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深夜0時。
ようやく会社のチャットが静かになり、
ノートパソコンを閉じる。
頬をなでる風は冷たくて、
なんだか秋の夜みたいだと思った。
「あー……今日も、終わった」
缶コーヒーを求めて、
駅前のコンビニの自販機に立ち寄った時だった。
人の気配に気づいて、ふと横を見る。
誰かが倒れていた。
「えっ……え!? だ、大丈夫ですか!?」
慌てて近づくと、それは若い男の子だった。
目を閉じていて、頬には擦り傷。呼吸はある。
……けど、服装がおかしい。
薄茶色の和服に、紺の羽織。
草履を履いていて、背中には竹籠を背負っていた。
まるで――時代劇から抜け出したみたいな姿。
「え、え、なに? え? コスプレ? なんかの撮影??」
パニックになりながらも、
反射的にスマホで救急車を呼ぼうとしたその時――
「……こ、こは……どこ……?」
その子が、ゆっくりと目を開けた。
瞳は穏やかで、でも不安に震えていた。
「ここ……は、六年ろ組じゃ……ない……?」
「え、え、ろ組? なにそれ、学校?
あの、ちょっと……しっかりして!!」
彼は、混乱しながらも起き上がろうとした。
でも足元がおぼつかなくて、ふらついた。
私はとっさに手を差し伸べていた。
「ほら、無理しないで。
……うち、近いから、とりあえず来て」
それがすべての始まりだった。