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コメントシテクレタラウレシイナ
白いレインコート、黄色い傘に長靴。今日はは雨。目をキラキラと輝かせたその少女は、夢を見ていた。
「あ!わたし今夢見てる!」
少女は慣れた足取りで、瓦礫の山を登る。登り終えたら今度は、がらりがらりと崩れる破片と共に山を降りてゆく。ここはスクラップ山脈という、ゴミだけの場所だった。
みんな待っているから、と少女は行く。
「急がなくちゃ!」
遅れたことを咎める者など、何処にもいない。少女が急ぐのは、そこに化け物が出るからだった。
雨は、さらに強く、さらに速く、地面に打ち付けてゆく。雨の音とも、獣の唸り声ともつかぬ音が聞こえてくる。
ザァァァァァァァァァァァァ…
少女は、目を凝らした。雨以外の声の主が、そこにはいた。
大きな殻を背負い、あちこちに花を咲かせた、大きな角のカエルだ。
「やっぱり!ザアザアガエル!」
「わたし急いでるんだから!」
少女は傘を閉じて振りかぶる。
「どいてよ!」
ビジャッ
ザァァァァァァァァァァァァ…!
腹を裂かれたザアザアガエルは、ただ横たわることしか出来なくなった。少女は、それを踏み越えて前へ進む。
傘を再び開き、ザアザアガエルの体液で汚れた部分を雨で洗い流す。時々、引っ付いた粘液がグチュリと音を立てて落ちていくのだった。
道はまだまだ続く、雨はまだ止まない。
「ザアザアガエルは仲間の死体に群がるからしばらくは出てこないはず!」
少女の呼び名はギョロ子といった。誰も本当の名前を知らない。それはギョロ子本人も例外ではなかった。
瓦礫の散らばるスクラップ山脈を越えると、山脈の何倍もある高さのビル街が見えてくる。このビル街が普通のそれと違うのは、人がひとりも住んでいない事ぐらいだ。
「あれってなんで全部四角なんだろ?」
「個性がない方が好きなのかなぁ。」
ギョロ子は、それが一番効率が良いからという事は思いつかなかった。昔からこうゆう少女だった。
「…みんな待ってる!」
少女の足取りは軽い。