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モブ注意⚠️
side 藤澤
仕事終わり。
少し遅い時間。
若井と元貴は別の打ち合わせで、
僕だけ先に帰ることになった。
「気をつけて帰ってね」
若井の声。
「なんかあったら連絡してね」
元貴も笑う。
「うん、大丈夫だよ」
僕は手を振る。
本当に、大丈夫だと思っていた。
駅前。
「すみません」
声をかけられる。
振り向くと、笑顔の男性。
「この辺詳しいですか?」
困ってる顔。
僕はすぐ足を止める。
「少しなら」
僕は答える。
「カフェ探してて。地図見てもよく分からなくて」
スマホを見せられる。
確かに少し分かりにくい場所。
「あ、ここなら案内できますよ」
にこっと笑う。
男性も笑う。
「助かります」
歩き出す。
地図通りに進んでいるはずなのに、
少しだけ人気の少ない道。
(あれ?)
でも、まあ近道かなって思う。
「優しいですね」
言われて、照れる。
「そんなことないですよ」
「彼女とかいるんですか?」
「え?」
質問が少し変わる。
「いや、なんとなく」
距離が少し近い。
でも僕は深く考えない。
(世間話、かな)
曲がり角を曲がる。
さらに静か。
足音が響く。
「こっちで合ってます?」
「うん、多分」
でも。
その瞬間、腕を掴まれる。
強くはない。
でも、意図が違う。
「……?」
顔を上げると、さっきと違う目。
笑ってない。
ぞくっとする。
「ちょっとだけ、こっち来てよ」
路地。
人気がない。
そこでやっと、気づく。
(あ、これ……)
遅い。
心臓が大きく鳴る。
「離してください」
声は出るけど、震えてる。
「そんな警戒しなくていいって」
距離が近い。
壁が背中に当たる。
怖い。
頭が真っ白。
(僕、ついてきちゃった)
若井の声が頭をよぎる。
“気をつけて帰ってね”
元貴の声も。
“なんかあったら連絡してね”
してない。
バカだ。
自分を責める。
腕を振りほどこうとする。
でも力が強い。
「やめてください」
今度ははっきり。
でも心臓がうるさい。
そのとき。
「涼ちゃん!」
聞き慣れた声。
振り向く。
若井。
後ろに元貴。
空気が一瞬で変わる。
掴んでいた手が離れる。
「何してる」
若井の声は低い。
冷たい。
元貴はすぐ僕の手を引く。
「大丈夫?」
震えてるのに、必死に優しい。
男は舌打ちして離れる。
「なんだよ、彼氏かよ」
若井が一歩前に出る。
その目に本気の怒り。
「二度と触れるな」
短い一言。
空気が凍る。
男はそれ以上何も言わず、去っていく。
静かになった路地。
僕の足が崩れる。
「ごめん」
第一声がそれ。
若井の顔が歪む。
「何が」
「僕、ナンパだって気づかなくて」
涙が出る。
「ついてっちゃった」
元貴がぎゅっと抱きしめる。
「怪我ない?」
それを最優先にしてくれる。
若井はまだ怒ってる。
でも僕じゃない。
自分に。
「なんで一人で帰らせたんだろ、」
小さく呟く。
僕が首を振る。
「僕がバカだった」
「違う」
若井が即答する。
「疑わないのは悪くない」
でも声は震えてる。
怖かったのが伝わる。
元貴が僕の顔を上げる。
「怖かったよね」
その一言で、涙が止まらなくなる。
「怖かった」
やっと言える。
「途中まで、気づかなくて」
悔しい。
恥ずかしい。
「僕、だめだね」
若井が強く抱き寄せる。
「だめじゃない」
低い声。
「涼ちゃんの優しさだよ」
元貴も頷く。
「でも次からは、知らない人についていかないでね」
少しだけ厳しい声。
僕は小さく頷く。
「うん」
帰り道。
若井は僕の手を離さない。
元貴は反対側から腕を組む。
「連絡しないと俺探しに行くからな」
「心臓止まるかと思った」
二人とも本気で怖かったらしい。
僕は真ん中で、少しだけ笑う。
「ごめん」
「謝らないで」
若井が言う。
「無事ならそれでいい」
その言葉で、やっと安心する。
路地の冷たい空気はもうない。
代わりに、両側の体温。
疑わない優しさは、悪くない。
でも。
これからは二人がいる。
守られながら、少しずつ学べばいい。
因みに気付いたのは若井さんです😌
若井さんは涼ちゃんと大森さんのスマホに
こっそりGPSを仕込んでいるので
それで気付きました🫵
コメント
1件
さすが若井さん!準備万端ですね!