唇を押しつけられ、少し顔を離して吐息をつき、またついばみ合う。
ちゅ、ちゅ、と音を立ててキスをしていると、気持ちがトロン……としてきて、今までの女子会のノリがどこかに飛んでいった。
尊さんはたっぷりと私の唇を味わったあと、溜め息をついて顔を離した。
「……あんまり俺以外の奴に、見せるなよ」
「なにを?」
「色々」
ムスッとした顔でエンジンをかけた尊さんを見て、調子に乗った私はニヤニヤして彼をつつく。
「なにを~?」
昨晩の春日さんが乗り移ったのか分からないけど、ちょっと調子に乗りすぎたのか、尊さんはこちらをジロリと見て顔を近づけて言った。
「泣かすぞ」
「……ごめんなさい」
私は謝りながらも、彼にそう言われてジワッと発情していた。
女子会で尊さんは話のネタになってオモチャ扱いだったけれど、実際に彼を前にすると、完全無欠のスパダリだしこれ以上ない格好いい。
女子会のテンションは、いわばクローズドなところでの本音だ。
昨晩のはっちゃけた〝私〟は奥に引っ込み、いつもの上村朱里に戻らなければならない。
尊さんは謝った私を見て「……ったく」と笑うとクシャッと頭を撫で、車を発進させた。
彼は車を走らせつつ溜め息をつく。
「……まさか女子会に行った彼女を心配して、やきもきすると思わなかった」
私はボソッと呟いた尊さんの言葉を聞いて、思わず表情筋が痛くなるほどにやついた。
「女子会に妬いてたんですか?」
「エミリが報告してくれたけど、すげぇ楽しそうだったな。俺の前でもあれだけはしゃぐ事ってなかったんじゃないか?」
「んー……、尊さんの前と女性の前とでは違いますからね。それに、エミリさんと春日さん、想像以上に面白い人で、めちゃ笑ったんですよ」
昨晩を思い出してクスクス笑うと、尊さんも一緒になって微笑む。
「良かったな。今まで友達は中村さんぐらいしかいないって言ってたから、あいつらと馬が合ったみたいで安心した」
「そうですね。不思議です。私、結構人見知りなはずなのに、あのお二人とは最初からスルッと仲良くなれたんです」
「二人とも俺と怜香を中心とした修羅場に関わってるから、一番肝心なところを共有した仲間意識があったのかもな」
「かもですね。……あと、やっぱりお二人とも基本的に性格がいいです」
「そうか?」
尊さんは私の言葉に被せるように、突っ込み気味に言う。
「……あいつら、一筋縄じゃいかねぇだろ」
「うん、そうなんですけど、なんだろう。馬が合ったんですよね」
「まー、三ノ宮さんはかなりフィーバーしてたな。エミリが酔っぱらったらどうなるかは知ってるけど」
そこまで話したあと、私はエミリさんが色んなシーンを撮影して尊さんに送っていたのを思いだし、彼の感想を聞いてみたくなった。
「……エミリさんから送られてきた動画や写真を見て、どう思いました?」
「ん? 楽しそうだなと思ってたよ。その場にいたら『こんにゃろう』ぐらいは言ってたと思うけど、基本的に女子会に口だしするつもりはない。男のいる合コンなら別だけど、女子同士、酒を飲んで初めてできる話もあるだろうし、朱里も息抜きしたほうがいいと思ってる」
思っていた以上に大人な回答があり、私は「さすが尊さん」と小さく拍手をする。
「……俺をなんだと思ってるんだよ」
(復讐のエロエロ御曹司)
私は心の中で呟き、顔ではニコニコと菩薩のような笑みを浮かべておく。
「まだ昼前だし、腹は減ってないか」
「はい。めっちゃ美味しいエッグベネディクトをご馳走になりました」
私はフランス料理みたいにお上品で最高に美味しい一皿を思い出し、うっとりと微笑む。
すると、尊さんが左手を伸ばしてツンと私のお腹をつついてきた。
「この腹は俺じゃない奴に驕られた飯でも、パクパク食うんだな。せっかく評価してたのに……」
「お腹が浮気するって新ジャンルを確立するの、やめてくれます? それに、お腹に口は開いてません! どこの妖怪ですか」
「妖怪アカリン」
「むふんっ」
奇しくもアカリンの名前を出され、私は噴きだしてしまう。
コメント
2件
復讐のエロエロ御曹司....🤣🤣🤣ギャハハハ ミコティは後々もず~っと、お姉さま方にイジられ続きそうな気がする....💕💕🤭
復讐の~・・・ 今更だけど、スティーブン・セガールが頭ん中に出てきた😂