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こんにちは!こうちゃです。
第9話になります。 注意事項は第1話をご覧下さい!
今回は落ち込み🇫🇷とわちゃわちゃ×4でお送りします。ストーリー自体はあんまり進んでません…笑ちなみに前回でてきたカリッポというのはイギリスで有名なアイスだそうです。小さい頃に分けてくれた人は、察しのいい皆様でしたらお分かりですよね☺️それではあともう少しだけ素直になれない2人をご覧下さい。
バシャバシャといつもより少し長く顔を洗う。
「あ〜…隈がやばい…」
鏡に映った自分はいかにも寝不足ですという顔をしていて笑えない。現に昨日は全く眠れなかった。
「……あぁ…もう、だめだなぁ、俺」
自己嫌悪で胸がキリキリと痛む。思えば俺とアーサーの喧嘩は日常茶飯事だけれど、ここまで酷いのは初めてだった。今までは殴り合いの喧嘩になったとしても、次の日にはまた一緒に夕食を取るような、そんな軽いものでしかなかったのだ。
「……とにかく、話さなきゃ」
そう思うのに、アーサーに嫌われたという事実が重くのしかかってきて振り払えない。そんな自分が情けなくて、また自己嫌悪のループを昨日の夜からずっと繰り返してしまっている。
「……っくそ…」
ジメジメとした嫌な思考を断ち切るようにもう一度冷たい水で顔を洗い流した。
「……なんなん、これ」
朝の挨拶もそこそこにギルにそう尋ねる。
「俺様にもわかんねーぜ」
肩をすくめるギルの視線の先にはまるで屍のように生気の抜けたフランが机に転がっていた…いやこれ何回目やねん。
「どうせあれだぜ、また例の弟の」
「フラン、最近そればっかやしな」
2人でそう結論付けたあと、仕方がないと立ち上がる。ごっつ面倒臭いけど、まあ一応友達やしな。
「フラン〜今日はどうしたん?」
「ついに弟に嫌われたのか?」
冗談交じりで放たれたギルの言葉にフランの身体はビクリと反応する。そしてしばらくたった後にその頭がこくんと揺れた。
「……いやいや、まさかぁ…フランの勘違いちゃう?」
「そうだぜ!なんだかんだお前ら仲良いじゃねーか!」
2人で慰めの言葉をかけるが、反応がない。どうしたもんかとまたもや2人で目線を交わすと、フランはいきなりガバッと起き上がった。
「だって!!あいつ俺の顔見るなりダッシュで逃げやがった!!超久しぶりに顔みたのにそんな態度おかしいでしょ!?しかも転けそうになったから助けてやったのに頼んでないとか…あー!!もうムカつく!!!」
ぎゃんぎゃんと突然不満をこぼすフランになんだやっぱりただの喧嘩かと呆れていると、突然声が破棄をなくす。
「だから…なんか、ショックっていうか…怒りが止められなくて……お前の世話なんかしなきゃ良かったって…言っちゃって…」
「……は…はぁ…!?いやそれはあかんやろ!?」
「だ、だって…あいつが…!」
「それで?」
言い訳をしようと口を開いたフランに被せて、ギルが有無を言わさない声で尋ねる。
「それで、アーサーはなんて言ったんだ?」
「……ごめん、って…その一言だけ…で……」
「……っばっかじゃねーの!?おまえ!!」
バチンッとフランの額にギルの本気のデコピンが炸裂する。
「…いっ…たぁ…!?」
フランが涙目で額を押える。うわ、ほんまにそれは痛そうやわ…
「…っ…ぎる…なにすんだよ!」
額を抑えて涙目で訴えるフランのネクタイをギルがグイッと引っ張る。
「いいか、耳かっぽじってよーく聞け」
普段からは考えられないその鋭い目にフランがごくりと唾を飲み込む。
「アーサーがお前のこと嫌いになったなんて、そんなことあるわけねぇだろ!!」
「…っ…でも、だって…俺の事避けて…」
「じゃあなんでお前に酷いこと言われてごめんなんて言葉が出てくんだ!?なんでごめん以外の言葉をお前に吐かなかった!?」
「……あ…」
ふぅ、と深く息を吐いたあと、ギルは掴んでいたフランのネクタイを離す。フランはまるで人形のように椅子に倒れ込み、その表情は絶望感に染め上げられていた。しばらく沈黙が続いたあと、ギルがゆっくりとこちらに振り向く。そして冷や汗をだらだらと流しながら小声で
「……やべー…言いすぎたかもしれないぜ…」
と呟いた。俺はそれに苦笑しつつギルの肩にポンッと手を置く。
「ギルのガチギレ、久々に見て親分流石に震え上がったわ〜」
「いや俺だってここまで言うつもりじゃなかったんだ…!!やべぇ…フランめっちゃ落ち込んでるじゃねーか…!」
項垂れるフランをクイッと指さしてギルが真っ青な顔をする。…うん、まあ、ああなるくらいギルは怖すぎたで。
「……ごめん、ギル、トーニョ。俺遅れるって言っといて」
フランが覚悟を決めたような顔でゆっくりと立ち上がる。それに2人で少し顔を見合せたあと、グーサインを見せた。
「おうっ!任せろ!」
「親分に任せとき!」
フランはこくりと頷いた後に走り出した…が、突然教室の扉の前で立ち止まる。何事かとフランのそばに近寄るとひょっこりと黒髪の男2人が姿を現した。
「あれ、菊ちゃんと耀やん!どしたん?」
フランの後ろから声をかけると菊ちゃんがぶるぶると肩を震わせているのが見えた。驚いて固まっていると菊ちゃんは突然ガバッと顔を上げてフランの肩を掴む。
「…すみません、何も言わないで見守ろうと思ったのですがっ…どうしても我慢できなくて!!」
いつもの彼らしくなく、フランの肩をガクガクと激しく揺さぶる様子に呆気にとられていると、耀が呆れたように口を挟む。
「昨日、お前んとこの眉毛がきたあるよ」
「……え…?」
フランが驚きで目を見張るのと同時に菊ちゃんがそうなんです!と便乗する。
「昨日耀さんとアイスを買って寮に帰る途中、見覚えのある方が1人で歩いていまして…声をかけたらやっぱりアーサーさんで、こんな夜更けにおかしいなと思っていたんです。しかも、よく見ると頬に怪我をなさっていて、酷く傷つかれたご様子で…半ば強引に寮に泊めたんです」
「昨日の眉毛、変に静かで気持ち悪かったあるよ」
「あいつ…家に帰らなかったんだ…」
ボソリ、と独り言のようにフランが呟く。そのただことではない様子に驚いたのか菊ちゃんも耀も驚いて瞳を揺らす。
「その…とても辛そうでしたので…フランシスさんが何か知っていらっしゃらないかと…」
「……ごめん、俺の…せいだ…」
「おっ…お前が殴ったあるか!?」
「殴ったのは…俺じゃない、けど…傷つけたのは、俺だ…」
いつもと全く違うしおらしい様子のフランに菊ちゃんと耀が焦りを込めた顔で俺らを見た。肩を竦めてみせると菊ちゃんの顔がみるみる青くなっていく。
「すっ…すみません!お節介を…」
「いや全然!むしろ2人には感謝してるよ。アーサーのこと泊めてくれてありがとう」
そう言って笑ってみせるが、いつものような余裕たっぷりの笑みではなく、その顔には焦りが滲んでいた。
「でも…なら尚更アーサーと話をしなきゃ」
「あ、あの、それがアーサーさん学校に来ていらっしゃらなくて…」
「……えっ…?」
「今朝学校の準備をするからと家に帰られたのですが、アーサーさんの教室に行ったらまだ来ていないと言われてしまって…私はてっきりフランシスさんの所に来ているのかと思って…」
菊ちゃんの顔がみるみるうちに真っ青になり、突然がばりと頭を下げた。
「すみませんっ…!!やはりあの時帰すべきではなかったんですっ…!引き止めてれば、こんなことにはっ…!」
「き、菊だけのせいじゃないある…我ももう少し気をつけるべきだたあるよ…」
「いやいや…アーサーだってもう子供じゃねえんだしそこまでのことじゃ…」
うつむく菊ちゃんと耀をギルが慌ててなだめる。どうしたもんかとそれを眺めていると、目の前にすっと手を差し出された。
「…トーニョ、かぎ」
「……高いで」
そう言いながらポケットから自転車の鍵を取り出してフランに向かって投げると、メルシー、と言ってフランが駆け出した。
「…え、フランシスさん!?」
驚いてフランの後を追いかけようとする菊ちゃんの肩を掴んで引き止める。
「フランに任せとけば大丈夫やから、な?」
「そ…そうですね…すみません、取り乱しました」
「フランはああ見えてめっちゃ弟思いだからな!」
ケセセ、と笑うギルに菊ちゃんがえ、と言って固まる。
「あの、アーサーさんとフランシスさんは兄弟ではございませんよ」
「……えっ、」
「……えぇ!?」
「……お前ら兄弟だと思ってたあるか?ぜんっぜん似てないある!!!」
耀が心底ありえないと言った具合で叫ぶ。俺はアーサーについて説明された時のことを必死に思い出す。
「いや、でもだって、フランが弟って…」
「いや、ちげえ…フランは弟みたいなもんって言って…た…かも……」
「私は以前アーサーさんがフランシスさんのゲーム機を返しにこちらに来た際にご説明しようと思ってたんです!…まあ私も最初お2人を兄弟だと思ってたのですが…」
「お前もあるか!お前ら信じられないあるな」
「え、じゃああの時アーサーが急に走り出したんは…」
「兄弟だと思われてその…ショックだったのではないかと…」
ようやく点と点が線で繋がったような感覚に俺もギルもあ〜…と納得する。プライドの高そうなアーサーのことだ。フランシスが兄だと思われているのが許せなかったんだろう。
「……ん、あれ、まて、それじゃ、え??」
「ギル?どしたん?」
ギルの顔がみるみるうちに青白くなっていく。みんな顔を青くすんの好きやなぁとぼんやりと思っていると、ギルに突然肩を掴まれた。
「おわっどしたん?」
「やべえっ…やべえだろ!それ!!」
「ん?なにがやばいん?」
「そもそもなんでアーサーはフランを避けてたんだってことだよ!!」
「え、アーサーさん…フランシスさんを避けてたんですか…?」
「ああ、フランが夕飯を誘っても全部適当な理由で断られてたっぽくて、そもそもそこからフランがアーサーに嫌われたと思ってこじれてんだよ!」
「あら…それはそれは…っっ!?え、待ってください、それって、」
「俺らのせい、ってことだぜ… 」
絶望した顔で沈む2人に訳が分からずに首を傾げる。
「なあ、なんなん?なにがやばいん?」
「だから、アーサーがフランを避けてたのは兄弟だって言われたのが嫌で、ショックだったからだろ!?アーサーは弟じゃなくて、フランと対等な関係になりたかったってことだよ!!」
「……え、じゃあ、俺らが、兄弟って言ったから…フランは避けられて…嫌われたと思い込んで…ぎゃー!!!やばい!!あかんやんけ!」
「だからそう言ってんだろ!!」
「……お前ら阿呆すぎて吃驚あるよ…」
呆れてため息を着く耀と慌てふためく3人の構図は異様な光景だったんだろう。教室の端で話しているとはいえ、ちらちらとクラスメイトの視線を感じる。時計を見るともうすぐでホームルームが始まる時間だった。
「なあ、謝りに行った方がええんちゃう…?たっかい菓子買って…」
「授業なんか受けてる場合じゃないぜ…」
「え、お前らサボるあるか?そこまですることじゃねーと思うあるけど…」
「耀はフランが怒ったらどんなに怖いか知らねえからそんなこと言えんだぜ!」
「う〜…思い出すだけで心がギュッてなるねん…」
「そ、そんなに怖いんですか…?」
震え上がる俺らに菊ちゃんが不安げにごくりと唾を飲み込む。
「怖いで、マジで」
「冗談抜きで怖いぜ」
「えっ…ええ…」
「だから俺らはフラン追っかけるわ。菊ちゃんはどうする?」
「なら私も…私にも責任はあります。アーサーさんも心配ですし…お供させてください!」
「え、菊まで行くあるか!?」
「はい!耀さんはどうされますか?」
「…仕方ねえある。我もアーサーに文句のひとつでも言ってやらねえと気がすまねえあるから、行くあるよ」
「そうと決まったらとっとと行くで!!」
「は、はいっ!」
教室の隅で騒がしくしてたやつらが突然走り出しもしたらそりゃおかしいだろう。4人が消えた教室はざわざわと喧騒に包まれていた。
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