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気がつくと私は荒野の真っ只中にいた。どうやらアニメを見ながら眠ってしまったようで、アニメと同じような場所の夢を見ているようだった。
「なっ、あなたは一体!?」
声のするほうを見ると、金髪美少年のフランツがいる。なるほど、完全にアニメが再現されてしまっているようだ。ということは……。
フランツの前に目を向けると、先程彼らを襲っていた魔物も存在していた。ちょうど眠ってしまう前の状況と同じらしい。魔物もこちらに気づいたらしく、襲いかかってくる。
「うわっ!」
夢の中とはいえなかなかリアルで、思わず両手を突き出す。すると、不思議な力が魔物の攻撃を防いだ。
「これは……プロテクション?」
完全に防ぎ切ることは出来ずに肩に切り傷ができていたが、それよりも自分の行った行為に驚いてしまう。アニメが再現された夢なので、私も魔法が使えてしまったようだ。
「うおおおお!」
魔物が私を攻撃している隙をついて、フランツが魔物の背中を切り裂く。魔物は苦しげに甲高い悲鳴を上げた。背後からの奇襲だったこともあり、かなりのダメージを与えたようだ。だが、振り返りざまにフランツに報復攻撃を放つ。
「プロテクション!」
だが、今度は自分の意志でフランツの身体にバリアを張る。先程と同じように完全に防ぎ切ることはできなかったようだが、それでもフランツは致命傷は免れたようだ。フランツも負けじと攻撃を行うが、その攻撃は避けられてしまう。しかし、突然現れた私を脅威と考えたのか、魔物は素早い動きでその場から逃げ出していった。
「ま、待て……」
フランツが思わず追いかけようと走りかけるが、ぐらりとその身体が揺れる。私は慌てて彼の身体を受け止めた。
「う……くっ……」
なんとか意識は保っているものの、身体中に魔物から受けた切り傷があり、もはや立っていることすら辛いようであった。
「ヒール」
私はおそらく使えるだろうと考えた回復魔法をフランツにかけてやる。すると想像通り、彼の身体にあった傷が少しずつ消えていく。
「あ……ありがとうございます。あなたがいなければ、僕たちは全滅していました」
私に感謝の言葉を述べつつ、フランツは振り返って仲間たちのもとへと駆け出した。まだ傷は治りきっていないはずだが、そんなことよりも仲間のことを気にかけたのだろう。私も後に続く。二人は魔物の攻撃で意識を失っていたようだが、フランツの必死の声かけに目を覚ました。私は二人にもヒールをかけてやり、傷を癒やした。
「あんた誰?」「にーちゃん、だ〜れ?」
二人は揃って同じ疑問を口にする。フランツも同じことを思っていたらしく、こちらに注目してくる。
「通りすがりのアコライト……かな」
私の言葉に当然二人は納得せず、フランツに私が現れた状況を確認する。
「突然現れた……もしかして異邦人なの?」
レイが私をまじまじと見つめながらそう言う。異世界転生……いや、転移だろうか。召喚魔法が使われているわけではないから事故? なんにせよ、夢ではなく異世界に来ているというのか。
良い人止まりの非モテ人生で妻も子どももいない私には異世界に来て困ることはないものの、あんな魔物が現れる世界で生きていく自信もない。そういう意味では結構困る。
「おいら、異邦人とか初めてみたよ。でも、にーちゃんのお陰で助かったよ」
リカードはそう言いながら、私に抱きついてくる。リカードはかなり人懐っこい性格らしい。思わず抱きしめ返して頭を撫でてしまう。
「本当に……助かりました。僕たちに出来ることがあれば何でもします」
「異邦人が集まっている街もあるらしいよ。あんたが望むなら、そこへ連れて行ってやってもいいけど?」
フランツは深々と頭を下げながら、レイも目線を明後日の方向に向けながらもそう言ってくれる。なにこれ、偶然とはいえ命の恩人だからショタたちに大切にされてる? それはかなりポイント高いんですけど!