。
「ちょっと待っててねっ!」
アオイは気合いを入れて、指をパチンと鳴らそうとした――が、ちょっとスカった。
しかしそのまま誤魔化すように《神速》を発動し、一瞬でお皿、机、椅子を片付けてみせた。
「はい、お待たせっ」
「それ……神速使わなくても良かったんじゃ〜?」
「これたまこ、アオイはまだその力を得たばかりじゃ。いちいち使っておるのは、身体に馴染ませるためじゃな?」
「え? あ、う、うん……そうです、そういうことですっ!」
――本当はちょっとカッコつけたかっただけ。
でも、思ったより反応が薄かったので、内心ちょっと恥ずかしくなったアオイであった。
「あー……えっと、準備できてたら……そろそろ出発しよっかっ!」
「「……」」
……沈黙。
話を早く切り変えようとしたが、もっと恥ずかしい空気が襲ってきた。
「あの〜」
「は、はいっ?」
「行き先、わかってるの〜?」
「……あ」
アオイの顔が真っ赤に染まる。
「そ、そそ……その……ど、どこに行けばいいんでしょうかっ……」
涙目になりながら、か細い声で師匠とたまこを交互に見つめる。
「……あらあら〜」
「……ホッホッホ」
その場に流れる、なんとも言えない“優しい苦笑”。
「紋章の力で共通するものがひとつあるの〜。それが、これよ〜」
たまこが手の甲の紋章を淡く光らせ、コツ、コツ――と二度叩く。
次の瞬間、空間に薄膜のような映像が開き、青白い光の地図が浮かび上がった。
「……真似してみるね」
アオイも同じ所作をなぞる。紋章が脈打ち、目の前にもう一枚の地図が投影される。
「……っ!? これは――」
「驚いた〜? 人間の世界では完成していない……世界地図よ〜?」
アオイは言葉を失う。
驚きは“世界地図”じゃない。描かれている“かたち”だ。
(嘘でしょ……元の世界と……まったく一緒!?)
大陸の稜線、海の配置、緯線・経線の刻み――誰もが見慣れた“地球”のそれ。
違うのは、この世界での呼び名だけ。
「そして〜私たちが目指す六英雄の拠点はここよ〜」
たまこがアオイの地図と連動するように、中央の大海へと伸びる弧状の列島にピンを落とす。
そこに浮かんだ名称は――
「え!? ここって!」
「そう。人間でも魔族でも、この大陸はこう呼ばれてるわ〜……《神の島》って」
静かに息を呑む。視界の中で、島影がくっきりと連なった。
「……日本じゃん……」
ピンが刺されたのは両隣に大きな大陸に挟まれた小さな大陸……アオイ達の世界でいう所の《日本》だった。
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